表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サマー・マーメイド・ループ ~溺れる人魚にハッピーエンドを見せたい俺は、夏休みを繰り返す~  作者: 雪村灯里


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/24

#24 新学期は事件の香り

 夏休みが終わって、2学期が始まった。


 俺は自分の席で、頬杖を突きながらぼんやりと窓の外を眺める。空には鳥と妖怪が楽しそうに遊び、一反木綿(いったんもめん)も窓の手すりに絡まり、風にはためいている。


 俺は相変わらず妖怪が見えたまま。恋焦がれた世界のハズなのに、ため息が止まらない。ずっと瞼の裏に、珊瑚の笑顔が焼き付いて離れないのだ。もう会えないと分かっているのに……未練がましいな、俺。


(さとる)、おはよう」


 蒼太(そうた)が、ひと組の机と椅子を運び込み、空いていた俺の隣に置いた。その後ろには、蒼太の鞄を抱えた彩葉(いろは)がいる。


「おはよう、悟。ため息が止まらないね……」


 蒼太と彩葉は先日の一件から、少し距離が近づいたみたいだ。寂しさと羨ましい気持ちは勿論(もちろん)ある。でも、2人とも変わらず俺に接してくれて嬉しかった。


「はぁー……。秋は人をセンチメンタルにさせるんだよ」

「まだ秋には遠いけどね」

「うん、暑いよ?」

「うるせーな。何だよその机、転校生か?」


 蒼太が机の上に乗せていた椅子をおろし、天板の埃を払いながら説明した。


「そうみたいだよ? 一階で先生と目が合って、頼まれた」

「この新学期、転入生が多いみたいだよ? 4人だって!」


――へぇ~。そんなに。


 確かに多いが、俺の心はその情報に(なび)かなかった。俺は机に体を預けると、しおしおと崩れる。


「本当に珊瑚ちゃんが好きだったのね。無くした眼鏡の代わりも、まだ造りに行ってなかったんだ。重症ね……」

「ああ。思いのほか、心の穴はデカかったみたいだ。そっとしといてくれ」

「はいはい。じゃあ、私はクラスに行くね! また放課後、オカ研で!」



 彩葉は眩しい笑顔を振りまき、颯爽と去って行った。



「時間が解決するのを、待つしかないね」


 蒼太もそう言い残して、自席へと去った。

 新しい出会いだなんて、彼女の代わりなんて誰もいないのに……


 俺の心のように重いチャイムが鳴り、先生が教室に入ってきた。


「みんな久しぶりだな。夏休みも終わって2学期だ。気を引き締めて行けよ! 今日から新しい仲間も増える。さあ、入っておいで」


 先生の声に促されて、教室前方の引き戸がガラリと開いた。クラスメイトが「わぁ」とか「おぉ」とか言ってざわつき始めた。


――みんな子供だなぁ。


 ふてくされた俺も転入生の姿を見て……心臓が跳ねた。驚きのあまりに、派手な音を立てて、立ち上がってしまう。


「おいおい、みんな静かにしなさい。永島、席に着け。転入生が自己紹介できないだろ?」


 クラスがどっと沸いた。俺は驚きを顔に張り付かせたまま、ゆっくりと椅子に座る。教室の前方、転入生としてそこに居たのは……俺が何度もタイムリープして追いかけた、あの子だった。


「はじめまして。白浜(しらはま) 珊瑚(さんご)と言います。この町で過ごした夏休みが忘れられなくて、来ちゃいました。みなさん、どうぞよろしくお願いします」


「じゃあ、白浜さんは窓際の一番後ろの席に座って」


 彼女は笑顔で「はい」と答えると、2本の脚で歩みを進める。彼女は俺の隣の席に座ると、こちらを見て優しく微笑んだ。その笑顔の奥には、悲しみも辛さも何も無い。


 まさか、これも夢じゃないかと疑った俺は、久しぶりに彼女の名前を呼ぶ。


「珊瑚?」


 珊瑚は微笑みながら「静かに」と、口の前に人差し指を添えた。そして、自身の鞄の中から、小さな包みを取り出す。丁寧に包みを解き、中身を優しく俺の机の上に置いた。


 それは、俺が海に落とした眼鏡だった。


 彼女は子供っぽく笑って答えた。


「見つけるのに時間がかかって、来るのが遅れちゃいました。やっぱり、未来が見えない方がわくわくするね? これからもよろしく、悟君」


 夏のループから抜け出した俺達に待っていたのは、新たな物語の始まりだった。人魚の珊瑚、あやかし、オカルト研……俺の青春は、さらに賑やかなものとなる。


 でもそれは、別の話。

最後までお付き合い下さり、ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ