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その秘密は盲目で

作者: 秋桜星華
掲載日:2026/06/01

 全てを失った後に、貴方が訪ねて来てくれた。



「もう、この世界にはいないのかと思っていたわ。不謹慎だけど」


「君こそだよ、シルヴィア。まさか生きているなんて、変なところで運がいいんだね」


 かつて笑いあった日のように、軽口を叩く。あの日と違うのは、私がベッドの上だということだけだ。貴方は何も変わらずそこにいるのだろう。



「ルチーノ、これから私はどうなるの?」


「どうなるって言ったって、どうにもならないよ。これまでと一緒さ」


 貴方が言うのは、いつもそんな曖昧な言葉だ。私は「そう」と呟くと、そのまま黙り込んだ。


 私と貴方の間を、春の優しい風が吹き抜けていった。もう、私が春の芽吹きを目にすることはないのに。

 そんなことを考えると、なんとも言えない寂寥感に包まれる。


 それなのに、風と貴方だけが私のもとに舞い降りてくれる。それはなんと嬉しくも、寂しいことだろうか。




「ルチーノ、貴方は何故私のもとに来てくれたの?」


 直後、聞いたことを後悔した。答えを聞かずに、知らないまま貴方の前からいなくなりたかった。


 それでも聞いてしまったのは、最後に貴方の声を聞いていたかったからだろう。


「もちろん、心配だからさ。いつ僕の前からいなくなるのかと思うと気が気じゃない」


 貴方が、寂しそうに笑った気がした。



「なんだか眠くなってきてしまったわ。せっかく来てくれたのに、ごめんなさい」


「謝ることなんてない。それじゃあおやすみ、眠り姫」


 唇に柔らかな感触があった。


 二度と感じられないそれを、存分に味わった。











 目の前で永遠の眠りについたシルヴィアを、ルチーノは無機質な目で眺めていた。




「⋯⋯やっぱり」


 彼女が頑なに外さなかったアイマスク。数分前までそれを抑えていた手からはもう、力を感じられなかった。


 アイマスクの下から覗いた瞳は、焦点が合わず白く濁っていた。


「⋯⋯そんなに必死で隠さなくても良かったのに」


(あぁでも、最期に君の瞳に映ったものは何なのだろうか。壁かな。動物とかなら妬いちゃうな)


 おどけてみせる。その姿を見せる相手は、もういないのに。





「やっぱり好きなんだなぁ」


 あえて、現在形で口に出してみる。彼女の枷にならないようにと必死で隠してきた、その思いを。


 彼女は、自分のおどけた姿と気取った姿しか知らないだろう。それしか見せてこなかった。楽しんでくれれば、それでいいから。


 ただ。


 思ってしまうのだ。


 この思いを伝えていれば、と。



「──僕にも秘密くらいあるさ」

診断メーカー『あなたに書いて欲しい物語3(https://shindanmaker.com/851008)』で出たお題で書いてみました。大幅な改変が入ってますが⋯⋯。


挿絵(By みてみん)

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˚✧₊⁎⭐︎秋桜星華の作品⭐︎⁎⁺˳✧༚
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― 新着の感想 ―
不思議な世界観の、お話でした。 比喩表現と現実世界がいりくんだ、素敵なお話ですね。 独特な世界観と言葉の言い回しが、良かったです。 ゜+(人・∀・*)+。♪
白内障か白色瞳孔か、それとも別の病気なのか。 意外と年齢がいっていたなら白内障だけど、若くして亡くなるというなら白色瞳孔の可能性が高そうだ。 年齢はご想像下さい、かな? 何となくルチーノは普通の人間…
まぁまぁの縛り&字数まで1000字ぴったりとは!! やるな〜!!♪ しかも「盲目」と「恋は盲目」を掛けてる!!だいぶ縛りまくり〜(*´艸`*)笑 どんなシチュエーションでも書ける、っていうのもスキル…
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