第十章 ― 俺こそが王
静寂に包まれた部屋で、Taiは低く、冷たい声を漏らした。
「よく聞け。南の王国が我が国を狙っている。」
その一言だけで、部屋の空気が瞬時に張り詰める。
部下たちの視線が一斉に彼へ注がれる。
Taiは腕を組み、冷静な瞳で一人一人を見渡した。
「俺が合図したら――計画を実行する。
いいな?」
誰一人ためらう者はなく、声を揃えて答える。
「了解。」
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その夜。
Taiは公爵令嬢と同じベッドで眠っていた。
言葉は交わされずとも、二人の間には静かで熱い気配が漂う。
夜の闇が深まるほどに、呼吸も、鼓動も重くなる。
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朝。
Taiが目を覚ますと、公爵令嬢がまだ彼の腕に抱きついて眠っていた。
その温もりに触れた瞬間、胸の奥で忘れかけていた記憶が一気に蘇る。
Miko――結婚したばかりのあの日々。
彼女もまた、同じようにTaiの腕に抱きつき眠っていた。
Taiはそっと腕を抜き、ベッドを離れる。
バルコニーに出ると、煙草に火をつけた。
白い煙が朝の光に溶けていく。
「……Mikoが死んで、もう何日経った?」
小さく呟く。
「まだ四日か……だが、この四日間はまるで五十年分の苦痛のようだ。」
冷たい瞳で空を見上げる。
「あいつらが始めた茶番も……そろそろ終わらせねばならない。」
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やがてTaiは部屋へ戻り、朝食の席につく。
部下たちを見渡し、静かに告げた。
「俺はこの王国を裏から支配できる。」
Diabloが眉をひそめる。
「どうやって?」
Taiは無表情で答えた。
「王国を支援するのだ。」
「民を救い、資金を注ぎ、王族内部の権力を整える。」
「国を立て直した後――各国に脅迫状を送る。」
「王は何も知らないままだ。」
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二か月後。
Taiは王国を影から支え続けた。
民への援助、王族間の権力整理、不足資源の補充。
王国は急速に復興していく。
その結果――Taiは王国で高い地位を得る。
そして翌日は王女との結婚式だった。
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前夜。
Taiは部下たちを集め、計画を告げる。
「今夜、作戦開始だ。」
「Diablo、王子の元へ行け。」
「Draculina、王女の代役になれ。」
数分後、報告が届く。計画は完璧に成功していた。
Taiは静かに言う。
「王女の部屋で集合だ。」
「了解。」
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その朝、朝食の席で、公爵令嬢が小さく言った。
「……私はあなたを愛しています。結婚しましょう。」
Taiの手が一瞬止まる。
怒りが胸をよぎる。だが、表には出さない。
冷たい瞳で彼女を見ると、静かに微笑む。
「今は答えられない。」
Diabloが小さく笑う。
「よかった、敵じゃなくて。
その笑顔……人類を滅ぼす怒りを隠している。」
令嬢は苦笑する。
「私、少し早すぎたかもしれません。
まずはお互いを知るべきですね。」
「どれくらい?」
Taiは即答した。
「一週間だ。」
Sebastianが笑いながら言う。
「まるで世界の終わりまでのカウントダウンだな。」
令嬢は首をかしげる。
「どういう意味?」
Taiは少し苦しそうに答える。
「俺の両親は……付き合って一週間で結婚したんだ。」
彼女は静かに頷いた。
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Taiは王城へ戻る。
部屋で王女と再会する。
「Draculinaか?」
「ええ。今は王女よ。」
「Sebastianは?」
「俺は王子だ。」
Taiは微笑む。
「完璧だ。」
そして冷徹に言う。
「Diablo――王妃を殺せ。」
「了解。」
Diabloが尋ねる。
「次は?」
Taiは迷わず答える。
「戦争だ。」
部下たちは互いに顔を見合わせる。
「戦争?」
Taiは冷静に続ける。
「俺はDominariaの貴族だ。
DraculinaはVerinの人間。
互いに宣戦布告する。」
沈黙。
「どうやって?」
Taiは言う。
「簡単だ。俺が王を殺す。」
空気が凍る。
「……本気か?」
Taiは淡々と答える。
「俺がお前たちを殺したか?」
部下たちは理解する。
だがSebastianだけは理解できず、Diabloが補足する。
「王を操るんだ。」
「王は誰になる?」
Taiは答える。
「Alucardだ。」
全員が驚愕する。
「Alucard!?伝説じゃなかったのか!?」
Taiは冷静だ。
「本物だ。すぐ来る。」
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五分後。
扉が開き、Alucardが現れる。
「久しぶりだな、Tai。」
部屋がざわめく。
Taiは状況を説明する。
Alucardは静かに言った。
「お前に起きたことは聞いた。そばにいられず……すまない。
だから、俺を使え。お前の部下になる。」
全員が凍りつく。Taiさえも驚く。
「なぜ?」
Alucardは微笑む。
「信頼の証だ。」
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夜。
Taiは王の部屋へ向かう。
扉を開くと、王は椅子に座り、まるで待っていたかのようだ。
王は言う。
「座れ。」
Taiは座る。王が感謝を述べる前に遮る。
「俺はお前を殺しに来た。」
王が剣に手を伸ばす。だが――Taiの拳が顔を打ち抜き、床に倒れる。
Taiは王を椅子に縛りつける。
「俺はYotaroじゃない。Taiだ。お前が家族を殺した男だ。」
王の顔が青ざめる。
「あり得ない……死んだはずだ。」
Taiは冷笑する。
「残念だったな。もう遅い。」
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Taiは剣を掲げ、月光と炎に反射させる。
「終わりだ。」
閃く刃、王の首が宙を舞う。血が炎を消す。
静寂。
Taiは無表情で立つ。
Alucardが影から現れ、言う。
「始めろ。」
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一週間後。
戦争の太鼓が鳴り響く。
Taiは城のバルコニーに立ち、民衆を見下ろす。
「俺はTai。よろしく。」
誰かが叫ぶ。
「王族は?」
Taiは微笑み、王の首を群衆に投げる。
「三つの王国がここで衝突する。そして……誰も生き残らない。」
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第十章・完




