プロローグ(前編)
2009年10月、ベルギー―――――
フォーミュラ・エクストリームの最終戦が行われる「ルム・フラッシュランニングサーキット」。
優勝すれば、「インターナショナル・フォーミュラ・マスターズ」のシートも見えてくる。
78ポイントでドライバーズランキング5位の俺は、予選では3位の好位置に着けた。
チャンピオン争いというプレッシャーの中、赤いシグナルが灯り始める。
左から1つづつ灯っていく。
そして、ブラックアウト。
これからの未来が懸かったレースが、始まった。
タイヤは回り、エンジンのエキゾーストノートが鳴り響く。
24台のマシンは、最初に勾配のある2つの連続コーナーを曲がっていく。
森の中に作られたこのコースはアップダウンが激しい上に直線の多いレイアウトとなっているため、エンジンのパワーが求められる。
このコーナーを曲がると、また急な勾配に右方向のヘアピンカーブ。
「ルム・ヘアピン」と呼ばれており、ブレーキやハンドルを切る角度の加減が難しい。
そこで後ろの2台が接触するが、アクシデントにはならない。
ヘアピンを曲がると、少し短めのストレート。
そこから長く大きいS字コーナーがあり、それを曲がってまたストレート。
バックストレートなのか、これがなかなか長い。
この後のコーナーは90度の右カーブ、その先にはシケイン。
これらのコーナーは緩やかな下り坂。
それを曲がるとまたストレート。
ここは急な下り坂。
その先には先程と比べてきつめのS字コーナーがある。
これが最終コーナーとなっている。
ここも下り坂。
メインストレートは、小さな傾斜の登り坂になっている。
このコースの全長は5.663kmで、セクション1はヘアピン後のS字コーナー、セクション2はシケインの手前まで。
そして、2周目。
俺は1台をオーバーテイクし、2位に上がった。
既に下位が遅れ始めている。
レースは30周もある訳なのだが。
この後は順位に変動が無いまま14周目に。
そろそろピットインするマシンも出てくるか。
このコースのピットロードの入り口は、最終コーナーの途中にある上に表記が少ない。
ちなみに、出口は最初のコーナーの途中にある。
ガレージはメインストレートに15個。
第2セクションの途中で、チームから俺のマシンに無線が飛ぶ。
「そろそろピットインした方が良いだろ!」
「この周で入る。 準備してくれ!」
こうして、14周目でピットイン。
順位は24台中2位のまま。
首位との差は31秒だが、ピット次第では縮まる可能性もある。