2.クラス分け
あの真っ白の空間から抜け出したと思ったら、何か待合室のような所に出た。
序でに言うならば、神様っぽい人の格好が普通になった。思わず二度見したら、その人は苦笑しながら、あの台詞込みでペナルティの一環なのだと教えてくれた。
だからペナルティとは何ぞ?
まずそれを教えてくれまいか。
しかしながら、彼は只の案内役であって、それを教えるのは別の人の役目なのだそうだ。
「これからクラス分けが行われるから、呼ばれるまでここで待っているといいよ」
そう言って立ち去ろうとする元神様っぽい人に、慌てて「クラス分けって?」と聞いた。
本当はもっと別の事を色々と聞きたかったが、役目ではないと言うのなら仕方がないだろう。
自分の本分以外の事はやるべきではない。
今までの経験でそれは良く分かる。
恐らくこの位なら聞いても支障はないのではないかと思ったのだ。
すると案の定、「これ位ならいっか」と教えてくれた。
「えーとね、さっき君にカード渡したでしょう?」
「え? はい、これですね」
先程のカードを取り出して見せれば、彼は満足そうに微笑んだ。
「そう、それ。そこにアルファベットでCって書かれてるでしょ?」
確かに、顔写真の対角線上右下部分にそれは存在する。
パラメーターとかもあるから、何かのレベルを表しているのかと思っていた。
「それ、C組って意味だから」
「……C組? ですか……」
「そうそう、大きく分けてA組、B組、C組に分かれてるんだ」
「ちょっと待って下さい。既にクラスが決まっているのなら、クラス分けする必要はないのでは?」
この日一番の長台詞だった。
いや、元々あまり喋らない性格なもんで……。
「いやいや、人数多かった場合はC-1、C-2とかって更に分かれるんだよ」
その説明に成る程と頷く。
「AとBとCに分かれているのは、何かの成績順ですか?」
基準が今一分からず訪ねてみる。
自分が何かに優れていると思った事はないし、イメージ的にAは優秀な感じがする。
「んー、成績っていうよりトリップ・転生の回数かな」
「回数という事は、A組が一番少ない?」
自分の回数など三桁を越えているので、自ずと答えは出てくる。
彼の説明によれば、A組は1回から10回、B組は10回から50回、C組は50回以上だと言う。
こうやって聞くに、自分の三桁越えは異常なのだろうか?
少しばかり不安になった。
「それと、それぞれのクラスに別名が付いているんだ」
「別名?」
「Aは英雄クラス、Bはそれなりクラス、Cはカオス組」
「え゛!?」
いやいや、Aの英雄クラスは何となく分かる。
カードに書かれている条件を見るに、徳を積む云々とあった。
少ないトリップ・転生の回数で条件が揃うという事は、恐らく世界を救う勇者か何かしたんだろう。
次にB組のそれなりクラスも、まぁ、ちょっと酷いなと思うが、その名の通りそれなりに人助けなんかして、それなりに善人のクラスなのだろう。うん、分かる。
しかしだ。
自分がこれから入るであろう、C組のカオス組とはどういう事なのか?
何故にクラスではなく漢字の組なのか、カオスとはどういった状況なのか教えてはくれまいか?
ちょっと興奮気味に元神様っぽい人に詰め寄ってしまった。
「まぁまぁ、落ち着いて。本当のカオスになる事なんて滅多にないから。
大体、異世界迷子か、危険能力所持者か、性格破綻者が入ってきた時くらいだから。そういう人達って結構レアな存在だから安心して。そんな、そうそう居ないから、ね?
後、変わった能力持ってる人の多いクラスって言うのもあるかもね」
「異世界迷子って?」
聞き慣れない言葉に首を傾げる。
しかしながら、この質問は「養成所で習うよ」と、答えてはくれなかった。
まぁ、後で知れるのなら結果的に同じだろう。
「じゃあ僕はそろそろ行くね。帰って動画のチェックしないと……何書かれてるか分かったもんじゃないよ……」
最後の方は、何やらブツブツと言っていて聞き取れなかった。
「あの、最後に一つだけいいですか?」
「ん? 何かな?」
「あなたは何クラスだったんですか?」
「僕? 僕は何をさせてもそれなりなB組だったよ」
ああ、やっぱりな、と納得する。彼の神様の格好はそれなりだった。
そして、「じゃあね」と手を振る彼を見送ったのである。
神様っぽい人の紹介
今回、主人公の案内人となった彼。格好と決めゼリフはペナルティによるもの。(今回はまだましな方)
容姿は至って普通である。
彼が言っていた動画とは、ネット・機械系の強い管理者達のつくった“神笑動画”なるものにアップされるものを言う。勿論オマージュはニ○ニ○動画である。
案内人ペナルティの動画は強制的にアップされてしまう。
腐女子な管理者達にはよく“姫”とか呼ばれる。
今回の動画には恐らく「姫の赤面キター!」や「ドヤ顔でジャニーさんの物まねとかマジカワ!」とかコメントされてたりするだろう。
枯れた大地を緑にするというような、非常にエコな能力を持っている。
後、それなりに運もいいので、エコラックというあだ名がついている。
ここまで紹介して何ですが、今後彼が活躍する予定はありません。