8/11
名無し(3)
風呂場でもがく女の力は次第に抜けていった。暴れもがいた女の腕や足は嘘のようにしなだれていき、やがてその動きを止めた。
『♪♪オフロガ、ワキマシタ♪♪』
間抜けなアナウンスが聞こえた。
この女はせっかちなのだろうか。風呂が沸きあがる前に風呂場に入るとは。そのおかげで不意を突く事が出来たわけだが。
やった。久しぶりに何かを成し遂げた達成感で昂ぶっている自分がいる。
とりあえず、これでいい。
後は金目になるものを好きに頂く。そういう約束だ。その後の事は知らない。
どうせ私の事を存在している人間として確認しているのは、あんただけだ。
あんたが望む事はこれで果たした。
それでは、さっさと退散する事にしよう。




