決着
ミミルは術を練り始めた。
俺は剣に意識を集中させる。
右から来る。
右に剣を振るい短剣を落とす。
が構える暇なく2本目が上から来ている。
間に合わ…。
「もう!」
シルフが俺とミミルを風で飛ばす。
が、前からまた短剣飛んで…。
カキン!
ミミルは術を止めてバリアを張る。
さっきから何回もこの感じだ。
「体がついていかないようね…。」
短剣の飛んだから方向は感じられるようになった。
だが、体が追いついて行かない…どうすれば…。
「姉さん、何まだ遊んでるんだよー!」
別の女性の声がする。
「あら…。あなたの声がするということは時間稼ぎに失敗したのかしら…?
あんなに自信満々だったのに…。」
「うるさいなー、さっさと殺ってしまってよー!
結界も破られちゃうから逃げなきゃだよ!」
「まぁ、あまり面白くないし終わりにしましょか…。」
よし、結界が破られるということは時間稼ぎに専念すればいい。
ミミル、シルフ、オレは目を合わせた。
考えは同じようだ。
短剣が飛んでくる。
1本目は剣で防ぐ。
2本目は対処できないのでシルフに風で逃してもらう。
3本目はミミルのバリアで防ぐ。
…がまだ短剣飛んでくる気配がする。
「まだだ!」
言うよりも早くミミルがバリアで防いでいる。
「次々来るよ!」
シルフが叫ぶ。
次の1本はなんとか剣で防いだが、
無数に飛んでくる短剣で逃げる場所もなく、
ミミルとオレで短剣を防ぐしかなかった。
「バリアも2本目は耐えられるのかしら…。」
ミミルの防いだバリアの上からもう1本短剣が飛んでくる。
パリン!
バリアが割れてそのままミミルに短剣が襲いかかる。
「うら!」
間一髪でなんとか短剣を弾いたが、
オレに向かって短剣が飛んでくる。
やばい!!
「えい!」
レナが何かを投げてきた…と思ったらオレの前で急に爆発し開いた。
布のようなものに短剣が突き刺さっている。
「みんなうちのとこにに逃げてき!
結界張るから!」
「あら、あなたも邪魔するのね…。」
オレとミミルとシルフはレナを目掛けて走る。
短剣もレナを目掛けて飛んでいく。
「もう、先行って!」
シルフが風でオレとミミルを吹き飛ばす。
レナまでもう少し。
が短剣が後ろから飛んでくる。
「おーりゃ!」
剣を地面に刺しブレーキをかけ、
後ろを向く。
カキン!
振り返るとミミルはレナのところにたどり着いたみたいだ。
「早く結界を張れー!」
「待っ…!」
ミミルの声がしたが言い終わるよりも早く、
レナの周りに敷き詰められたアイテムが反応し壁を作った。
「あら、失敗しちゃった…。」
「だから言ったのにー!
先に逃げとくからね!!」
「…さて、どうしようかしら…。」
「ここは一旦引いてくれるとありがたいんだが?」
「でも、今ならあなたと精霊さんも楽しませてくれそうだし…。
もう少し遊ぶことにするわ…。」
言い終わるか言い終わらないからで短剣が3本飛んできた。
「だろうな。」
さっきまでと同様に1本目は弾き、2本目はシルフに風で吹き飛ばしてもらい、3本目を受けようとしたとき、
「残念、狙いはあなたじゃないの…。」
シルフに向かって6本の短剣が6方向から飛んでいく。
「シルフ!」
「やば…。」
シルフが咄嗟に避けるが避けきれない。
短剣がシルフを切り裂いていく。
最後の一本がシルフがシルフを串刺しにしようとしたとき、
「曲ーがれー!!!」
剣先がわずかにずれて串刺しはまぬがれたが、
1/4程度引き裂かれた。
「くっ…ごめ…。」
シルフはパッと消えた。
「シルフー!!」
「あら、串刺しにできる予定だったのに…。
あなた、なにかしたのかしら…?」
なにをしたかは分からない…。
「うるさい!おまえのせいでシルフは!!」
「…。」
短剣が9本飛んでくる。
今度は短剣の軌道が見えた。
その先はオレに繋がっている。
とっさに4本の軌道を曲げて、別の4本に当てるイメージをした。
カキン!
4本はイメージした通り別の4本に当たり、
飛んでくるのは残り1本となった。
残りの1本は剣で弾く。
「驚いた、本当に私の短剣の軌道を曲げられるのね…。
楽しくなってきたわ…。」
9本の短剣の軌道がある1箇所に繋がっている。
あそこにいるに違いない!
「うおー!!」
そこに向けて走り出した。
髪の長い女が見えた。
そ9本の短剣がそこに到達する直前に軌道を下へと向ける。
これで短剣はもうないはずだ。
その女に向かって剣を振るう。
カキーン!!
女は短剣を手にしており受け止められた。
「ここまで楽しませてくれるなんて思わなかったわ…。
ありがとう…。」
あっという間に短剣を軸にしてオレの後ろに降り立つ。
やばい…!!
カキン!!
後ろにはシールドが張られ短剣を受け止めていた。
「あら、結界が解けたかしら…。
さすがに分が悪いわね…。」
女の姿がパッと消える。
「また楽しませてね…。
私の名はエリーネ、覚えておいてね…。」
女の気配が消え静寂が戻った。
オレはその場に倒れた。