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 ブロロロ……。「そろそろ見えてくる頃だな」


 後部座席の荷室に遺体を乗せ、ワゴンは十分近く緩やかな坂道を登っていた。角度の大きい蛇行道は舗装こそされていないが、今の所はほぼノーバウンド。多少重力を感じる程度の、至って快適なドライブだ。

「いつもこの道を下って街へ?」

「いや、向こうの森に近道がある」右手に広がる暗闇を指差し、「車も持ってはいるが、使うのは食料の買い出しの時位だな」

「初めてこの辺りに来ましたが、家が全然見当たりませんね。もし何かあったらどうするつもりですか?」

 老婆心からの質問に、メアリーは小さく肩を竦めて溜息。 

「静けさには代えられんさ。―――そんな顔をするな。分かった分かった。今後から困った時はお前を呼び付ける事にするさ。ほら、あそこだ」

 件の別荘は丘陵にぽつんと建っていた。まだ新築らしく、ヘッドライトに照らされた白壁は剥げ一つ無い。

 上部が針状のお洒落な黒金門をガンッ!手慣れた様子で蹴り開ける家主。故人の足元を抱える私も、彼女に続き敷地内へ。

 広々とした庭園は豪放磊落な主の性格通り、見事な野花群生地と化していた。奥には薔薇園らしきアーチも見えるが、恐らくそちらも悲惨な状態に違いない。

「庭師を雇わないんですか?折角の豪奢な庭が勿体無い」

 常々本格的にガーデニングを始めたい私としては、余りの無頓着さに微かな苛立ちさえ覚えてしまう。

「ああ、あくまでおまけで付いて来た物だからな。誰が来るでもないのに、わざわざ金を掛けるなんざ阿呆らしい。―――それともランファ、お前が管理してくれるか?」

 荒れ果てた庭を仰ぎ見る女主人。

「私は別に構わないぞ。今夜の礼だ。花壇でも畑でも好きに作るといい」

「は、はあ……」

 嬉しい反面、余りの無警戒振りに恐怖さえ覚える。同時に、この分だと別荘内も?一抹の不安が過ぎった。




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