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西暦何年かまとめてない
スイス。バーゼル地方。
少女は伝説を確かめるために、この地にやってきた。
"パラケルスス"ヴァン・ホーエンハイム。
16世紀の錬金術者の一人にして、"ケルススを超える医者"と自らを称する人物に、接触する必要があったのだ。
レイの戦いは終わり、彼はイ-402の艦内でコールドスリープに入った。
再び目覚めるまでに、イ-402には自由が与えられた。
欧州大戦も終わり、統合国家が建立された今、なかば混乱に乗じて、という形であるが、イ-402はロリアン港に入り、碇泊している。
パラケルススは、何十年かに一度、必ず若い男の姿で現れる。
時は西暦2589年。"前回の出現情報"から30年ちょうどである。
二十一世紀、人類が衰退し始めた頃から、その頻度は高まっている。
イ-402は三年前、欧州内の大学・病院すべてに「パラケスス氏に面会求む。代価は人間の限界を超えた技術」との書状を回し、日本人が住んでいても珍しくはないと言われる、デュッセルドルフに宿を借りた。
そして、手紙が届いた。
「医師としてならば往診可能」とだけ書かれたもので、消印はヴェネツィアであった。