夜明
日の光が水溜りで反射する。
少女の死体をただ呆然と見つめる。
まるで眠っているかのように静かに横たわっている。
もう起きることはない。
槍や火の玉が降ることもない。
心臓の鼓動の感触がまだ手に残る。
もう動いていないだろう。
僕も何もせずただそこに立っていた。
「アークさん…」
声をかけられて我に返る。
隣にその声の正体、ゼノンさんがきた。
「遅れてすまなかった…」
申し訳なさそうに、本当に申し訳なさそうにゼノンさんは僕にそう言った。
言葉は返さなかった
ゼノンさんも何も言わない。
長い沈黙が続く。
「ゼノンさん、僕は、僕がしたことは、この子を救えましたか」
沈黙を破りそんなことを聞く。
少し間を空けてゼノンさんが答える。
「あぁ、きっと救えた」
雨の匂いと鼓動の感覚が少し曖昧になった。
***
俺たちは今。現場の処理をしている。
「ごめん、私がもっと早く倒せていれば、アークにあんな辛いこと、」
ミラが謝罪をする。
「仕方がない、いずれ経験することだったんだ、」
この仕事は迷いで命を落とすような仕事だ。
残酷だが、あれしか方法はないのだから。
「ミラは大丈夫だったか?」
「うん、少し擦りむいただけ」
口ではそう言うがきっと心はとても穏やかではないだろう。
「そうか、」
チームの隊長としてチームメイトの心に傷を残してしまったのは不甲斐ない。
謝りたいが、下手に思い出させるのも良くない。
「シオンとノエルは?」
「先に帰らせた。夜の番をしていて寝不足だろうからな。」
「そっか、おっさん、私どうやったらもっと強くなれる?」
きっとミラも新人に手を掛けさせたのを申し訳ないと思っているのだろう。
「仲間を信じることも強さだ、俺達を信じて戦ってくれればそれでいい」
信じることも強さ、か
人のふり見て我がふり直せとはよく言ったものだ。
能力者の発生が人里離れた場所だった為、後処理は数十分で終わった。
「ミラ。今日はアークと一緒に帰ってくれ。」
俺は今から会議があってアークの側に居てやれない。
今の彼にはきっと隣に誰かが必要だろう。
「おっけ分かった。じゃあ、いってらっしゃいおっさん。」
俺は手を振って会議に向かった。
***
私とノエルは他の人たちより先に寮に戻った。
「ノエル?何してるの?」
何故かノエルは台所に立っていた。
「朝ごはんの準備をしようかなって。ほら、今日の分まだ作ってなかったから。シオンも食べてから寝る?」
「あー、じゃあ食べてから寝る。てか私も手伝うよ、ノエルも疲れているでしょ?」
台所に向かう。
「ありがとう。じゃあお皿用意しといて」
「今日何?オムレツと野菜炒め?」
「正解。」
食器棚から食器と料理用の道具を取り出す。
「てかガルドは朝食どうするって?ほら会議もあるだろうし帰ってくるの昼頃になりそうだけど」
「ゼノンさんと食べてくるって言ってたよ。」
「分かった。」
ガルドの分の食器を棚に戻す。
ノエルは包丁で野菜を食べやすいサイズに切っている。
「シオン、卵解いてて」
「おっけー」
卵を割ってボウルに入れる。
我ながら綺麗に殻を割れた。
卵を解く。
「…今日一緒に寝てもいい?」
「いいよ。私の部屋?それかノエルの部屋?」
「私はどっちでもいいよ。」
「じゃあノエルの部屋でいい?今部屋散らかってて、」
「分かった」
そんな会話をしながら朝食の準備をした。




