帰路
私はガルドと別れてアークと寮に帰ることになったのだけど、
「アーク、大丈夫?傷だらけだけど、」
アークの身体には全体的に傷がついていた。
特に、左肩には深い傷ができていて、応急処置はしてあるけど、とても痛そうだった。
「大丈夫です。ただのかすり傷ですから」
心も身体もボロボロなはずなのに、アークは何事もないように笑顔で返してくれた。
「…そっか、じゃあ一緒に帰ろ。」
「はい。帰りましょうか。」
アークは私よりも傷ついていた。
先輩として守れなかったのが情けなかった。
「そういえば、他の方は?」
寮に向けて歩みを進めると、アークが聞いてきた。
「シオンとノエルは夜の番だったから先に帰らせた。ガルドはリーダーの会議に行った。」
これ以上アークに負担をかけさせないためにも能力者の話はしない。
いつもと違う足取りでアークは着いてくる。
「足痛いの?」
「…はい、少し、」
「歩いて帰るのはしんどい?」
「大丈夫です。この位なら」
「……肩貸すから無理しないで」
先輩としてこれ以上アークに無理をさせたくない。
「…それじゃあお言葉に甘えて、」
アークの体重が全身にかかる。
アークの身体は16歳の男の子にしては少し軽かった。
「…アーク」
「どうしました?」
「……ノエルがもう朝食準備してるだろうから帰ったら一緒に食べよ?」
「……はい」
本当は「気にしないで」とか「無理しなくていいよ」とか言いたかった。
「ミラさん」
「何?」
「…ありがとうございます。」
肩を貸したことに関しての感謝かな。
「どういたしまして。もっと頼ってもいいからね。」
多分、アークは頼るのが苦手なんだと思う。
だから私は彼にそんな言葉を返した。
「はい。とても頼りにしています。」
ごめんね。って言いたかった。
頼って貰っていたのに、助けられなかった。
そんな自分が不甲斐なかった。
「…もうすぐ着くよ。ご飯食べたらゆっくりしてていいからね。」
「ありがとうございます。すみません、重かったですよね。」
「全然大丈夫だよ。寧ろ、ちょっと軽かった。」
「そうでしたか。」
遠慮なんてしないで欲しい。
アークの敬語がなんだか距離を置かれているようで辛かった。
「そういえば、アークって寮の鍵ってもう貰ってる?」
「はい、チームが決まってすぐにガルドさんから貰いました。」
「そっか。よかった。」
自分でも何が話したいのか分からなくなる。
きっとそれでいいのかもしれない。
その方がアークは楽なのかもしれない。
寮に着く。
鍵を開けて中に入る。
アークの重さがなくなる。
ダイニングには誰も居ないけど、オムレツと野菜炒めが2人分と置き手紙がある。
「食べ終わった食器は後で洗うのでシンクに置いてて下さい。」
ノエルの字でそう書いてあった。
「だって、アー、ク」
私が振り返るとアークは泣いていた。
「大丈夫⁉︎」
「すみません、なんだか、勝手に、涙が出てきて。」
「分かった、大丈夫、いっぱい泣いていいから。」
それからはただアークの啜り泣く音だけが聞こえた。




