彩也子(4)
この先にあるのが答えだ。
そう思って、恐怖に屈しそうになりながらも、その先に目を凝らした。
でも。
これが答えだと言うのなら、あまりにもふざけすぎてはいないだろうか。
「弘明、助けてよ」
思わず本音が零れた。
『♪♪オフロガ、ワキマシタ♪♪』
この音が聞こえ続ける理由はなんだ。
『♪♪オフロガ、ワキマシタ♪♪』
ずっとこの音が耳の奥にこびりついている理由はなんだ。
『♪♪オフロガ、ワキマシタ♪♪』
何かを象徴するかのように、何かを訴えかけるように、何かに気付けと言わんばかりにずっと鳴るその音の理由はなんだ。
そして。
目の前で裸でぐったりと、上半身を湯の中に沈めているこの人間は一体誰だ。
“…………レヨ”
そしてもう一つ聞こえ続ける音。
風呂の機械音とは別に聞こえる別の声。
頭の奥で鳴っているのに、 外から呼びかけてくるようなこの声。
“…………クレヨ”
徐々に声がはっきりしていく。
それは何かを望んでいる声だった。
『♪♪オフロガ、ワキマシタ♪♪』
“……デクレヨ”
『♪♪オフロガ、ワキマシタ♪♪』
“……ンデクレヨ”
『♪♪オフロガ、ワキマシタ♪♪』
“シンデクレヨ”
死んでくれよ。
全てではない。だがある程度理解した。そして認めた。
ああ、そういう事か。
じゃあ、ここは。
ここじゃないんだ。
顔を湯船につけ浮かぶ浮遊体。その身体がゆっくりと、ぐるりとこちらを向くように動き出した。
『♪♪オフロガ、ワキマシタ♪♪』
気付けば私は裸でずぶ濡れになっていた。
湯船に浮かんだ顔がはっきりとこちらを向いた。
『♪♪オフロガ、ワキマシタ♪♪』
最後に私が聞いた音が、この音だったのね。
そして。
“シンデクレヨ”
私の携帯でも盗み見たのだろうか。
いつからその念を飛ばし始め、そして、私を殺そうと思ったのだろうか。
自業自得。いや、違う。
あなただって一緒じゃないの。
「弘明、もう会えないのね」
だから、私は呼んであげない。
あなたの名前なんて。
私は勝ち誇ったかのように、あなたより大切な男の名を口にしながら笑みを浮かべた。




