日常
「アークさん、ご飯できましたよ」
ノエルさんの声で目が覚めた。
誰かに起こして貰えるのは何年振りだったか。
「はい。今行きます。」
軽く身だしなみを整えてから部屋を出る。
寮は5人で住むにしても少し広くて迷子になりそうだ。
僕はミラさんの案内を思い出しながらなんとか食卓に着く。
今はまだ料理を運んでいる頃だ。
「あれ、ガルドさんは?」
チームの中で唯一僕より年上のガルドさんがいない。
「ガルドさんならゼノンさんと飲みに行きました。」
少し不機嫌そうにノエルさんが言った。
「まぁ、ガルドが夕食の時に居ないのはよくあることじゃん。」
シオンさんがノエルさんを宥めるように言う。
「別に友人と飲みに行くのに文句は言わないけどさ。あの人いつも日が回る頃に帰ってくるじゃん。それにゼノンさんと一緒だと潰れるまで飲むから体調も心配だし。」
ノエルさんは愚痴をこぼす。
それより、2人が敬語以外で喋るのを初めて見た。
「あと、ミラもそろそろ起きて。ご飯できてるから。」
よく見るとテレビ前のソファーの上でミラさんが寝ている。
起きる気配は無い。
「ほらミラ、ご飯食べよ」
シオンさんがミラさんを揺すりながら起こす。
「んぅ、分かった」
眠たそうに目を開く。
そんな訳で4人で夕食を取った。
こうして誰かと一緒にご飯を食べるのも久々だ。
温かいご飯とおかずを一気に食べる。
ノエルさんが笑みをこぼす。
「ノエル?どうしたの?」
「いや、アークさん美味しそうに食べるな〜って思って。」
「はい。とても美味しいです。」
「ご好評なようでよかったです。」
未だお互いに敬語は外れないが、それでも一緒に食事を取ると距離は縮まったように感じた。
「ご馳走様でした。」
「はい、お粗末さまでした。」
僕は食器を下げて洗う。
「あ、後片付けは私がやりますよ。」
「いいんですか?」
「はい、家事するのが好きなので」
「分かりました。それじゃあよろしくお願いします。」
つい無意識で洗ってしまった。
以後気をつけなければ。
「じゃあ私風呂入ってくる。」
「いってらっしゃい。」
ミラさんが風呂場に向かった。
食事の後に食器を洗うのがルーティンになっていたため少し落ち着かない。
ミラさんはお風呂に入っていてノエルさんはシオンさんと話ながら食器を洗っている。
やることが無いので今着いてたテレビ番組でも見ていよう。
にしても組織の寮と言う位だからもっと規則とかが厳しくてきっちりとした物だと思っていたが、意外にも普通の家庭見たいで平和だった。
ふと気になったことがあるので2人に聞いてみる。
「深夜に能力者が出現したらどうするんですか。」
まぁ出動するしか無いのだが、警報が鳴ってもミラさんみたいに起きれない人もいるだろう。
その場合このチームはどうするのか。
「普通に出動するけど、万が一にでも誰も警報で起きれませんでした。なんてことが無いように夜は2人だけ起きてるかな。あっ、今日は私とノエルが夜の番だから安心して寝ていいよ」
「ありがとうございます。僕の番はいつになりますか。」
「そういえば伝えてなかったね。ローテーション的には明後日だね。ノエルと一緒に夜の番をすることになるかな。」
それを聞けて安心した。
今まで深夜に能力者が出るケースは何度か聞いたことはあるがどのようなシステムで組織の人が動いているのかまでは知らなかったのでそこだけ知れてよかった。
「夜の番のスケジュール表貼っといた方がいいかな、」
「まぁそうだね。アークさんもその方が分かりやすいだろうし。」
そんな2人の会話が聞こえた。
「上がったよ。」
ミラさんがお風呂から上がってきた。
「私たちは後でいいのでアークさん先に入っちゃって下さい。」
「分かりました。」
勧められたので僕が先に入るとするか。
僕は準備をして脱衣所に向かった。
***
私は今、洗濯物を畳んでいる。
シオンも手伝ってくれている。
「ねぇシオン。今日深夜一緒に見たい映画があるんだけどいい?」
「いいけど何見るの?」
「やっぱ深夜と言ったらホラー映画でしょ。」
「一昨日もそう言ってホラー映画見てたけどノエル怖がって泣きそうになってたじゃん。別のにしない?」
「いやあれはあの映画が怖すぎただけだから。今度のやつは大丈夫。それにアークさんが入ってきてローテーション的に次一緒に深夜起きられるのだいぶ後になるしここで汚名返上したい。」
「じゃあいいけど、」
シオンが心配そうな顔で私の方を見てくる。
そんなに心配?
そんな雑談をしているとガルドが帰ってきた。
「今日は早かったね。」
「いや流石に初日から酔い潰れたところ新人に見せるのは申し訳ないと思ってな。そういえば新人は?」
「今お風呂に入ってる。」
そんな気の使い方するなら酔い潰れたガルドをベッドまで連れていく私たちにも気を使ってお酒は潰れない程度にして欲しい。
「上がりました。あっガルドさんお帰りなさい。」
「おうただいま。シャンプーとリンスは分かったか。」
「はい。昼間にミラさんが教えてくれたので。」
「そりゃよかった。」
ガルドとアークさんが談笑する。
私たちの洗濯物も終わりそうだ。
「丁度アークも上がってきたし、おっさんも風呂入ってきたら」
ソファーで転がりながらミラが言う。
「じゃあ風呂入ってくる」
ガルドはそう返事すると風呂の準備をして脱衣所に向かった。
***
「じゃあ僕はもう寝ますね」
風呂から上がり3人にそう告げる。
「え?もう寝ちゃうの?」
「もう寝るのってもう22時半だからね。」
ミラさんの発言にシオンさんがツッコミを入れる。
「おやすみなさい。アークさん。」
「おやすみなさい。」
ノエルさんにそう返してから僕は自室に戻り就寝した。
***
深夜、私はノエルとホラー映画を見ている。
案の定、ノエルは涙目で私に抱きついてくる。
「ノエル、大丈夫?」
「大丈夫、ちょっと怖いだけだか、ッ!」
大きな効果音と共に化け物が出てくる演出があった。
ノエルは震えていて今にも泣き出しそうだ。
仕方がないのでノエルを抱き寄せる。
少し安心したのか、ノエルの震えは落ち着いた。
似たような光景を一昨日も見た気がする。
「怖かったら膝の上くる?」
「大丈夫、ここがいい。」
涙ぐんだ声でノエルは答えてくれた。
『危険度3、エリア内に能力者が出現しました。ARCの指示に従い、直ちに避難して下さい』




