研究
「あの人、帰ってきてたんですね。」
「つい先日からこちらに戻ってきていた。」
久々にあの人の話を聞いた。
「元気そうでしたか?」
「安心してくれ。今も元気にやっている。」
「いい知らせを聞けて良かったです。」
あの人のことを話していると研究室に着いた。
「連れてきたぞ。"ナイ"」
「久しいね、アーク。」
研究室には何人もの研究者がおり、その入り口付近でノヴァの後継ぎ、そして僕の研究仲間のナイが立っていた。
「久しぶり、兄さん。」
彼をそう呼ぶのも何年振りだろう。
「それでは用も済んだので、私は帰らせてもらう。」
「ありがとう。またね、ゼノン。」
そういうとゼノンはその場を後にした。
「単刀直入で悪いが、アークに調べて欲しい者がいる。」
「いいよ。内容は?」
「最近、奇妙な能力者が出た。そして、その能力者の出現に伴い、出現する幻影のような者が確認された。」
「その幻影を調べればいいんだね。確認件数は?」
「2件だ。」
「……そっか。だいぶ急いだんだね。奇妙な能力者の情報は?」
2件だけで依頼なんて早計すぎる。何か能力者に関する糸口でも見つかりそうなのだろうか。
「今までの能力者は既存誰かが能力者になることで出現したがその能力者、計4名はその元となる人の情報が存在しなかった。」
「神とやらが遂に人間を作り始めたのか?」
「分からない。何せ件数が少ない。」
「……分かった。データ収集と研究を手伝えばいいんだね。」
「すまない。」
想像していたより大変な仕事を頼まれてしまった。
だが、能力者研究でこれほど進展があったのは歴史的に見ても久しぶりだ。
このチャンスを逃す訳にはいかない。
「兄さん安心して。僕が関わったからには収穫0で終わらせないから。」
「頼もしいな。」
鼻の奥に雨の匂いが残っている。
「ところでアーク、そんな顔してどうしたんだ。」
「兄さん」
まだ今日の手のひらの感覚は消えていない。
「現場部隊に入ったんだってね。」
「そりゃ、知ってるよね。」
「あれに慣れないでもいい。あれを思い詰めなくてもいい。」
「分かっているよ。あれがあの場での最適解だったてことも。」
瞬きをすればあの無邪気な笑顔が頭に浮かぶ。
「そうだ。そして過去に戻る術もない。」
「生きていればいつか、」
後悔を口にする。
「その時はその後悔をその人が背負うことになったさ。君はそれを1番の救いだったと胸を張っていればいい。」
「ありがとう。大丈夫。もう辛く無いから。」
雨の残り香は消えて、その記憶だけが残った。
「さて、それじゃあ研究するぞ。アーク」
「分かった。兄さん、身元不明能力者のサンプルある?」
あの時のように、僕らは研究を始めた。




