26話 笑える話。
申し訳ないですが、
感想欄の嫌がらせが多発しているので、
ログインユーザーからの感想のみに変更しました。
私に対して文句がある人は、メッセージでどうぞ。
私の作品を擁護してくださった、読者様へ。
心から、感謝しております。
おかげで、救われております(*´▽`*)
しかし、悪意しか持たない者に、何を言っても、つけあがるだけです。
嫌がらせは、削除するだけですので、シカトしておいてください。
26話 笑える話。
「十人以上を犯して殺して死刑になった最低の犯罪者で、こいつの母親は、そんなクズに犯されはしたが、どうにか殺される前に逃げだす事に成功した性犯罪被害者だ」
「……」
「なぜ『堕ろさない』という決断に至ったのか、その理由は不明だが……まあ、おそらくは、一時の気の迷いというヤツだろう。その証拠に、出産後、テメェが必死になって産んだガキの顔を見る度に、ボコボコにしないと気がすまないという異常な状態に陥り、最終的には、このクズの目の前で首を切った。母親の血で真っ赤になった全身――その血をシャワーで落としているシーンが、こいつの記憶にある、最初の思い出だ」
「……」
「どうだ、笑えるだろう」
「いやさ、嗤えねぇだろ」
才藤が呆れた顔で、聖堂にジト目を送っていると、
「……」
そこで、華日が、才藤の目を見て、
「……今の話、本当なの?」
そう問いかけると、
才藤は、シレっと、
「いや、ぜんぜん違うけど?」
ヒューンと空気が凍てついた。
華日は、ワナワナと震え、
「なんなのよ。からかったの? ふざけ――」
「最初の記憶はもっと後」
才藤は、視線を不必要に大きく逸らして、
『やり過ぎ』なくらい、
淡々と、
「ジジババの話によると、どうやら、俺の幼少期は、実際、そんな感じだったらしいんだけど、俺は何一つ覚えちゃいない。なぜなら、俺の記憶は、8歳くらいの時に、一度、パーンって全部飛んでいるから」
「………………ぇ?」
「それまでは、虐待されたガキのテンプレっていうか、重度の自閉症っぽかったらしいんだけど、記憶が飛んで以降は、脳の配線が変わったのか何なのか知らんけど、発達速度が急激に上がって、今度はサヴァンみたいになって、気合いを入れると、読んだ本とかを丸暗記出来るようになった。完全記憶能力じゃなく、本気で集中すれば普通の人より早く多く覚えられるって感じな。だから海星にも入れたけど、根本の性格がクソすぎて退学させられましたとさ。めでたし、めでたし」
「……」
「誤解しないでほしいのは、お前が言ったように、俺はキッチリ、ノホホンと生きているって事。生まれてから、一度も努力とかした事ないからね。キャリア組の国家公務員だったジジババに引き取られてからは、何不自由なく暮らせているし。むしろ生まれが大分アレだから、今は逆に気楽っていうか……お前の言葉に、なんも反論しなかったのは、全部お前の言うとおりだから。バカにしたけりゃ、お好きにどうぞ。そうされてしかるべきだって自覚はあるから」
華日は、黙って聞いていた。
黙って聞く事しかできなかった。
★
その日の帰り道、
華日は、聖堂を捕まえて、
「ちょっといい?」
「なんだ、鬱陶しい」
「あのク……才藤の事なんだけど」
「クズで構わないだろう。あいつは実際、極限を超えたクズ野郎だ」
「さっきの話、全部本当? 本当に、あんな――」
「いや、違うな」
「え?」
「あの程度では全く足りない」
「どういう――」
「8歳の時に『あのクズの記憶が飛んだ理由』が抜けている」
「……何があったの?」
「同級生の『アホなガキ共』だけではなく『その親』も『教師』も含めて、全員で一丸になって、『悪魔の子供』を追い回すシーンを想像すればいい。それで事足りる」
「……」
「人は『理由』を与えられれば、際限無く残酷になれる。――隣に強姦魔のガキがいる。怖い。だから、身を守るために、石を投げても構わない。快活な話だ」
「……そんな……」
「何の責任もないのに地獄の肥溜めの底を這いずりまわされ、ついには一度豪快に大破し、奇妙なレストアをされた数奇なポンコツが、その後、どうなるか。答えが知りたいなら、じっくりと観察してみるといい。幸いかどうかは知らんが、貴様の周囲に一人だけいる」
「……」
「貴様がどんな感想を持つかは知らんが、私は、あのカスの人生がチャランポランだとは、どうしても思えん。イカれていて、狂っていて、歪んでいる。あくまでも、私個人の意見でしかないが、しかし『優秀な姉と比較されるだけの人生』と『あいつの人生』、どちらがノホホンとしているか、と聞かれれば、私は、いささかの躊躇もなく即答できる自信がある。まあ、結局のところは、それだけの、ちょっとした主観の話でしかないが」




