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36話 真理の報酬。


 36話 真理の報酬。


「ぁ……あぁ?! そんな、まさか……ぃ、いや、ソロでクリアなんて無理だ。さっき言ったように、あの迷宮の難易度は――」


「――『閃光の剣翼』を入手しまちた。あと、剣翼を強化してくれる『拡張パッケージ』をいくつか。あの迷宮のラスボス――『Z』のHP、無駄に高かったから、ちょっとだけ時間がかかりまちたけど、まあ、ぶっちゃけ、楽勝で倒せまちた。流石オイちゃん。ふふん。バラバラにしてやりまちたよ」


「……ウソ……だろ……」


「オイちゃんが超天才だって事は、今はどうでもいいでちゅ。問題は、クリアした者に『世界を創り直す権利』が与えられるという事実だけでちゅよ。ちなみに、まだ手は出していまちぇん。完璧な世界なんて、流石のオイちゃんでも、一人では創れまちぇんから」


「そ、それが分からない……そ、そんな設定はしていない……していないんだ……世界を創り変えるとか、そんな夢みたいな報酬なんて設定はしていない……歪んでいたあの頃の俺が、そんなまっすぐな報酬を用意するわけがない……」


「そうなんでちゅか? まぁ、とにかく話を続けまちゅけど、リミットが迫ってきていまちゅ。あと、たった二カ月。一応クリアしたんで世界は終わりまちぇんけど、攻略開始から百年がたつと、迷宮自体に入れなくなりまちゅから、このままだと、この『不完全な世界』を『完璧な世界』へと改変できる機会を永遠に失ってしまいまちゅ。それが大問題だという事くらいは理解できまちゅよね?」


「世界を創り直す……改変……最後のチャンス……」


「ん、なんでちゅか?」


「改変……時間……世界……」


 そこで、才藤の頭に電流が走った。

 今の今まで完全に忘れていた、かつての漫才。


「おもい……だした……」

「ん? 何をでちゅか?」


「あいつだ……話したんだ」

「あいつ? 誰でちゅか?」


「わからねぇ。けど、あいつ……確かに、聞いてきた。この歪んだ世界を正すにはどうしたらいいかって。最後の……改変のチャンスだとも……」


「ほむほむ。それで、なんて答えたんでちゅか?」


「ただの夢だと思って、俺、ふざけて……地下迷宮が欲しいって……」


「……ほむほむ」


「まさか、俺……チャンスを棒に振った? この歪んだ世界をマシにする為の……最後のチャンスを……クソふざけたボケで……すべてを棒に……」


「まだ、チャンスは残っていまちゅ」


「できないだろ! 人間に出来る事じゃねぇ! 不完全な世界を完璧な世界に変えるだぁ?! ふざけんな! もしそれが出来るのだとしたら、神様か何かが、最初の段階で、とっくにやってんだろ!」


「もしかしたら、あえて、やらなかっただけかもしれまちぇん」


 撃ち抜かれたような衝撃が、才藤を襲った。


 ――あえて、やらなかった?

 ――あえて、このクソみたいな世界を創造した?


 なぜ?


「オイちゃんたちに、どうするかを決断させるために、わざと不完全な世界を創ったのかもしれまちぇん。困難を積み重ねた方が、成長できまちゅからねぇ。基本的にRPGが面倒くさい仕様なのは、鬱陶しさを乗り越えたという達成感を得るためでちゅ。成長や達成感という『結果』は、『最初から最強無敵』だと得られないっていう、ちょっとツンデレな概念でちゅからねぇ」


「なるほど……なんとなくだが、『あの電波女』が俺に迷宮設計能力を与えた意向らしきものは理解できた……けど、だとしても……誰にも出来ねぇだろ……あの迷宮をソロで攻略できるような、尋常じゃねぇ超人のあんたでも、不可能だとサジを投げた難事を、いったい、誰が……」



「一人では創れない。そう言っただけでちゅ」



「……何?」


「優れた頭脳がもう一つあれば、不可能ではありまちぇん。レイたんがサポートしてくれるのであれば、オイちゃんが死ぬ気で……全ての不可能を可能にしてみせまちゅ」



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― 新着の感想 ―
[良い点] 最初は主人公が迷宮攻略してくって話だと思ってたんだ この作者が読者の予想を越えようとしないわけなかった……
[一言] 「優れた頭脳がもう一つあれば、不可能ではありまちぇん。レイたんがサポートしてくれるのであれば、オイちゃんが死ぬ気で……全ての不可能を可能にしてみせまちゅ」 田中トウシにも近いものを感じるセリ…
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