22話 経験値に関する情報。
22話 経験値に関する情報。
「チュートリアルでの行動を見るだけでも、君が、その性格に特殊な難を抱えているのは分かった……が……教師に成績を改竄されるレベルで嫌われるというのは、少し……いや、かなり異常だな。君は、海星中学で、いったい、何をしでかした?」
「ぃや、あの……えぐい黒歴史なんで、出来れば俺の過去はシカトしてもらう方向で――」
「黒歴史だとぉおお! 貴様ぁああ!」
叫びながら才藤の胸倉をつかむ聖堂。
そんな彼女の炸裂した情緒に対し、
才藤は、まっこうから情緒を炸裂させて、
「いや、どう考えても黒歴史だろ! 『思春期だった』のと『ミスターZに憧れちゃった』のが重なって、あんな変な厨二キャラをやっちまってよぉ! ぁあ、マジで忘れてぇ! もう、ほんと、恥ずかしいんだよ! 『なんで、俺、あんな事やっちゃったんだろう』って毎日、寝る時、もだえ苦しんでんだぞ! わかるか、そんな俺の気持ちが! あんなクソ厨二キャラをやっちゃったせいで、嫌われまくって学校から追い出されるし、お前みたいなヤバいアホに付きまとわれるようになったし! ほんと、もう、中学時代は最低最悪の黒歴史だ! 恥の多い人生なんて次元じゃねぇ! マジで、人生をやりなおしてぇ!」
「き、貴様ぁぁぁ……」
鬼の表情で両手に力を込める聖堂。
苦しんでいる才藤。
銃崎は、そんな二人の首根っこをつかみ、
グイっと強引に引きはがす。
とんでもない力。
『ランクA+』まで至った者の筋力は人間の限界をはるかに超えている。
「聖堂、落ち着きたまえ。才藤、大丈夫か? 顔が真っ赤になっているが」
「ぐへぇ、うへぇ……はぁ、はぁ……ああ、はい、まあ、なんとか」
「中学時代の君たちの間に何があったかまでは調べてないから知らないが、これからは互いの命を預けあう一つのチームになる。少しは協調してくれ。ただでさえ、『とんでもない問題児』を一人抱えていて心底辟易しているのだ。これ以上、頭痛の種を増やさないでほしい」
★
地迷研の部室は、第ゼロ校舎の最上階にある。
第ゼロ校舎は十七階建て。
桐作学園でも数少ないエレベーターがついている高層建造物。
部員数が『七人を超えた事』がない『超小規模研究会』でありながら、与えられている部室は、この学校でも指折りの広さと高機能を誇っている。
パソコン・テレビ数台、冷蔵庫、電子レンジ、シャーワールームなどの快適な生活に欠かせない設備はもちろん、本革のソファーやロイヤルブランドのカップ&ソーサーなどの超高級調度品が随所に配備されている。
両開きのドアを開けて、部室の中に入ると、
酒神終理以外の全員が、
部室中央に設置されている円卓についていた。
「さあ、二人とも。好きな席に腰をかけてくれ」
銃崎に言われて、空いている席を確認してみると、『並んで空いている席』はなかった。
瞬間、聖堂が、ゴリっと顔面をゆがませる。
「……ちっ」
部屋全体に響く大きな舌打ち。
と同時に、聖堂は、
『両隣が空いている寂しい席』に腰かけている華日の背もたれに軽い蹴りを入れて、
「ずれろ」
低い声でそう命令した。
「うん、いいよ。貸し一つね」
「……わざとか……貴様ぁ」
「まあ、まあ、そう怒らないで。ちょっとした茶目っけだって」
軽モメの後に、
全員が席についたのを確認すると、
銃崎が、
「昼休みは短い。さっさとミーティングをはじめよう」
「え、ちょっと待って。終理姉様がまだきてないんだけど?」
「……あのアホは、ミーティングに参加などしない」
心底鬱陶しそうにそう呟く銃崎。
追従するように、怪津愛が、
「終様は、不完全な華日さんとはケタが違う、絶対にして完全なる存在。打ち合わせなど必要ありませんわ」
「……そうですか。まあ、確かに、そうですよね。はい、納得しました。アイ姉様」
「いい加減、はじめよう」
言うと、羽金がB5用紙三枚分の資料を配り始める。
「これは、この前配った資料にも記されている、経験値に関する情報のまとめだから、もしかしたらすでに頭に入っている者もいるかもしれないが、まだ読みこめていない者のために用意した。各自、まずは、サっとでいいから目を通してくれ」
華日は、受け取った紙に目を通しながら、
(チュートをフルコンすると57P。テストで学年一位になると73P。学食で超大盛りAランチを食べきると9P。居酒屋のバイトで十万稼ぐと10P。エトセトラ、エトセトラ……と。この前もらった資料に書かれていた以上の追加情報はなし。あの資料はもう全文を覚えているから、ただのコピーなら、いらないわね。ふん、ナメるなってぇの)




