試練
いつもより少し長くなりました
「ではアークさん私たちも練習しましょう」
「はい」
先程の異次元の戦いを見ても、自分にはよく分からなかったが、それでも何か掴めた気がする。
「アークさん、いつでも来てください」
彼女の言葉に応えるように僕は彼女に向かって走った
ノエルさんはこちらの攻撃に合わせてカウンターを狙うつもりだろう。
ならばギリギリで少しタイミングをずらして攻撃を仕掛ける。
そうして走って彼女の間合いまであと一歩半の所で少し下がった。
それがまずかった。
その隙をつくように彼女は僕と距離を詰めて喉元を狙う攻撃を寸止めした。
「私の勝ちです。このような形式でやりましょうか。」
どうやらノエルさんにとって今のはチュートリアルだったらしい。
ノエルさんも組織の人だ。
その実力差は火を見るよりも明らかだろう。
だが、諦めるつもりは無い。
かと言って同じ動きでは勝機が無い。
自分の身体のリミッターを外すには時間が足りない。
ならばやることは一つ。
僕はもう一度どノエルさんに向かって走った。
彼女はまだ動かない。だが、既に攻撃の準備をしている。
このまま突っ込めば攻撃がくる。そんなことは分かっているしノエルさんも分かっている。
だから僕は。
このまま突っ込む選択をした。
予想通りの攻撃がきた。
僕は空いている手でその攻撃を防ぐアクションをした。
彼女は思った通り攻撃のルートを変えた。
そこで生じた彼女の隙を見逃さず、彼女の裏に回った。
ここまでは完璧だ。
だが彼女の攻撃の手は先程と同じように喉を攻撃する直前で止まっていた。
「アークさん凄いです‼︎初日でここまで動ける人は初めて見ました‼︎」
ノエルさんは驚いた様子でそう言ったが、またしても彼女に点を取られた。
彼女が組織の人間だからという理由だけで負けてられない。
僕の中で闘争心が湧いた。
「ノエルさん。もう一度やりましょう。」
「えぇ、何度でも。」
そんなこんなで僕たちはそれから練習を続けた。
どれほどの時間が経ったかは分からないが、気づけば日は暮れていた。
「ノエルさん。練習に付き合っていただきありがとうございます。」
「お役に立てたようで嬉しいです。」
結局その日は一回も勝てずに終わってしまった。
だが不思議と心地よかった。
「また明日も付き合ってくれますか?」
「はい。暇があればいつでも付き合えますよ。」
「では、また明日もここで練習しましょう」
そんなことで続きは明日に持ち越しになった。
それから2日程経った。
ノエルさんは毎日練習に付き合ってくれている。
本当に感謝しかない。
そんな感謝の意を込めて今日も全力で勝ちに行く。
「それでは今日も始めましょうか。」
「はい。よろしくお願いします。」
戦いの火蓋は切られた。
ノエルさんも最初とは違う動きで僕と戦ってくる。
一気に距離を詰める彼女の勢いを利用し。後ろに回り込む。
無論、ノエルさんはそれに対応して攻撃を繰り出す。
前までの僕ならここで点を取られていたが、ここは冷静に距離を置く。
ノエルさんの動きにも少しずつ対応できるようになってきた。
だがただ一歩下がるだけではノエルさんも簡単に攻撃できる。
僕はただ一歩下がった。
そこにノエルさんも攻撃してきた。
ここで僕は体を逸らし、ノエルさんの攻撃を避けた。
攻撃の直後の彼女は隙だらけだった。
ここで攻撃をしにいけば逆に不意を突かれて負ける。
そんな、常に負けと隣合わせの戦いだった。
なので隙だらけに見える彼女から僕は距離を取った。完全に間合いの範囲外で死角もつけた。
彼女の死角を狙い距離を詰める。
彼女もそれを感じ取ったのか、別の方向に走って距離を置いた。
彼女を追いかければ彼女から僕の位置は分かってしまう。
だが、距離を取られては面倒だ。
僕はすぐに彼女の向かう方向を目掛けて走った。
そのまま距離を詰めていく。
そして僕の攻撃は、ノエルさんの首元に当たる寸前で止まった。
「僕の勝ちです。」
「強くなりましたね。」
初めてノエルさんに勝てた。
今は純粋に嬉しかった。
彼女は手加減をしていたかも知れないがそれでも自分にとっては大きな進歩だった。
「ノエルさんのお陰です。」
「お役に立てたようで光栄です。それではまだ続けましょうと言いたい所ですが明日は筆記試験ですけど勉強はしなくても大丈夫ですか?」
完全に忘れていた。
そこまでヤバくは無いが、明日に備えて準備をしておこう。
「そうでした。ではまた明後日やりましょう。」
「はいお待ちしております。」
そうして僕はこの場を去った。
***
アークさんが行った後にシオンがきた。
「お疲れノエル。彼は受かりそう?」
「うん。多分この調子なら実技は大丈夫そう」
「そう、はいこれ差し入れ」
「ありがとう」
シオンから貰った500mlのお茶を一気に飲み干す。
「凄い飲みっぷりだね」
「いっぱい動いて疲れたもん」
そんな他愛のない会話をずっとしていた。
***
筆記試験は余裕だったと思いたい。
何せ合格発表どころか模範解答の公開もまだだ。
そんな少し不安な気持ちで僕はいつもと同じ場所に向かった。
そこにはノエルさんとシオンさんがいた。
「シオンさんお久しぶりです。」
「お久しぶりです。筆記試験の手応えはどうでした?」
「手応えはありました。」
「受かっているといいですね。」
シオンさんは少し微笑みながらそんなことを言った。
「アークさん。今日も練習しましょう。」
「はい。」
ノエルさんはいつもより少し積極的に練習に誘った。
その後はいつもと同じような練習光景のようだったが、ノエルさんも前より少し本気を出して戦っているからか、あまり点が取れない。
とは言っても前より強いノエルさんから何度も点を取れるようになったというのは大きな進歩だ。
「今日も付き合ってくださりありがとうございます。」
「いえいえ、こちらも練習になりますしお互い様です。それではまた明日」
そういうと彼女はシオンさんと一緒に帰って行った。
もうすぐで実技試験。
僕に突破できるだろうか。
とりあえず今は自分のできることを精一杯やるだけだ。




