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10話 ラスボス『Z』


 10話 ラスボス『Z』


 いきなり襲ってきたファーストゴーレムとの戦いの中、

 才藤は、


(考えてもわからない。ともかく、まずは、目の前の敵……ファーストゴーレムを撃退し、身の安全を確保すること。幸い、こっちは三人いる。職業がなんでも、勝てなくはない)


 難しい事は後回しにして、まずは生き延びる事を考えていた。

 死を回避する事――それだけを考えて立ち回っていた。


 その途中で、


(聖堂も酒神も、バカみたいに強ぇ。素ステが鬼高い上に『S級職』とか、強運すぎだろ)


 中学時代、毎日考え続けていたTRPG『真理の迷宮』。

 こだわったのは、自由度の高さと、世界観の広大さ。

 モンスターや職業の数は数千種類、アイテムに至っては数億種類。


(……『明らかに強い職業』を引ける確率、すげぇ低かったのに、たまたま居合わせた二人がどっちも強職とか、マジで神引き! まあ、そこで運を使い果たした感が、俺の性能を見る限り、どうしても否めないんだが……なんで、俺、一番弱い『村人』なんだよ。メイン職業が、最低最弱の村人になる確率だって、相当低いのに、まったく……)


 適正職業とステータスは完全にランダム。つまりは現実と同じ。


(まあいい。とりあえず、俺の性能に関しては、後で、ゆっくりと頭を抱えればいい。まずは、当面の問題。どうやって生き残る――まあ、聖堂と酒神がいれば、ぶっちゃけ、このチュートリアルは楽勝。だとすれば、先の事を考えて、二人のランクを上げるべき)


 才籐は頭の中で、『先の先』を見据える。


(この迷宮では、『強い探究者』がいて困る事はない。というか、いないと困る。『本当にそうなるかどうか』はまだ分からんけど、もし、俺の定めた通りに事が起こるなら、探究者が、『特定時期までに特定条件』を満たさないと………………『世界が終わる』……)


 冗談ではすまない、世界の終焉。

 それが、この迷宮の攻略に失敗した際の結末。



(流石に、ガチの終末は許容できん。そんな責任、取れん、取れん)



 想像するだけで寒気がする。


 『明日、世界が亡くなっていますように』と、

 そこそこ本気で願いながら眠りについた事は何度かあるが、

 『才藤零児のせいで、世界が終わりました』というのは、

 願望の範疇ではない。


(ここまで見た限りでは『全てが、完璧に現実化している』。となると、やはり、条件を満たせなかった時に、世界が終わる可能性は非常に高いと言わざるをえない)


 冷静にモノを考えようとしているが、手の平はビチャビチャになっている。

 元々狂っている自律神経が、さらにしっちゃかめっちゃかになる。


(落ち着け。終末を回避する手はある。冷静になれ。あーもう、心臓、うるさい、騒ぐな)


 真理の迷宮におけるクリア条件は、

 極めてシンプルでRPG的。


(大丈夫だ。問題ない。……ラスボスさえ倒せば、世界は終わらない)


 それは、ほぼ『すべてのRPGに通じるルール』。

 だが、


(しかし、キツいなぁ……ラスボスの『Z』、超強く設定しちゃったんだよなぁ)


 苦悶に顔が歪む。


 一定時期に達すると、

 迷宮から這い出てきて、

 世界を完璧に破壊し尽くす超兵器『Z』。


 そんな凶悪なモンスターでありながらも、『世界を守ってきた偉大なるヒーロー』のコードネームの一部を与えられたという、どうにも逆説的で特異な存在。


 ――『ミスターZ』という存在が、

 才藤にどれだけ大きな影響を与えていたか、

 その証明ともいえるラスボス。


(どうやって倒す? 『英雄の剣翼』でもあれば楽勝だが、あれは結局、『強すぎる』って理由で、組み込むのをやめたから、正規ルートでは入手する方法がそもそもねぇ。裏技もいくつか設定したが、どれも微妙な小技程度でしかない。くそったれが。一瞬でステータスがMAXになる、みたいなチート技を設定しておけば、こんなに悩まずに済んだのに)



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