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商人 レナ

「ダンさん、すいません。待っているようにお願いしたんですが聞かなくて…。」


「ダンさん、アレイ村でなんかあったんですよね!

いろいろ物を売りたいんでうちも一緒に連れてってちょーだい!」


その人はぐるっと部屋を見回すなり続けた。


「シオンさん達はまたアレイ村に向かうんだよね?

雪用装備もしっかり持ってるんでそれをお代にして連れてってよ。

シオンさん達に護衛してもらえると安心だわー。」


そして、俺の方を見て、


「君はお初かな?

うちはレナ、商人ギルドで商人やってるの。

以後ご贔屓を!」


名刺を渡された。


「えーと、レナ。

いろいろ聞きたいことがあるんだがどこでその情報を仕入れた?」


ダンさんが割って入った。


「それはですねー、

まずアレイ村の情報が商人ギルドにも入らなくなったと聞いて冒険者ギルドを見張ってたらシオンさん達が出て行くじゃないですか!

そして1日も経たずして戻ってくるなんて絶対なんかあるに違いない。

しかも帰ってきた馬車を見ると、屋根の上に雪が積もったような跡が見えた。

となると、おそらくアレイ村が雪で閉鎖されてて今が商売チャンスとなるわけですよ…、

おっ、となると君はアレイ村から助けを呼びにきたのかな?えーと名前は…。」


「トリルです。」


「トリル君、そうだよね!?」


おそらくそうだろうが、記憶がないからな。

答えるか迷っているとダンさんが答えてくれた。


「みなまで話す必要はないだろうがだいたい合っている。

ただアレイ村までの道のりは今危険なんだ。

そう、はいはいと依頼をのむわけにはいかな…」


「とは言いつつ、冒険者ギルドと商人ギルドの関係を考えるとむげに断れないですよね?

それに他の商人の方が行くって言うなら多少危険があるかもしれませんが、うちが行くっていうところで安心できませんか?

大丈夫です、いざとなったらとっておきの品を使って逃げますんで。

それに雪で閉鎖されているということは、あの山の中にある村はきっと食料や生活必需品が手に入らなくなってるわけですよ。

そのうち、価格も高騰して…っていうことになりかねない。

それなら今のうちにうちを送って適正な価格で商売させた方が良くありませんか?」


「んー…、分かった分かった。

ただ、今回のアレイ村への物資と医療班の輸送が主な任務だ。

だから大した量は持っていかないからな。」


「なるほど、高付加価値の小さいものを持っていけば良いのですね。

それでは明日朝来させて頂きます。

ごきげんよ〜。」


ひらひらと手を振って颯爽と出て行った。


「てことになったが、すまんが頼まれてくれるか?」


ダンさんは困り顔だ。


「えぇ、まぁ見つかった時点でこうなると思ってましたし、

下手に一人で行かれるよりも良いです。」


「前に一人で町を出て大騒ぎになったんだ。

あいつは商人ギルドの長のご令嬢だからな。」


と、レッグが教えてくれた。

とそこでまたバタバタと音がして戸が開いた。


「あっ、シオンさん達、

後でお泊まりの宿行くんで準備するならそのときお願いしますね!」


レナが顔を見せたかと思うとそれだけ言い残して出て行った。



「まぁ、性格は強引だけど実際売ってるものの質は良いんだ。」


宿に着くとレッグが教えてくれた。

冒険者ギルドに入ると各町に無料で泊まれる宿を利用できるらしい。

まぁ、豪華な宿ではないけど質素で作りはなかなかしっかりしており、

レッグ曰く、

ある程度の襲撃に対しても耐えられる作り、

だそうだ。

オレ達はシオンとミミルの部屋に集まって話をしている。


「うん、いつも助かってるんだー。」


ミミルが付け加えた。

ミミルはというと別れたあと、町をぶらぶらして明日の食料を仕入れていたらしい。


「ただレナの売る食料はいまいちなんだよねー。

さっきミミルが美味しそうなもの仕入れてくれてるから感謝するよー!」


「はは、違いねー。」


「そ、そんなことないよ。

レナさんのは栄養豊富で体にはとても良いんだよ!」


「じゃあミミル食べるの?」


「わ、わたしも遠慮しようかな。」


ハークション!!!


話していると戸の外から大きなくしゃみが聞こえた。

すると戸を叩いてレナが入ってきた。


「だれかうちのこと噂してんのかなー。

みなさん、お揃いで良かった、良かった。

君達にぴーったしの物を用意してきたよー!」


レナがいろんな品を見せてくれた。

防寒用のオーブ(持っていると寒くないらしい)、魔力の回復薬、滑り止め等々。


「レッグの盾もだいぶやられてるねー。

そろそろ替え時じゃない?」


「これは大事な物だから変える気はないさ。

いつも通り魔石だけ交換してくれ。」


魔石とはその人の持つスキルを出す手助けをしてくれるものらしい。

使う魔力が減少するものや発動時間までを短くするもの、スキルの効果を上げるものなど様々なものがあり、

レッグはシールド能力をより強固にする魔石を使っているらしい。


「さて、残りはトリル君だ。

ものまね師らしいけどあまりそのジョブの情報はなくてねー。

何人かいたらしい情報は仕入れたんだけど結局みんな装備もバラバラで。」


「へー、たしかにレアな職業だから詳細は分からないって冒険ギルドでも言われたなー。」


「ただ君の手や目の動きを見ると剣を持ってたんじゃないかと思うんだよね。

おそらく片手で持てる軽めの剣かな?」


言われて気づいたがたしかに右手にだけ小さなタコがあった。


「だいたいこういう特徴の手で、

あとアレイ村出身ってなるとおそらく流魔派を習っていたのかな。」


「流魔派?」


「レナ、トリルは記憶を失ってんだ。」


「そうなんだ、早く教えてくれてれば良かったのに!

流魔派ってのは魔力を使って剣技を高めるのが特徴だね。

アレイ村には流魔派の強ーい剣士がいたんだよ。

さあさあ、良いからこの剣を持ってみて。

きっとしっくり来るよ。」


言われるままに剣を握ると、たしかになんかしっくりくる気がする。


「ただ、オレ金持ってないからなー。」


「今回は出世払いで良いよ!

シオンさん達と一緒に行動できるってことは、

きっと出世頭だからねー。

この恩はなにで返してくれれば。

格安でダンジョン探索に付き合ってくれるとか…。」


「…なんか心配だけどありがたくもらっておくか。

オレも一緒に行くのであれば役に立ちたいし。」


「そんなのがなくても役に立ってくれたけどな。」


レッグがニヤニヤしている。


「なに?その話聞きたい!

教えてよ!」


レナが迫ってきた。


「明日の出発も早いしその辺にしないか?

行きの道でも話は聞けるしな。」


「シオンさんが言うなら仕方ないかー、

それじゃあまた明日ねー。」


と言って、レナは片付けをして出て行った。


「さあ、みんな今日はもう休もう。

また明日な。」


部屋を出て行こうとすると、


「今日はあんた疲れてるでしょ?

レナからもらったこれでも食べな。」


と、シルフが小さな赤い丸い固まりをわたしてきた。


「おぉ、ありがとう。」


口に入れると…、


「すっ、すっぱい、そしてにがい!」


「ははー、引っかかった」


「もう、シルフったら、ごめんねトリル。

これでも飲んでお口直しして。」


オレンジ色のジュースを渡してくれた。


「ありがとう」


一気に飲み干した。


「ふー、生き返ったー。」


「シルフの渡したやつは何かと一緒に飲み込むやつなの。

ただ、体にはすごく良くてきっと明日には元気になってるよ。」


「そうそう、明日にはきっとこのシルフ様に感謝してるよ!」


なんかシルフがドヤ顔している。


「もう、シルフったら…。」


そのあと部屋に戻る途中でレッグが教えてくれた。


「レナの持つ食料はああいうのばっかりなんだ。

自分の食料で荷物をいっぱいにしたくないんだと。」


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