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13話 模範的なクズ野郎。


 13話 模範的なクズ野郎。


 才藤の『最低』ぶりを目の当たりにした華日は、


「……な、なんて模範的なクズ野郎なの。あれほど見事なカスは見たことがないわ」


 わなわな震えながら、そうつぶやきつつ、

 聖堂をキっと睨み、


「ちょっと、あんた! なんで、あんなカスを信じ――ん?」


 視線を向けた先で、聖堂は、ボソっと、



「……バカの一つ覚えが……」



 そうつぶやいて、歯ぎしりしながらうつむいた。


「?」


 苦悶の表情を浮かべている聖堂の顔を、訝しげな顔で見つめる華日。

 そんな超美少女達を置き去りにして、全力疾走している才藤は、


「おい泥人形! あそこに弱っているメスブタが二匹いるぞ! 殺してくださいとブヒブヒ鳴いているぞ! さあ、友よ! お望みどおり、魂ごと焼き尽くしてやれ! 慈悲なんざクソ喰らえだぜ、相棒! なんなら、肩でも揉みましょうか、先輩!」


 すると、ファーストゴーレムの真っ赤な一つ目が、

 クルンと反転し、逃げる才藤をロックした。


 ――固定されたその視線を見て、

 才藤は、慌てて、


「ちょっ、なんで、こっち向い――」



『2、1、0。――発射』



「うお! ちぃ! くそったれ! 俺は祈る! 俺が死なない事を!」


 唯一使えるスキル『天に祈る』発動。

 鈍く輝く青白い光が、才藤の全身を包む。



 ――直後、ファーストゴーレムの咆哮。

 ピカっと、極悪な闇の灯が瞬く。



 超高火力のレーザーで撃ち抜かれ、

 才藤の体に絶望的な衝撃が走った。


「がはぁあああああああっっっっっ!!!」


 生命力バリアを貫通して肉体に純粋な痛みを与える、

 『貫通属性』の攻撃。


 あまりのインパクトに、

 一瞬、全身が砕け散ったかのような、

 えげつない錯覚に陥った。


(くぉぉ……ぬぅ……痛ぇえ……生命力バリアを無視する貫通ダメージなんて設定するんじゃなかった。……なんか、俺、後悔してばっかりだな……ああ、死ぬほど痛ぇ……)


 体がプスプスと黒煙を吐いているが、


(ま、まあ、でも……祈り、届いたみたいだな。完全オーバーキルの攻撃をうけたのに、ミリ残った。完璧に想定通り。けど、これ、きっつぅ……)


 全てが計算通り。

 ゆえに覚悟はできていた。


 ――そんな才藤のもとに、

 聖堂が、すぐさま駆け寄ってきて、

 才藤の全身をくまなくチェックしていく。


「死んでいないな」

「ああ。ギリだけどな。ぁ、殴るなよ。今、HP1で、デコピンでも死ぬ状態だからな」


「……いいか、クズ。よく聞け。貴様を殺すのは私だ。勝手に死ぬのは許さない」

「状況を見てモノを言えよ、ったく」


 そんなやり取りをしている間もプスプスと煙を出している才藤。

 そんな彼を指さし、


「あはは! ばかだ、あいつ! あたしを囮にしようとして、結局、自分が囮になってやんの! だっさ。きっも。しねば? もう、いっそ、死ねば?」


 腹をかかえて笑う華日。

 ――その笑い声をかき消すように、


《セクション・エンド!! フルコンプリート!!》


 アナウンスが響くと同時に、三人は――


      ―――――――――――


 ――自動転移で元の教室に戻った。


「ととっ……え? あ、もどったの?」


 華日が自分の制服姿を確認しながら、そうつぶやいた所で、


 ――パチパチパチッ……

 という、拍手の音が聞こえた。


 三人とも、反射的に、音がした方に視線を向ける。


「フルコン、おめでとう。まあ、チュートをフルコンできなかった者など、滅多にいないがな」


 そこには、三人の美少女が立っていた。

 真ん中にいる、聖堂よりも背の高い美少女――というより美女が、続けて、


「さて、まずは社会の定石通り、自己紹介から始めようか。ああ、その前に」


 言いながら、そのイケメン系美女は、ビンに入った緑の液体を才藤に振りかけた。

 すると、一瞬で、瀕死の重体だった才藤の体が、ギリギリ動ける中傷まで回復した。


「君の行動は、なかなかに最低だったが、しかし、だからフルコンできたというのも事実。よく頑張った……とは、正直言い難いが、まあ、この世は結果がすべて。よく頑張った」



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― 新着の感想 ―
[気になる点] なんで才藤はわざわざ囮になったんでしょう。 心の奥では二人に死んで欲しくないと願っていたり?
[一言] これは、現時点での過去の才藤の性格を鑑みるに、 逃げたものを撃ち抜く、みたいな感じですかね。 だから、才藤が攻撃をくらった、あるいは、 一番クズな行動をしている奴を撃つとか、 そういった設定…
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