ミンと池田
昔、書いていた戯曲の一部です。
世界を行き来するような話だと、何に分類されるんでしょうか。
◯坂の多い住宅街。曇天。T字路の角に喫茶店がある。
遠くで電車の音がする。自動車が走り抜ける。
自転車で女子高生が喫茶店にやってくる。
喫茶店の脇に自転車を止め。
ミンのN「私はいつものように、駅の近くでもなく、客もいない、どうして潰れないのかわからない喫茶店で日記を書くことにした」
◯喫茶店
ドアを開けるとカランと音がする。
ピシっと背筋が伸びたマスターがコップを拭いている。
マスター「いらっあ、またお前かー」
マスター、猫背になる。
ミン「なんだ、そのなんだお前かって感じは、感じ悪いぞ」
と、バサッとカウンター席の椅子にカバンを置き、隣の椅子に座る。
マスター「感じ悪いかー女子高生だろー、もっと行くとこあるだろうよ、友達いねーのか?」
ミン「バカやろう、そんなリア充みたいな生活できるかよ」
と、カバンからノートを取り出す。
マスター「できろよー」
ミン「できろよってなんだ、その日本語・・・変!」
マスター「変いえーい!で、今日はなんにする?」
ミン「いつもの」
マスター「鼻水のソーダ割りね」
ミン「コーヒー!」
マスター「コーヒーね」
ミン「今日は奥さんいないの?」
マスター「あー出かけてる」
ミン「バレー?」
マスター「いや、死にかけの老人を風呂に沈めてとどめを刺してくるって」
ミン「怖い!やめてよ、介護でしょ!」
マスター「そうともいう」
ミン「いいよなぁ、奥さん、どうしてマスターと結婚しちゃったんだろ」
マスター「それはオレのアレだよ」
ミン「え?マスターに魅力なんてないじゃん」
マスター「バカ、オレにだってあるよ、魅力?ないよ、あるよ」
ミン「どっち?」
マスター「んーまぁ、どうしてもってオレがお願いしたからだよ、お願い力だよ」
ミン「土下座かぁ、最近はやってるからなぁ」
マスター「いや、土下座はしてないよ」
ミン「土下座してないのにー!?」
マスター「いやだろ、結婚してくださいの土下座って」
ミン「うん、んやだー」
マスター「ま、死ぬかと思ったけどね」
ミン「なんで?」
マスター「プロポーズしてから、ずっと息止めてたんだぁ、そしたらなかなか返事してくれなくて、そのうち白目向いて倒れちゃったんだよね」
ミン「え!?カッコ悪~」
マスター「でも、病院のベッドで起きたら奥さんが『よろしく』って言ってくれたんだ」
ミン「かっこいいー」
マスター「かっこよかったぜー、かっこよすぎてちびったー」
ミン「言わなくていいから、そゆこと」
マスター「それから頼りっぱなし」
ミン「大人ってそんなんでいいのかぁ」
マスター「いいんだよ、そんなんで」
ミン「へ~、あ、そうだ、雨ふりそうだったぞ」
マスター「えーちょっと洗濯物取り込んでくるから店番しといて」
と、奥ののれんをめくり、階段を急いで登っていく。
ミン「店番って、どうせ誰も来ないじゃないか、あーあ空から女の子でも落ちてこないかなぁ『親方!空から女の子が・・・』的なことねーのかよ、はぁーなんか降ってこないかなぁ空・・・」
◯宇宙。銀河の端っこの漂流船。
薄暗い漂流船の中に冬眠装置のカプセルずらりと並んでいるが、ほとんどが空。
1つのカプセルが開き、Tシャツと短パンの女の子(池田)が外に出る。
ペタペタと裸足でホールの方に向かう。
体育館ほどのホールにはデッキがあり、デッキの椅子に男が座っている。
池田「はぁ~よく寝た」
ウォレス「やぁ、おはよう」
池田「おはよう、他の人は?」
ウォレス「全員消えてしまいました」
池田「え?」
ウォレス「残念なお知らせが2つあります、一つはこの船は今漂流してます」
池田「なんですって?木星は?」
ウォレス「木星はだいぶ初期の段階で航路から外れています。超高速で飛んできたニッケルと鉄の集合体に当たりましてな、この船の乗員のほとんどが避難したのです。そう報告書に書いてある」
池田「なんで私たちだけ、残っちゃてるの?」
ウォレス「あくまでも仮説ですが、船長の小指が短かったため、すべての緊急覚醒装置を押せなかったのでは、と考えられます」
池田「えーなにそれー」
ウォレス「心中お察しします、何か飲まれますか、あまりのことに動揺してらっしゃる」
池田「いや、別にそうでもないけど、なんか飲み物あるならほしい」
ウォレス「そちらの全自動レストランで好きな物を頼んでください、古今東西ありとあらゆるもののレシピが入ってますので、すぐに再現されて出てきます」
池田「あ、なんでもいいの?じゃ、鼻水のソーダ割り」
全自動レストラン装置から、ブーッ!と音が鳴る。
池田「なんでも出てこないけど」
ウォレス「普通のもの頼んでもらっていいですか」
池田「冗談よ、コーヒー」
全自動レストラン装置からコーヒーが出てくる。
それを池田が受け取って、
池田「それで、もう一つの残念なお知らせって?」
ウォレス「予定より、1000年ほどタイムシフトしています」
池田、コーヒーをすする。
ウォレス「驚かれるのも無理はない」
池田「いや、別に、そういうこともあるかぁくらいだけど」
ウォレス「わかります、あまりのことに困惑しているのですね」
池田「いや、してないけど。今何処らへんにいるの?」
ウォレス「ちょうど銀河の端っこです」
池田「いいねー」
ウォレス「いい?」
池田「展望台行ってみてもいい?」
ウォレス「かまいませんが、あまり見せたくないものがあるのですが」
池田「いいじゃん」
ウォレス「わかりました、案内します」
池田「ありがと、ところで何があるの?」
ウォレス「私の遺体です」
◯喫茶店
マスターがコーヒーをミンのテーブルに置く。
ミン「んーいい香り、ブルマン?」
マスター「いや、ネスカフェ」
ミン「ネスカフェ!?」
マスター「ダバダーダーバダバダーダバダーダーダッダダー・・・僕にはこの意味が全くわからない」
ミン「誰もわからないよ」
カランと音がする。
ドアが開き、スーツ姿のいかにもOLという女性が入ってきて、
マスター「いらっしゃいませ、お好きなお席にどうぞー」
ミン「あれ?態度が違うな」
マスター「当たり前だ、いいか、散らかった顔の女子高生と整った顔のOL、どちらがサービスしたい?」
ミン「そんなのずるいぞ!お客様は神様のはずだぞ!」
マスター「バカめ!そんな時代は終わったのだよル◯ク君、フォースを感じろ」
窓際の席に座ったOL。
マスターが、OLのところまで行き、メニューを渡す。
マスター「なんになさいますか?」
OL、メニューをあまり見ずに
OL「コーヒーで」
マスター「かしこまりました」
ミン「またネスカフェかよ」
マスター「ブルーマウンテンでよろしいですか?」
OL「はい」
マスター「少々お待ちください」
ミン「ちょっと、どうしてあの人にはブルーマウンテンなのさ」
マスター「どうしよう、最高好みだ」
ミン「こら」
マスター「さ、お子様は、ほら日記でも書いてな」
ミン「私にもブルマン頂戴」
マスター「君にはまだ早い、ジェダイになってからだ」
ミン「あのOLだってジェダイじゃないよ」
マスター「いや、強いフォースの力を感じる、ほら手をかざしてみろ」
ミン「え?」
マスター「やめろ!馬鹿にしか見えんぞ」
ミン「マスターがやらせたんじゃない!」
マスター「しっ静かに。豆の声が聞こえないのか?」
ミン「聞こえないよ」
マスター「若きジェダイよ、フォースを感じろ」
ミン「感じられるわけないでしょ!?」
マスター「フォースはお前とともにいるのだ、いかなるときも」
ミン「フォース感じてないで早くコーヒー作ったら」
マスター「確かに」
ミン「まったく」
マスター「助けて、オビ=ワン。少しこぼした」
ミン「うるさい!」
■銀河の端っこの漂流船にシーン転換。
◯緊急のアラームのような音が鳴っている。
池田「うるさいなぁ、これ、止まらないの?」
ウォレス「ああ、失礼」
◯アラーム音消える。
池田「で、これどうすんの?堆肥にする?」
ウォレス「いや、確かにもうまったく必要はないのですが、一応私の遺体なので、できればどこかに保存しておいてはもらえないでしょうか?」
池田「ん~もらえない!」
ウォレス「えっ!」
池田「だって、気持ち悪いじゃん!」
ウォレス「どうしてもダメですか?」
池田「いや、どうしてもって言うなら、別にどこか箱のなかに入れて、気づかぬうちに外に放り投げておかないでもないけど」
ウォレス「いや、それだとあまり意味が無いというか」
池田「とりあえず、ギュウギュウに圧縮してみる?何かになるかもよ」
ウォレス「いや、ならないですよ」
池田「そう?じゃ、焼いてみる?ていうか、1000年も経ってるのになんで原型を留めてるの?宇宙だから?」
ウォレス「そうです、宇宙だから分解するバクテリアなどはいないのです。」
池田「ふ~ん、ああ・・・なんというかぁ・・・邪魔だよね、せっかくの展望台なのに、おじさんの死体があったら、どお?景観を損ねるでしょ」
ウォレス「ええ、確かに・・・」
池田「よしやっぱり、捨てよう!」
ウォレス「そ・・そうですか(泣く)」
池田「おいー、フォログラムなのに泣くなよー」
ウォレス「仕方ありませんよ、そうプログラムされているのですから(泣く)」
池田「じゃ、捨てないよ」
ウォレス「本当ですか!(喜び)」
池田「いや、嘘だよ」
ウォレス「鬼だー(泣く)」
池田「え~そんなこと言ったってさ~」
ボキっというSE。
池田「あ、やべ、右腕とれちゃった」
ウォレス「あ~私の右腕~」
池田「まぁ、1000年も経てばもろくもなるさ、とりあえず鼻の穴の中に指突っ込んどくか」
ウォレス「やめてくださいよ」
池田「やっぱり、時間経ってるからカッサカサだね」
ウォレス「あまり触らないでください」
池田「別に触りたいわけじゃないんだけどさ、これって内蔵とかどうなってるんだろうな?」
ウォレス「だから、触らないでくださいよ!」
池田「ふふふ、いくら怒ってもキミはフォログラムなのだよウォレス君、触れられないのさ、どうだ?キミの右腕で素振りだってできるのだよ」
ウィーーーーというラジコンのSE。
池田「な・・・なんだ、このラジコンは?」
ウォレス「確かに、触れませんけどね、私はこの宇宙船の機械なら、なんでも動かせるのですよ。例えば、このラジコンの先につけたスタンガンを使って」
池田「おい!そんなの卑怯だぞ!この右腕で叩き壊してやる」
バチバチというスタンガンの音。
池田「あ、本当にやるなよ」
ウォレス「では、その右腕を」
ぼうっという炎が燃えるSE。
ウォレス「あーー!!!」
池田「馬鹿だなぁ、スタンガンなんか使うから、自分で自分の足を火葬してるじゃないか」
ウォレス「ちょっと、火を消してください」
池田「そのラジコンで何とかならんのか?」
ウォレス「そういう、難しい動作はできませんよ、お願いですから火を消してください」
池田「しょうがないなぁ」
ガスガスと枯れ葉を踏むような音。
ウォレス「あー私の、私の右足がーー!粉々にーー!!!」
ガスガスと踏む音が消える。
池田「まぁ、こんなもんだろう」
ウォレス「ああ、なんて有り様」
池田「まぁ、いいじゃないか死体なんだ右半分が黒焦げで足が粉々に砕け散っただけじゃないか?あ、クビがとれた・・・が、気に病むことじゃあない」
ウォレス「私の右半身とクビがぁ・・・」
池田「フォログラムなのに、女々しいやつめ」
ウォレス「なんてことだ、こんなことなら眠っておいて欲しかった」
池田「残念だったな、私は起きて今絶好調だ」
サイレンの音が鳴り響く。
池田「まったく、なんだ!?さっきから」
ウォレス「ああ、近くに惑星が見つかったのですよ」
池田「なんだ、そうか、じゃ、そこに埋めよう」
ウォレス「ええ?なんでですか?」
池田「だって、キミの死体を粉々にしないでおく自信がないよ、私は」
ウォレス「でも、その惑星がどんな星かもわかってないんですよ」
池田「まぁ、大丈夫だろ、行けばなんとかなるさ」
ウォレス「そうですか?じゃ、行きますか、ちょっと手動で運転しないといけませんから、制御室に行きましょう」
池田「ああ」
ラジコンの音と足音。
池田「ところで、キミはこの宇宙船の機械なら全部動かせるのだろう?」
ウォレス「ええ、でも航路に関しては生身の人の手で行うようプログラムされていて、手出しはできないのですよ、私はただ従うだけのフォログラムですから」
池田「そうか・・・」
ウォレス「どうかしましたか?」
池田「いや、さっきどうしてスプリンクラーを回さなかった」
ウォレス「あ・・・!」
池田「あまり、いいCPUを使ってないみたいだな、ポンコツー」
ウォレス「やめてください!そんなアダ名は認めませんよ」
池田「いいじゃないかポンコツ」
ウォレス「知らんぷりです、私は」
池田「あ、しまったポンコツの右腕まで持ってきちまった、捨てておこう」
ウォレス「あー!」
■シーンが転換するSE。
喫茶店。
マスター「ブルーマウンテンでございます」
OL「あ、ありがとう」
ミルクと砂糖を入れ、OLがスプーンでコーヒーをかき混ぜる。
ミン「で、これが私のブルマン?」
マスター「いや、これはおれが2杯飲むために用意しただけだよ」
ミン「コーヒーカップ割ったろかい!」
マスター「え?」
ミン「割ったろかい!」
マスター「しょうがねぇな・・・割ってくれ」
ミン「え?割ったろかい!」
マスター「絶対に飲ませないからな!絶対だぞ!絶対に」
ミン、コーヒーを飲む。
ミン「あー落ち着く」
マスター「飲んでんじゃねーか」
ミン「3回目の『絶対』は飲めの合図でしょ」
マスター「え?」
ミン「ん?」
マスター「いやこっちが、聞いてんだよ」
ミン「で、どう思う?あのOL」
マスター「ん~どうだろう、とりあえず窓際に座ったから、眩しそうにしてるね」
ミン「いや、そういうこと聞いてるんじゃなくて」
マスター「え?」
ミン「ん?」
マスター「いやだからこっちが聞いてるんだけど」
ミン「ん?なんつって?」
マスター「ん?なんだっつって?」
ミン「あれは人生に疲れちゃってる系かなぁ」
マスター「その系やだなぁ」
ミン「マスターだって疲れちゃってる系じゃないの?」
マスター「えー疲れちゃってる系小太り属オヤジ科足臭野郎って最悪じゃないか!」
ミン「最悪よ」
マスター「え?」
ミン「ん?」
OL「機械の身体がほしい」
ミン「え!?」
マスター「おいおいどうしちゃったんだ、あのおじょうさん」
OL「なんなんでしょうね、保険て必要ですか?というか保険レディって、私って社会にとって必要なんでしょうか、ねぇ、どうなんでしょう」
マスター「・・・さぁ」
OL「わかんないっすよね」
マスター「ええ・・・まぁ」
OL「はぁ~あ、一個ぐらい契約落としてもわかんないっすよね」
マスター「え!!?・・・それは・・・」
OL「わかんないわかんない、はぁ~あ、貧乏人に与える保険なんかないっつーの」
マスター「すげーアメリカの金持ちみたいなこと言ってるぞ、あの保険レディ」
ミン「怖い」
マスター「荒れてますね」
OL「そりゃ荒れますよ、毎日毎日、足棒になるまで歩いて、おやじのいやらしい視線感じながら生きてれば荒れ放題ですよ」
マスター「それで機械の身体がほしいと・・・」
OL「機械なら無駄なこと考えなくていいじゃないですか」
マスター「でもやっぱりぬくもりがあったほうがいいじゃないですか」
OL「ぬくもりって温かいだけじゃないですか、そんなのハードディスクだってぬくもりありますよ」
◯ドアが開く音。ビニール袋の音。
マスター「いや、あなたのぬくもりに用があるんですよ!!(サンボマスター風)過去を紐解けば~♪いろんな事柄が~♫あなたの前にも~あれ?帰ってきてたの?・・・・おかえり」
奥さん「ただいま・・・(ムスっと)なにしてんの?ぬくもりがどうとか言ってたけど?」
マスター「いや・・・励ましのソングを」
奥さん「そ・・・」
◯遠ざかる足音。階段をのぼる音。
マスター「洗濯物は取り込んでおきました(小声)」
◯勢いよく階段を降りてくる足音。
奥さん「洗濯物たたんでないじゃないの!!」
マスター「はぁっ・・・はいすいません、お客さんが、お客が、お客の野郎が来てたものですから・・・」
奥さん「いいわけしてんじゃないわよ!!」
マスター「すみません」
奥さん「だいたいあのひとなんなの?」
マスター「保険レディだそうで」
奥さん「保険レディ!!!???」
OL「あのよろしければ生命保険なんていかがでしょう」
奥さん「あらいいわね、あなた母印貸して」
マスター「え?」
奥さん「さ、ほら、親指切り落として」
マスター「いや、それはちょっと」
奥さん「いいじゃないの、契約した瞬間に死ぬんだから、ちょっとくらい欠けたってかまわないわよ」
マスター「はははは・・・冗談ってなんでも言えるところが怖いよな」
ミン「っはは知らない」
奥さん「ちょっと来なさい」
マスター「いたったたたたたた、耳ってけっこう簡単に千切れるんだからそんなに引っ張らないでー」
OL「大丈夫ですかね?」
ミン「ええ、いつものことです、あ、おかわり入ります?」
■シーンが転換するSE。
砂漠の星・バルベル。一面の砂山。
ウォレス「奇跡ですね」
池田「一面砂漠だ」
ウォレス「ここは惑星バルベル、ほとんど砂に埋もれた星です」
池田「それで、酸素濃度は?」
ウォレス「ほぼ地球と変わりませんね、ただ、外には出ないほうがよろしいかと思いますよ」
池田「なんで?」
ウォレス「砂嵐で動けないです」
池田「なんだ、じゃハズレか?」
ウォレス「ただ、一箇所、研究基地がありますね」
池田「なんの研究してたんだ?山崩しか?」
ウォレス「えーと」
電子音「KEEP OUT」
ウォレス「わかりません、一応特務事項のようですが200年ほど経っているので、期限は切れているのかもしれません」
池田「まぁいい、使えそうなものがあるならもらっていこう」
ウォレス「使えそうなものですか?今のままでも十分でしょう」
池田「バカだなぁ、フォログラムなのに、バカグラムだ」
ウォレス「やめてください、変なアダ名を付けないでください」
池田「いいか、お前はもうミイラになっちゃってるからいいかもしれないが、私は地球に帰りたいんだ、ワープ装置とか燃料があるなら探した方がいいだろ」
ザ・・・ザザ・・・(ノイズ音)
池田「なんだ?」
ウォレス「あーあ、いつものバグでしょう」
池田「いつもあるのか大丈夫か?この船は」
エマージェンシー!!!ヴぃイイイイイ!!
ウォレス「船がハッキングされている!???」
池田「近くに誰か居るのか??」
ウォレス「敵船は半径40000キロメートル内にはいません」
池田「じゃ、基地か」
ウォレス「しかし、もう誰もいないはずです」
池田「なぜそんなことが言える?」
ウォレス「内部で抗争があったようで、全研究員は150年以上も前に脱出しています」
池田「生き残りがいたってのか」
ウォレス「さぁ、我々と同じような漂流者の可能性もあります」
池田「どちらにせよ基地に向かうぞ!」
ウォレス「あ・・・ちょ・・・くすぐったい・・・あ、私までウィルスにゴホッ風引いたみたいになっ・・・ペローン、ペローン酔払ってぺろーん」
池田「何やってんだ?」
ラジコンの音がする。ウィー
ラジコンがバチンと電源を落とす。
真っ暗。
池田「真っ暗で何も見えないじゃないか」
船内アナウンス「非常灯がつきます」
池田「あ、ついた」
ウィーっとラジコンが近づく。
ウォレスの声「あー危なかった、とりあえずこのラジコンに私のデータを移しました、声だけで申し訳ありません」
池田「ああ、そうなの、まぁいいよ不愉快だったし、それアームは動くのか?」
ウォレス「もちろん」
ウォレス、アームを動かしてみせる。
池田「で、この船はどこに向かってるんだ?」
ウォレス「基地のようです」
池田「やっぱし、なんか気持ち悪いな」
ウォレス「確かに嫌な予感がします」
池田「いや、そうじゃなくて、お前だよ」
ウォレス「え?ワタクシですか?」
池田「ちょっと顔描いてやるよ」
ウォレス「ありがとうございます」
池田「あ、ほらできた!」
ウォレス「早い!」
池田、顔の絵を描きラジコンに貼る。(鼻毛バビューン)
ウォレス「な…なんですか、この顔は!!私こんな顔してません!」
池田「似たようなもんだろ」
ウォレス「いや、おかしい、描き直しを要求します」
池田「あ、ほらもう基地が近いぞ、ドッキングするんじゃないのか」
ウォレス「ちょっと話がそれてますよ」
池田「いいじゃないか、データのくせにやかましいな、武器はないのか?あとトランシーバーなんかは?」
ウォレス「どうするつもりですか?」
池田「敵の殲滅と、探検に決まってんだろ」
ウォレス「なんでそんなことを?」
池田「向こうから招待されたんだ、こっちだって正装でいかなくちゃ、倉庫はこっちだったかな?」
ウォレス「反対です」
池田「こっちか」
プシューっと扉が開く。
池田「あ、あったあった、これとこれとこれもかな」
池田、火炎放射器をボオッ!!と打つ。
池田「さて、行くか」
◯惑星バルベル基地の内部
ウォレスの声「先に出ます、念のため宇宙服のヘッドセットをしておいてください」
池田「ラジャー」
プシューと扉が開き、さながらゲーム「メトロイド」のサムスとアニメ「WALL-E」の影が現れる。
池田「な…なんだこれは!!??」
■日本の喫茶店。
上の階から、複数の足音がドドドドと聞こえる。
「ギャー!!」という悲鳴。
ミン「なんだこれは?」
階段を駆け下りる音が聞こえ、マスターと奥さんが急いで降りてくる。
マスター「なになになになに?」
奥さん「なによあれ?」
OL「どうされたんですか?」
マスター「ネズミが・・・ネズミが!」
奥さん「あんなにたくさんどこからきたの?」
ミン「ネズミ?」
奥さん「いや、旦那をひっぱたいてたら白いネズミが急に現れたのよ、そしたら大量に部屋の隅から現れて」
ミン「なんですか、それ?」
奥さん「わからないわよ」
マスター「とりあえず、害虫駆除の業者に電話しようか?」
OL「ちょっと待って下さいよ、そのネズミって白かったんですよね?」
奥さん「ええ」
OL「上に上がってもよろしいですか?」
奥さん「え?ネズミがいるのよ、平気なの?」
OL「ええ、たぶん、ネズミは全部白いんですよね?」
マスター「え?なに?保険屋さん、ネズミの使いかなんかなの?」
OL「なんですか、それ?いや、私はもしかしたら実験用ラットなんじゃないかと思っただけです、ほら、普通のネズミはネズミ色してるでしょ、なのに白って」
奥さん「白だったよ」
OL「私、大学の頃研究で使ってたから」
ミン「研究?」
OL「保険屋やるまえは大学でがんの研究してて、よくラットの脳みそ取り出してたんです」
奥さん・マスター・ミン「ええっ!?」
マスター「気持ち悪っ!」
OL「そんなことないですよ・・・そうですかね?」
奥さん「それで、仮にその実験用ラットだとして、なんでうちに大量に発生してるわけ?」
OL「さあ、それはなんとも、とりあえず、害虫駆除というより警察に電話したほうがいいかもしれませんよ、なんかのラットが感染症にかかってたら、全員お陀仏でっせ」
奥さん「えっ!」
マスター、急いで電話をかける。
マスター「もしもし、あのですね、緊急事態なんですけど、うちに白いネズミが大量発生してですね・・・え?ええ、世田谷の二子玉川沿いにある喫茶店です(とか何とか)」
ダダダダという足音が聞こえる。
OL「ま、これだけ元気なので、大丈夫かとは思いますけど、噛み付いてきたりはしてないんですよね」
奥さん「ええ、まあ」
OL「ちょっと見に行ってみますね」
奥さん「大丈夫なの?」
OL「大丈夫でしょ」
OL、階段を登っていく音。
奥さん「でしょって言ったね」
ミン「ええ、でしょって言いました」
奥さん「じゃ、大丈夫じゃないかもしれないってことよね」
ミン「そうですね」
奥さん「あのOLさん、ネズミは大丈夫かもしれないけど、お面は大丈夫かしら?」
ミン「お面?」
OLの声「ああぁーーーーー!!!」
奥さん「ダメだったみたいね」
OLがバタバタと降りてくる。
OL「なんなんですか?アレは」
奥さん「趣味よ!!」
OL「趣味って言ったって、アレ全部・・・」
奥さん「ええ、お面よ、世界中から集めたお面、修復途中のも含めると、ま、多いかな」
OL「多いって、あんな壁一面」
ミン「壁一面・・・お面?」
奥さん「そう、壁一面お面、どお?知らなかったでしょ?大人になったら秘密を持つものなんだよ」
マスター「ちょっと秘密が、僕の生活スペースに侵入してきてるんだけどね」
奥さん「あなたの生活スペースはカフェでしょ」
マスター「はい」
ミン「それで、ラットは?」
OL「ああ、見なかった」
奥さん「警察は?」
マスター「すぐ来るって」
一同、ほっとする。
マスター「コーヒーでも飲む?」
奥さん「そうね」
ミン「ラットってお面食べませんよね」
OL「まぁ、かじるくらいでしょ」
マスター「あははは」
奥さん「そうそう、かじるくらいよ」
マスター「そうそうあの量で、かじったら・・・」
奥さ「ははは・・・ヤバイ!」
マスターと奥さん、急いで階段をあがる。
ミン「お面って高いのかな?」
OL「お面に保険かければいいのにね」
マスターと奥さんの声「あああーーー!!!」
■惑星バルベル基地内
池田とウォレス、それぞれ違う場所を探している。
池田「うるせーなぁ、まったく」
ウォレス「聞こえてますか?ミス池田!池田さん!大体1000年以上も前のトランシーバーを使うなんて」
池田「うるさいぞ!ポンコツ」
ウォレス「どうなってるんですか?生体反応だらけじゃないですか?ああー!また何かの糞を踏みました。ワタシ」
池田「うわっきったね戻ったら、近づくなよ」
ウォレス「熱源センサーに切り替えてください!すごい数です」
池田「切り替えてるよ!大きいソーセージみたいなのがそこら中にいる」
ウォレス「ええ、ハダカデバネズミに非常に酷似しています」
池田「ネズミだって?これが?」
ウォレス「ええ、実験用に持ち込んだ種が繁殖しているんでしょう」
池田、扉を開く。
池田「おい、ポンコツ」
ウォレス「あー内蔵がなくて本当に良かった」
池田「ポンコツ!ウォレス!応答しろ!」
ウォレス「何ですか?ミス池田」
池田「この星の研究員は逃げ出したんだよな」
ウォレス「ええ、そう報告書には書いてありました」
池田「じゃ、ここには人間はいないんだな」
ウォレス「ええ、ミス池田以外は射ないはずです」
池田「じゃあ、これは一体なんだ?」
ウォレス「どうしたのですか?」
池田「中年の男が水槽の中に浮かんでいる」
ウォレス「何を言ってるんですか?ミス池田しっかりしてください、そんなわけが」
池田「いいから来い!R-202に何人も同じ顔の男が水槽の中で浮かんでる!」
ウォレス「そんなわけあるはずないのに」
池田「いいから早く来い!ポンコツ」
ウォレス「まったく機械使いが荒いんだから」
池田の後ろに黒い影が立つ。
スーツを着た男。
池田「これはみんな死んでるのか?クローン技術か?何のために?」
男「さぁ、それはわからないんだよね!」
池田、振り返って火炎放射器を放つ。ボォッ!
男、間一髪で避ける。
男「おい、何するんだよ、前髪が焦げちゃったじゃないか!?」
池田「お前は誰だ!」
男「おれはラット、実験用のラットって水槽に書いてあるだろ」
池田「じゃ、お前はここで生まれたのか」
ラット「ああ、たぶん?状況的に見て、んーどうだろう?宇宙の始まりからいたっていう説も捨てがたいけどね」
池田「じゃ、この水槽の中に浮かんでいる男たちはなんだ?」
ラット「これはラットだよ」
池田「ラットって!人間じゃないか?」
ラット「人間じゃないよ、ネズミだ、あ、ほらこっち来てみてみろよ、このラットには人間の耳がついてるだろ?こっちは鼻がついてる」
池田「これは再生医療の」
ラット「そう、そしてこの水槽のやつらは上から下まで全部ついてるのさ、人間のおしりの部分を見てごらんよ、ちゃんとラットがついてる」
池田「本当だ!じゃ、お前にも」
ラット「もちろん、ほら」
池田「おお!ああ、なんか見たくないもの見てしまった」
ラット「今は、人間の身体動かすほうが移動できるからこっち使ってるけど、本体はこのお尻のラットさ」
池田「なんで、お前だけ動いてるんだ?」
ラット「ああ、俺は脳みそくりぬかれずに済んでるからかな?」
池田「脳みそくり抜くのか?」
ラット「見てみろよ、このラットなんか後ろからきれいにないぜ!」
池田「本当だ!お前よく生きてたなぁ」
ラット「まぁ、よくあるヒューマンエラーってやつじゃないの?俺はラットだけどね」
ウウウ~というサイレン。
池田「なんだ?」
ラット「ああ、火炎放射器使ったでしょ、たぶんスプリンクラーが作動する音」
池田「そうか、おいポンコツ!今からスプリンクラー作動するってよ!」
ウォレス「そんなぁ~、ショートしちゃいますよワタシ」
池田「残念だ、ウォレスくん」
ウォレス「冗談ですよね!冗談ですよねミス池田ぁ~」
池田「ウォレス君、君には短い間だったが世話になった、最後に私から君に言葉を贈ろう」
ウォレス「池田さーん!」
池田「ざまぁ!」
スプリンクラーが作動しシャワーのような音。




