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1.トリップの果てに

他のトリップ小説や夢小説なんかの多重トリップ物を読んでいて、ふと、こういう主人公達って最終的に何処に行き着くんだろう、と妄想していった結果こうなりました。

 微睡みに似た感覚から引き上げられるように、今世へと覚醒する。

 もう何度も経験した事であった。


 初めて飛んだ時。

 それはそれは驚いたものだった。見知らぬ場所に不安と恐怖で震えていた。

 元の場所へ帰りたいと望み、奮闘し我武者羅になった。帰れないと知った時は絶望と悲しみで自分を見失い、自暴自棄になった事さえある。

 全てを諦め、でもその世界で新しい希望を見つけ、必死に生きた。

 生きて生きて、生き抜いて、そしてその人生を終えた。満足だった。

 けれどまた新しい人生が始まった。

 生まれ変わったのだ。所謂、転生というものだった。

 でも、それ自体は別にいい。

 問題は、何故、前の人生の記憶まで持っているのか……。

 満足して死んだだけに、この事実はあまり受け入れたくはないものだった。

 それでも無理矢理受け入れ、それも自然となっていこうとしていた矢先、


また飛んだ。


 それが自覚した始まりだった。

 自分がそういう体質なのだ、という事の……。


 それからずっと繰り返している。

 気が付いたら知らぬ場所。

 それは時に森だったり、浜辺だったり、戦場だったり、誰かのベットの上だったり……。

 そして転生も繰り返した。

 性別が変わった事もある。人外であった事も。

 成人だったのに飛んだ先では幼子に戻っていた事もあった。

 そして必ずと言っていい程、己が望むも望まないも関係なく、その世界で生きていくのに必要な力や能力を身につけていった。

 トリップすればするほど、転生すればするほどに、自分は化け物じみてゆく。

 所謂チートというやつだ。


 そして、そんな自分がまたあの感覚を味わう……。

 一体今度はどんな世界に飛ばされたというのか。

 いつものように自分は普通を装わなければ。

 最初こそ生きるのに必死で力を使いまくっていたが、それも能力が化け物じみてゆくと共に、如何に目立たず厄介事に巻き込まれないかという事だけに力を注ぐようになった。

 まずは己の状況を把握しなければならない。

 暫し無言で辺りを見回す。


 何もない、真っ白な空間。


「ふむ……今までにない状況だ」


 口から出た言葉はいやに冷静な響きを持っていたが、内心ではパニックものであった。

 回数にして軽く三桁を越えるトリップ(転生を含む)の中で、このようなケースは初めてである。


「まさか……」


 よもや、これが今回の世界の通常仕様なのでは?

 そんな事を思い始めた。

 何だか現代風の世界の中で読んだ、死後の世界のようだ。序でに言えば、自分自身皮肉気に読んでいたトリップ物の小説の中の描写によくあるが、トリップ経験者としてそれは無いと断言できる。

 そしてその小説の中では、よくこのあたりで神様なんて者が出てくるが、今までそんな存在に遭遇した経験は皆無だ。

 だから無い。今振り返ったら神様っぽい雰囲気の人が、神様っぽい格好をして立っているなんて無いったら無いのである。

 そしてその人物は此方に向かってニコリと笑うと、


「長い旅だったね。ご苦労様」


 なんて言って、その言葉が余りにも温かみがあったものだから、不覚にも泣きそうになったなんて、あり得ないったらあり得ないのである。


 神様っぽい人はニコニコと笑顔のまま告げる。


「これより君は、長い修行を終え、新たな段階へと進もうとしている。君も知っての通り、世界は無数に存在する。

 こうしている今も、新たな世界は生み出されていたりね。

 でも、正直世界が多すぎて管理する者が足りないんだ」


 ここで神様っぽい人は一旦区切る。

 ここまで聞いて、何だか嫌な予感をひしひしと感じる。

 神様っぽい人はコホンと一つ咳をこぼすと、ビシッと指を突きつけ言った。


「You、神様になって世界を管理しちゃいなYo☆」

「…………」


 シリアスをいきなりぶち壊す発言に思考が停止する。

 二人きりのこの空間。言葉を発する者がいなければ、全くの無音となる。


 無音って、耳が痛いんだな。


 内心の動揺は押し隠し、真顔のまま神様っぽい人を見つめて続けていると、指を突きつけたポーズのままその人はみるみる内に顔が真っ赤になっていった。

 そして顔を覆うとその場にしゃがみ込む。


「うーわー、何これ凄く恥ずかしいんだけど! 最初この程度なら楽勝とか思ってた僕のバカ! これ絶対動画にアップされちゃうよ! ペナルティって怖いっ!」


 神様っぽい人が何やら喚いている。

 何だかこの人が、恥ずかしい人から可愛らしい人にイメージが変わった瞬間であった。

 聞き取れた言葉から窺うに、どうやら罰ゲームか何からしい。


 というか、動画って何ぞ? ペナルティって何ぞ?


 その疑問をそのままその人にぶつけたら、何とも疲れた様子で遠くを眺めて言った。


「君もその内分かるよ……」


 だから、何ぞ?

 その内分かるって、どういう事だ?


 そんな事を思っていると、神様っぽい人にカードを渡された。

 そこには、顔写真と共に【異世界管理候補生No.137841】と書かれており、何らかの記号のCと自分の名前、トリップ・転生歴と能力・パラメーターなども書かれていた。

 自分でも把握できないものまであって驚きを隠せない。

 そして、カードを裏返すとこのような事が書かれていた。



 ++++++++++


 《異世界管理者の条件》


・徳を積んでいること。

・トリップまたは転生経験者。※それらの記憶を所持している。

・チート、特殊能力を持っていること。



 以上の条件を満たしている者を候補生として養成所へと送ることとする。

 因みに、これは任意ではなく強制である。



 ++++++++++



「……え゛、きょうせい?」

「うん、そういう事だから頑張って」


 慰めるように神様っぽい人が肩を叩く。

 見れば同情でもない哀れみでもない、まるで同士を見るような眼差しをしていた。

 もしかして、この人もトリップ・転生者で強制とかだったり?

 何となしに呟いてみれば、酷く乾いた笑いを発していた。


 まさか、延々と繰り返したトリップの果てにこんな事が待ち受けているなんて、誰が思うだろうか。

 呆然とする中で、神様っぽい人が手を引っ張ってくれる。

 これからその養成所に向かうらしい。

 正直、こんな風に手を引かれるなど久方ぶりである。主に精神的な意味合いで、だが。

 何とも面映ゆい。


 果たしてこれから何が待ち受けているのだろうか……。

 はっきりしている事は、もうトリップも転生もしないという事。今までの経験からも初めてで、全くの未知の経験が待ち受けているのだ。

 少し……ほんの少しだけ、忘れかけていた期待という胸の高鳴りを感じる。


 ずっと無いと思っていた終結。そして新たな始まりに……。




他の候補生や講師陣なんかも書いていきたいです。

恐らく皆主人公枠におさまる事のできる個性的な人たちばっかだと思う。

例えば、最近流行の乙女ゲーの世界に行っちゃった系の人とか、ネットゲームの世界に行っちゃった系の人とか。


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