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河童の逆転満塁ホームラン。
あゆみがグラウンドを眺めながらそっかと呟いた後、朝のHRを知らせるチャイムが鳴る。
なんだか頑張ったのに有耶無耶になってしまって悔しい。
休み時間になったら彼女にもう一度聞いてみよう。
そう思いながら私は寝てしまった。
目が覚めたのは二限目の途中、社会科の授業だった。
担当の教師は私達女子テニス部の顧問でなんだか覇気がないくせに無駄に暑苦しい太った河童のような人だ。
そんな彼の奥さんは元教え子だというのだから驚きである。
一体どんな事をすればそんな逆転満塁ホームランが打てるのか。
努力をしていればなんとかなるなら私は逆転満塁ホームランを打ちたい。
思いっきり場外まで飛ばすほどの勢いのあるやつを。
そんな風なことを考えているとなんだか分からないけれど指名されている。
口の端を手で拭ったあと私は近納先生へ分からないです、と雰囲気で伝える。
無言の押し問答が10秒か15秒続いた後彼は折れて私の後ろの男の子を指名する。私は心の中で小さくガッツポーズをして自分の頭の中へ帰ることにした。