オレの戦い方
朝になり、冒険者ギルドに行くと、
昨日乗った馬車よりも大きな馬車が用意されていた。
「みなさん、おはようございます!」
リネが出迎えてくれた。
レナの姿も見える。
「準備はできてますので、
さっそくアレイ村に向かってください。」
こうしてトータスの町をあとにした。
「へー、この道沿いに倒れてたんかー。」
「そうそう、ほんとびっくりしたんだから。」
シルフとレナが話している。
シオンとレッグは前で馬を操作し、
オレとミミル、シルフ、レナは後ろの荷台にいる。
「私達が見つけなければきっと死んでただろうね。」
「命の恩人てところだねー、こりゃあ返して返しきれないくらいの恩があるねー。」
意外とこの2人気が合うのかもな。
「そうそう、もうそろそろトリルの倒れていた…。」
次の瞬間、グラっと視界が揺れた。
「みんな、集まって!」
シルフがみんなを引っ張り体を寄せる。
…と、暗い空間に投げ出された。
地面は黒く透き通っており、
わずかに周囲を確認できるくらいの光がある程度だ。
「な、なにが起こった?」
「おそらく結界術の一種だね。
これだけしっかり分断できたと言うことは時間をかけて罠を張ってたってことかしら。」
「ご名答、まぁ残念ながら虫も何匹か入り込んでいるようね…。」
女の声がするが…声の方には誰もいない。
耳に残る感じの声だ。
「うちの荷物目当て?
なら容赦しないよ!」
「私の用があるのはそこの女の子…。
依頼主から殺すように頼まれててね…。」
ミミルはビクッと体を震わせた。
「私が…狙い?」
「相当兄の件で恨まれているようねー。」
また、ビクッと震わせた。
「ミロは悪くない…きっと別の人。
私達はそれを証明するために冒険者となったの。」
「残念ながら私の意思ではなく、
依頼人の意思だからどうしようもないし…、
せっかくな機会なんだから楽しみましょうよ…。」
カキン!!
ヒュッと風と共にミミルのところから音が聞こえた。
髪の長い女がミミルに対して短刀で襲いかかっている。
ミミルはバリアを張って受け止めていた。
「へー、やるわね…。
まぁ、そうじゃなきゃ面白くないのだけれど…。」
次の瞬間、
「き、消えた?」
「伏せて!エアロストーム」
伏せると頭上で風がミミルを中心に外に向かって吹き荒れた。
「このくらいの魔法なら術を練らずにやれるのね…。
精霊術師、面白いわ…。」
「トリル!時間を稼げない⁉︎
大型の術をするには時間がかかるの!」
シルフに言われ立ち上がった。
「時間を稼げと言われてもな。」
見えない相手にどう対処すれば良いか分からないが、
ミミルだけに任せるわけにはいかない。
剣を持って構えをとった。
「そこの子猫ちゃんみたいに抵抗しなければ傷付けないわよ…。
あなたは対象じゃないし戦っても面白くなさそう…。」
子猫ちゃんとはレナのことのようだ。
「あー言ってるしうちのことは大丈夫。
いざとなったらアイテムで防御壁を発動するようにしたから思う存分戦って。」
レナはしゃがんだままそっとオレに言った。
レナの周りには黒いおはじきみたいなものが並んでいる。
カキン!
ミミルのところからまた音が聞こえた。
今度は人の姿がなく短刀だけがバリアに当たっていた。
そして短刀はまた闇の彼方に消えていった。
「えと、5分程時間をくれたら充分な魔法を使えると思うから、なんとか耐えて!」
「引かないようなら遠慮なくやらせてもらうね…。」
「左!」
と言ってシルフが風を飛ばしてきた。
オレは後ろに飛ばされて鼻先をかすめる程度で済んだ。
カキン!
ミミルの方にも短刀は飛んでいたようでバリアで防いでいた。
「ミミルにバリアさせたらまた一からなんだからちゃん対処してよね!」
まぁ、分かってはいるのだがどこから飛んでくるか分からない短刀を見切るのは難しい。
その後短刀幾度となくシルフに風で飛ばされ、
ミミルはバリアで短刀を防いでいた。
体に傷も増えていったが分かったことがある。
少なくとも飛んでいる短剣は2本。
方向は自由に変えて飛んでいるが紐などは付いてない。
これも相手のスキルと言ったとこだろうか?
「そういえば精霊は数に数えても良いかしら…。
んー…。」
「トリル君、トリル君。」
レナが声をかけてきた。
「一度剣に魔力を込めてみて。
流魔派は剣に魔力を宿して剣自身に振らせるの。
失敗してもシルフが吹き飛ばしてくれるから大丈夫だよ。」
だかどうかは別にして現状一人では何もできてないのは確かだ。
剣に魔力を込める…か。
どうすればいいか分からないが思いのままにやってみる。
「上!」
シルフの声が聞こえた。
が、それより先に体が動く後ろに一歩下がって左に向かって剣を振った。
カキン!
「へー…、対応できるようになったの…。」
もといた所には短剣が刺さっており、
剣で短剣を弾いていた。
ただ、ミミルもバリアで防いでいたらしく短剣は計3本に訂正だ。
「よし!」
「よし、じゃなくてさっさとミミルを守って!
私も援護するから!」
ミミルに近づき背を向け剣を構えた。
「標的が一つに絞られて楽になったわ…。」
ここからが本番だ…。