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最初のほう

この物語は、歴史を紡ぐ英雄たちが織りなす物語である。

筆者はただの傍観者である旨をここに記載しておく。


帝歴2999年4月1日、世界中に戦火が灯されているときであった。

日本人の大学生、瀬良 礼は20歳の誕生日を迎えた。

「誕生日おめでとうございません!!」

超のつく笑顔で、ミオはクラッカーのひもを引いた。

しかし、糸だけがスカッとぬけてしまい、思わずミオはクラッカーをのぞき込んだ。

【パンッ!!】

瞬間、紙吹雪がミオの顔に降りかかった。

しばし、静寂。

「おめでとうございません!!!!なんでやねん!!エイプリル・フールの午前やからって、なんでクラッカーにまで嘘つかれなアカンねん!」

若干キレ気味に、ミオはクラッカーを床にたたきつけた。

「いや、うん別にそれは俺のせいではないけど・・・」

「4/1に生まれた人の方が悪いと思います」

「つか人が寝てるときにクラッカーは非常識すぎるだろ・・・」

礼の右手は、枕元のレッドホーク7.5インチを掴んでいた。

セルフ・ディフェンス用に、.45ACPを6発装弾してある。

はぁ、とため息をついて、礼はそれを枕元に戻した。

ミオは、クラッカーの紙屑をいそいそと集めている。

「本当は、紙鉄砲にしようか迷ったんですけど」

「迷う要素あるか?」

「なかったですねぇ、今にして考えれば・・・紙鉄砲の方が、こんな目に合わなくてよかったんやなぁって」

「そういう問題か?」

「もしくは爆竹ですね。中国では祝い事に鳴らすみたいですし」

「人の部屋で爆竹やる気か。俺は別にもう慣れたからどうってことはないけど、先生とか絶対怒るだろ」

「ですかねぇ」

四歳年下の少女は、袖の火薬カスをぱっぱと払った。

ふへ、とにやけて、ミオは言葉をつないだ。

「まあでも大丈夫ですよ。私の能力を持ってすれば、あんな音、いくらでも欺瞞できますし」

「サイボーグやばいな」

「一応人間ですよ。人間。ちょっと骨を魔導セラミックインプラントに置き換えたり、伊達メガネを変態テクノロジーのやつにしてるだけで」

「昔の人は、そういうのをサイボーグって言ってたんだよ」

ミオは、改造人間の被験者として大学に在留している。

日本の倫理機構は、原則として人間の改造、複製、再構築を禁じている。

だがこの大学では、闘いを生き抜く戦士として、特別に研究が許されている。

イタリアでは既に、【義体】という規格が定まっており、先天的、後天的に体に障害を持つ生物が、インプラントや投薬によって、通常以上の性能を持つサイボーグとして生きている。

ミオはそれ以上に、物理的限界を越えた、いわば魔法の力を物理的な実用レベルに落とし込む研究の素体である。

ミオが虚空にアットマークを描くと、仮想空間ディスプレイが現れた。

「火薬音はばれませんでしたね・・・今日一番の成果です」

左手でうにょうにょとディスプレイを動かし、メモ帳に書き込む。

「えーと、4/1、クラッカー自爆」

「じばく」

物騒な言葉をレイが思わず繰り返す。

「前から思ってたんだけどさ」

と、レイはミオの指を見てつぶやく。

どう見ても少女のそれだ。白く、細く、爪は丁寧に整えてある。

「インプラントだけでそういうことができるようになるものなのか?」

そういうこと、とは、空間を操る能力・・・今のところは、ディスプレイとキーボードを呼び出し、メモ帳でプログラムを自作して、使いようによっては五感に直接作用するようなエフェクトを反映できる、ということである。

「人によりけりだと思いますよ。私のコレも、スクリプト組めないと単なるメモ帳ですし」

「んー・・・それがまずよくわからん」

「クソ雑魚化学SEエアプ向けに説明しますと」

「(くそざこかがくえすいーえあぷ・・・)うん」

「過去に存在したコンピューターは、演算しかできなかったのです。できてプリント。基本的に、私のコレも同じです。ただ、インプラントにより生体系を経由させることで、コンピューターの数億倍の能力を持たせることができたのです。まあ化学の進歩で、メガネに投影ディスプレイやカメラ、メモリ、通話機能などが搭載できたことで、従来のウェアラブル端末が極端に小さくなったこともあります。あとですね、個人的にメガネは萌えです」

「いや知らんけど」

「物理的シールドに向いてますしね。人類総メガネ時代が待ち遠しいです」





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