37話 クソゲーすぎて草はえる。
37話 クソゲーすぎて草はえる。
「レイたんがサポートしてくれるのであれば、オイちゃんが死ぬ気で……全ての不可能を可能にしてみせまちゅ」
そこで、酒神は、才藤に手を差し伸べた。
「で、どうちまちゅか?」
「世界を……マシにできるのか? 誰も苦しまない世界に……誰もが輝く明日を想える理想の世界に、本当に、変えられるのか?」
「レイたん一人では、当然、無理でちゅね。こんなの、他の誰にも出来ない不可能。基本的には無理難題。……けれど、ここには、幾度となく不可能を可能にしてきたスーパーヒーロー、ミスターZがいまちゅから、きっと、無理ではありまちぇんよ」
「……はぁ? ミスターZ? ぇ、誰の事……って……え……ま、まさか、あんた?!」
「そうでちゅけど、なにか?」
「ぅ、ウソだろ? いや、だって……ミスターZが最初に世界を救ったのは十二年前だぞ。あんた、その時……」
「五歳でちたね。オイちゃんは、園児の時からすでに最強で無敵でちた。産まれた時から、『達成感』とは無縁の完璧な天才。破格の超人。ふふん。オイちゃんは本当に凄いでちゅよ。なんせ、当時、すでに、英検二級を持っていたほどの天才でちたからねぇ」
「いや、こんな状況でポップにボケられても、今はツッコめる精神状態じゃあ……って、え、どっち? 冗談? ガチ?」
「事前の調査でRISの過激派に五機の旅客機がハイジャックされるのは分かっていたんでちゅが、園児だった当時のオイちゃんの話なんか誰も聞いてくれなかったから、仕方なく、自力で解決したんでちゅよ。いやぁ、懐かしいでちゅねぇ。八歳くらいまでは、大人が協力してくれなかったんで、色々と面倒くさかったでちゅよ。まあ、面倒くさかったってだけで、ぶっちゃけ、オイちゃんがその気になれば、どんな事件だろうとソロクリア余裕なんでちゅけどねぇ」
「……え、マジで言ってんの……マジ? ……マジで、あんたがミスターZ? え、女だったの? ミスターなのに?」
「――『未知なる誰か』を表現するミスターXをもじっただけでちゅから。あ、ちなみに、サインはしないでちゅよ。一人に書いたら皆に書かないといけないでちゅからねぇ」
「はっ……はははははははははははは!」
才藤は、また、大声で笑うと、
「なんだろうなぁ。ウソくさすぎて、逆にマジくせぇ。まあ、真理の迷宮をソロでいける超人なら、ミスターZがやってきた事も可能か……はは、これは、なんだ? どういう状況? ……はっ。何か、よう分からんけど……」
奥歯をかみしめる。
決意を瞳に宿す。
双眸を燃やす才藤。
酒神が差し出してくれた手をギュっと握りしめる。
その力強さで、決意を示す。
「決定でちゅね。じゃあ、まずは七階のボス『サヴァーテ』を倒してきてくだちゃい」
「は? 何言ってんだ。あんたが、倒したんだろ?」
「サヴァーテはリポップ(時間経過による再出現)するタイプのボスでちゅ。そして、自力で倒さないと、最奥部の転送装置が作動しない……って、自分で設定したくせに、なに忘れてるんでちゅか」
「え……ぁ、あぁ……そうだぁ。サヴァーテと直接戦ったヤツじゃねぇとフラグがたたねぇんだ。うわ、めんどぉ……あ、でも、あんたがいれば余裕か」
「再戦は出来なかったでちゅよ。サヴァーテからドロップする『守護天使の護符(どんな攻撃であろうと一回は無効化してくれる)』って、かなり便利でちゅから、狩りまくって死ぬほどストックしてやろうと思ったんでちゅけど、オイちゃんは、玉座の間には入れなくなっていまちた」
「え……あ、そうだ! 『守護天使』はチートすぎるから、大量入手を防止するために、すでにフラグが立っているヤツは玉座の間に入れない仕様にしたんだ。クソが、なんでそんなクソ仕様にしてんだ。ほんとクソゲーだな。無意味に難しくしてんじゃねぇぞ。誰だよ、あんなクソゲー創ったの。俺だぁあ! くそがぁ!」
「楽しそうでちゅねぇ」
「うっせぇぇえ! っ、くそ……しゃーねぇ、じゃあ、剣翼を貸してくれ。あれがあればサヴァーテなんて余裕……あぁぁあああ! ダメだぁあ! S級以上のアイテムは貸し借りできねぇ! ああ、うぜぇ! あのクソゲー、マジで創り直してぇ!」
「創り直すのって、出来ないんでちゅか?」
「昔のノートを引っ張り出して、新たに書き込んだり、消しゴムいれたり、色々と試してみたんだが、何も変わらなかった。どうやら、俺に迷宮設計能力があったのは中学時代までらしい。もしくは、探索者になっちまったがゆえに、何らかの制限がかかるようになったのか……」
//真理の迷宮では、探究者とGMの兼任はできない。
それと同じく、探究者と製作者の兼任も不可能//




