11話 このゲームの難易度は狂っている。
11話 このゲームの難易度は狂っている。
才藤は、頭を悩ます。
どうやって『Z』を倒す?
必死に考える。
その方法。
その手段。
(――っっと、そんな事を考えている間に、ゴーレム、瀕死じゃねぇか。ほんと、あいつらすげぇ強ぇ……って、ぁっ……)
そこで気づく。
というか、思い出す。
(うおぉおおおお、や、やべぇ! この速度はアカン!)
才籐が『遙か未来』の計算をしている間に、
女子二人は、ファーストゴーレムをサクっと追い込んでいた。
しかし、それはマズい。
(こんなに早く追いつめちまうと、『無慈悲な洗礼』のイベントスイッチが起動しちまう!!)
顔を青くしている才藤。
その向こうで、
才藤の顔色など意にも解さず、
――聖堂は、敵の攻撃をガードしながら、
(なるほど。攻撃を受けてもまったく痛くない。HPは、体力そのものではなく、バリアだというのはこういうことか。そして、バリアが破壊されれば、私は死ぬ。なぜなら、バリアは、生命力を媒体にしているから。なるほど、なるほど)
経験を糧に、頭に刻み込まれた情報の意味と価値を分析・解析し、魂にトレースする。
華日も、同じく、
(ダメージを受けた際のバリアの減少は感覚で理解できるわね。まるで、心そのものを削られているみたい。確かに痛くはないけれど、かなり不快ね)
全ての情報をキチンと糧にして、的確に行動へと反映させていた。
聖堂が、スタッフを構えてつぶやく。
「――《闇の罰・ランクE》――」
魔法を使った瞬間、ファーストゴーレムの動きが目に見えて鈍くなる。
対象を、数秒だけ『ドクロを取った時のボンバ〇マン』のようにする呪いの魔法。
聖堂は、非常に正確な体内時計で、キッチリとカウントダウンをしながら、
(魔法もスキルも、チャージ制。なるほど。で、もちろん、強力な魔法であればあるほどチャージ完了までの時間は長い、と。完全に把握。私の職業、『闇魔法使い』というコマの使い方と役目は分かった)
三メートルほど離れた地点では、
華日が、
(あの目つきが悪い女の職業――『闇魔法使い』の役目はデバフ支援と防御無視魔法の確定削り。あたしの、回避タンク特化の『ファントムナイト』とは相性がかなりいい。その上、あれだけ、合理的かつ迷いなく働ける頭脳とド根性があるのであれば、充分あたしの槍として計算できる)
そこで、華日はニヤっと笑い、
(カスのカバーを強制させられるチームワークは大嫌いだけれど、お互いをお互いにとっての有益なコマとして有効的に使い合えるパートナーシップは悪くないわね)
どちらも、ケタ違いに優秀なので、言葉にせずとも通じ合う。
(あのビッチ臭い銀髪、不快だが優秀。今まで見てきた人間の中で、間違いなく最上位クラスに入る超絶的に有能な人材。――他人に利用されるのは大嫌いだが、今は『命』がかかっている。この瞬間だけは、我慢して共闘してやる)
そこからは、まるで、簡単な詰将棋でも解くかのように、
二人は、危な気なく、
ファーストゴーレムを鎮圧・無力化し、
着実にダメージを与えていく。
そんな『楽勝』を目の当たりにした才籐は、
(最悪だ……こいつら強すぎる。こりゃ、もう回避はできねぇ。くそったれ。有能すぎると発動してしまうワナなんざ設定するんじゃなかったぜ)
ヘイトを集めないよう、無駄に洗練された無駄のない無駄な動きでウロチョロしながら、チャンスをうかがう。
――終わりが見えた所で、
『お見事。新たなる探究者たちよ。貴様らは最初の一歩を踏み出した』
死にかけでボロボロになっているデク人形が、目をキランと光らせて、
『それでは、最後に、真理の迷宮が如何に過酷であるかを教えよう。とてつもなく優秀な貴様らでも、乗り越えられない困難があるという事を、その身に刻め』
喋り終えると同時に、右の掌を三人に向け、
『 《ハンマーセッション・ランクA》 』
魔法を唱えると、
『レーザーマジック詠唱中、発動まで三十秒。カウントダウン。30、29、28……』
その瞬間、二人は、ゾクリと背筋を凍らせる。
魔力の奔流から、桁違いにヤバい攻撃がくると理解できた。
見てみると、ファーストゴーレムの右手が妖しい輝きを放っている。




