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初投稿です。

わたしは闇の中にいた。

夢でも見ているのだろうか。頬っぺをつねろうとしてみたが、わたしの体はまるで、金縛りのあったかのように動かない。


この暗闇の中で、体も動かせずどうしたものかと思っていると、突然赤ちゃんの泣き声が聞こえた。その泣き声は徐々に大きくなり、次第にまわりも明るくなっていた。


「まぁ!なんて可愛らしい」


頭がぼーっとする。視界もぼやけていてよく見えないが、わたしのまわりには数人の人影が見えた。

近くにいた人影が彼女であろう。女性はわたしを抱き上げると興奮したように言った。


「ムウラよく頑張った!可愛い男の子だぞ。ケット、その子を私にも抱かせてくれ」

「へ、陛下。彼女は女性です」


どうやらヘイカと呼ばれた男性は女性以上に興奮していたようだ。

女性はすぐに間違えを指摘したが、男性は聞こえてないようで、彼女からわたしを受け取るとよしよしと言いながら、わたしをブンブン揺らした。気持ち悪くて吐きそうだ。


視界はまだぼやけたままだったが、揺らされたせいか、わたしの頭がだんだんはっきりして気付いた。

わたしは大人だったはずだが。なぜ赤ちゃんに退化しているのだろう。



時は流れて、わたしは5歳になった。

わたしはカトレバス国という国の王子らしい。とはいっても女だが。


実はわたしが生れたあの後、国王の言葉を聞いた宰相が国民に、男の子が産まれたと発表してしまったのだ。

すぐに訂正すれば良かったものの、タイタム王は

「こんなに可愛い子が女と分かれば、国中の男達が娘を狙うことになる!それは許さん!」

と言い、訂正することはなかった。


どうやらわたしは転生をしたようだ。

わたしには前世の記憶があった。

子供は突然、前世の記憶を思い出すことがあるという話を聞いたことがあったが、わたしもそれと同じ類いなのだろうか。


とりあえず前世のわたしは成人していて、仕事も家庭も充実していた。と思いたい。

実はわたしが成人した女性で、仕事をしていたということしか、わたし自身のことを覚えていない。どちらかといえば、前世の世界を覚えていると言った方が正しいかもしれない。


部屋の窓に目を向けると、うっすら日が差し込んでいた。もうすぐ日が明けるようだ。

わたしは宝石で装飾された、豪華なキングサイズのベッドから出た。


ウォークインクローゼットから、白いチュニックとスラックスを取り出し、鏡の前まで歩いていく。

鏡に映っているわたしの姿は、肩まである綺麗な金色のストレートヘアに、パッチリしたコバルトブルーの目。肌は透き通るように白かった。

自分で言うのもおかしいが、わたしはかなり可愛い。これではタイタム王がわたしを溺愛するのも無理はないと思った。


「失礼致します」


そんなことを考えていると、扉から侍女が部屋にはいってきた。


「シヴィル殿下。お召し物を…」


被ればいいだけのチュニックは5歳のわたしでもすぐに着替えられる。着替え終わっていたわたしを見て、侍女は少し困った顔をしたが、すぐににっこりして言った。


「おはようございます。シヴィル殿下」

「おはよう。ケット」


彼女の名前はケット。わたしが生まれたときに抱き上げたのが彼女である。ケットは20歳になる子供がいるらしいが、どうみても彼女は20代前半にしかみえなかった。


「最近の殿下はご自分で何でもされてしまって…わたしは寂しいですわ」


今まではケットがわたしの着替えの手伝いをしてくれていた。しかしわたしは出来るだけ、自分のことは自分でやりたいと思っている。

…というのは建前で、ケットにお願いすると窮屈な王子服を着せられるのが嫌というのが本音だ。


「朝食の準備が整っておりますので、ダイニングルームまでいらして下さい」

「分かった。ありがとうケット」


ケットはわたしに頭を下げると、部屋から出ていった。



ダイニングルームにはタイタム王とムウラ王妃がいた。

タイタム王はわたしと違い、アクアブルーの髪に銀色の目をしていた。わたしの髪色と目は母親譲りだ。


この世界では髪や目の色がすごくカラフルだった。

はじめは髪染めやカラーコンタクトをしているのかと思い、タイタム王の目をつついてみたこともあったが、痛がったもののコンタクトがずれることはなかった。


わたしはずいぶん早く起きたと思ったのだが。両親は多忙な為、朝も早かった。


「父上。母上。おはようございます。」

「あぁ!今日も可愛いよシヴィ!ほらほらこっちに来い。今日は

私の膝の上で朝食を食べよう」


タイタム王は自分の膝をポンポン叩いている。


「おはようシヴィ。今日はチュニックなのね。いつもの服では男の子っぽくて嫌よね。タイタムが女の子だって言っていれば…今頃シヴィは綺麗なドレスを着ていたのに」


ムウラ王妃はそうは言っているが、正直王子の服が窮屈でなければ、わたしはなんでもいい。ムウラ王妃はタイタム王を睨みながら言った。


「ば、バハルトはまだ来ないのかな!」


バハルトとはわたしの10歳年上の兄である。

ムウラ王妃の視線に耐えられなかったのであろう。タイタム王は突然話を変えた。


「あらタイタム。話題を変えても無駄よ。さぁシヴィ、先に朝食にしましょうか」


タイタム王は怯えている。



「ハァハァ。おはよう…ございます」


皆が朝食を食べ終わった頃、息を切らしたバハルトがやってきた。走ってきたのだろうか?

バハルトの髪色と目はタイタム王譲りだった。起きてすぐに来たのだろう。彼のアクアブルーの髪はだいぶ乱れている。


「おはようバハルト。シヴィはもう食べ終わってしまったぞ。シヴィが食べてる可愛い姿が見られなくて残念だったな」

「そんなっ!急いで来たのに」


彼の性格もタイタム王にそっくりだ。


「タイタム。そろそろ仕事の時間よ。バハルト。シヴィ。またね」

「ちょっとまてムウラ!もう少しシヴィと一緒に」


ムウラ王妃は椅子から立ち上がると、タイタム王をズルズルと引きずり部屋から出た。

両親の姿を見送った後、ガックリと項垂れているバハルトを置いてわたしも部屋から出た。


ダイニングルームから出てわたしは、魔導書を取りに書庫へ向かった。


実はこの世界には魔法がある。わたしは前世そういうものが好きだったらしい。

わたしは魔法の存在を知ってからというもの、取り付かれたかのように城にあるあらゆる魔導書を読み漁った。その中には魔物や竜を召喚出来る禁書というのもあった。

しかもわたしは魔法に長けているようで、禁書を含む殆どの魔法を使えることが出来た。

王子でなければ、こんな数の魔導書にはお目にかかれず、魔法を使えることもなかったであろう。わたしはこの立場に感謝した。



「シヴィ。ここにいたのか」


庭園の木陰で、魔導書を読んでいたわたしに声をかけたのは、兄のバハルトだった。侍女がなおしてくれたのだろう。彼の髪は綺麗に整っていた。


「何か用ですか?」


わたしはそっけなく返事をした。しかしバハルトは気にすることなくわたしに近付いてきた。


「シヴィ。お兄様って呼んでみてくれ」


バハルトは瞳をキラキラさせ、期待した眼差しでわたしを見た。

整った顔をしたバハルトは、普通にさえしていれば格好良いと思うのに…すごく残念だと思う。

とりあえず後々面倒なことになるので、兄の期待に渋々答える。


「オニイサマ」

「あぁ!シヴィ可愛い!」


バハルトはわたしの髪をくしゃくしゃに撫で回した。


「やめてください。髪が乱れてしまいます」


そう言っても、バハルトは謝るものの、手は止めずにわたしの髪をさわり続けていた。もう何を言っても無駄だと思い、わたしは諦めて再び魔導書に目を向けた。


「シヴィ。また魔導書を読んでるのか?魔法は魔法騎士団が覚えるものだぞ。シヴィには必要ない知識だろう?」


魔法騎士団とは王族を護衛する騎士のことであり、10歳になると自分専属の魔法騎士団員が配属される。

5歳のわたしにはまだ専属の騎士団員はついていないが、15歳のバハルトの後ろには専属の騎士団員がいつでも控えていた。


兄の言う通り、魔法騎士団以外が魔法を使うことはない。

そもそも魔法は特殊な訓練をしないと使うことが出来ず、その特殊な訓練を知りうるのは魔法騎士団とタイタム王だけであった。

つまり王子であるわたしが魔法を使えるのは、明らかに不自然なことなのだ。


「魔法騎士団といえば、明日騎士団長の息子が挨拶に来るそうだ。父上も俺も可愛いシヴィを会わせたくないが、シヴィにもいずれ専属騎士が必要だからな。シヴィと同じ歳というのも気に入らないが、我慢するよ」


突っ込みたいところもあると思うが、いつものことなので気にしない。


それにしても騎士団長の息子が来るということは…騎士団長本人も来るのだろうか?魔法好きのわたしとしては、ぜひ一度騎士団長に会ってみたい。

わたしは期待を込めてバハルトに尋ねた。


「団長もいらっしゃるのですか?」

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