空蝉
硝子の向こうに映るもう一人の自分
僕を心の奥底から罵ってやまない
僕らはヒビの入った電柱に止まった空蝉
所詮虫けらの命だと知りながら
それでも毎日にすがりついて生きている
鳴けば鳴くほど寿命縮まって
だけど鳴かずにはいられなくて
夏の陽射しに身を焦がされて
羽根をもがれていく
泣けば泣くほど泥を塗られて
だけど涙せずにはいられなくて
裸のままの感情をいたぶられて
熱に溶かされていく
世界の裏で舌を出すもう一人の自分
僕を血のたぎる場所から嘲ってやまない
僕らは壊れかけた鳥籠に囲われた鳥
所詮無駄死にすると知りながら
それでも羽根を羽ばたかせている
飛べば飛ぶほど命削られて
だけど飛ばずにはいられなくて
渇いた空に身を引き裂かれて
羽根を引きちぎられる
足掻けば足掻くほど傷んで
だけど足掻かずにはいられなくて
丸腰のままの心掻きむしられて
叫ぶままに晒される
僕らは一度も振り返らずに
この道を歩いてきた
そんな荒れ果てた旅路に
横たわる骸の目が笑みを浮かべる
叫べは叫ぶほど寿命削ぎ落とされて
だけど叫ばずにはいられなくて
ひび割れたアスファルトに叩きつけられて
粉々に砕け散る
もがけばもがくほど傷ついて
だけどもがかずにはいられなくて
感情のない化け物に喉から喰らわれて
半身になって片目のままで僕らは生きる
それでも生きざるを得ないんだ