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サマー・マーメイド・ループ ~溺れる人魚にハッピーエンドを見せたい俺は、夏休みを繰り返す~  作者: 雪村灯里


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19/24

#19 出会った君は、また溺れていた

「――と、言う事で人魚の珊瑚を助けたいんだ!!」


 タイムリープ説を疑う彼等に、事のあらましを説明した。

 オカルト研究会所属だけあって、2人ともこの手の話は飲み込みが早い。


「まぁ、悟はおっちょこちょいだけど……祠をわざと壊す程バカじゃないわね」

「そうだね、信じる信じないは保留にして、この後の様子を伺おうか。森宮さん」


 ――おお! 親愛なる友よ!!


「つまり、これから人魚が溺れるから助けるんだよね?」


「そうだ。俺が沖から彼女を助けて連れて来るから、蒼太は浅瀬からこの浮き輪のロープを引いてほしい。彩葉は、持ってきたタオルで人魚の脚を吹いて欲しいんだ。ちなみに俺達以外に彼女の存在がバレるとバッドエンドだから、通報はしないでくれ」


「とりあえず分かったけど、大丈夫? 悟、カナヅチでしょ!?」


「問題ない! なぜか泳げるようになっている! 蒼太、すまんが、先にお爺さんに祠が壊れたむねを連絡してくれ」


「わかった。来たら壊れていたって連絡するよ」


 俺は二人を連れて海岸まで戻ると靴とバッグを置き、シャツと靴を脱いだ。問題ない、今日の俺は準備万端だ。水着を着て、着替えまで持って来ている。


「泳ぐ気満々じゃない……」


 彩葉に引かれながらも、準備体操をした俺は、浮き輪を持ってずんずんと沖へ進んだ。途中妖怪たちが興味深げに近づいて来るが、手で軽くあしらう。


 ここだろうか? 珊瑚を助けたポイントまで到着すると、海の底からポコポコと空気が湧いた。空気の泡と一緒にピンク色の陰が浮上してくる!


 そして、白い手が海面から現れた。


 俺はその見覚えのある手を、力いっぱい引き寄せた。苦しそうな彼女は俺にしがみ付き息を吸うと、驚いた顔で俺を見た。


「さと……」


 何か言いかけて、彼女は慌てて自身の口を手で塞ぐ。生きている彼女を見て嬉しさがこみ上げ、力いっぱい抱きしめた。


「珊瑚!! 会いたかった!!」


 ――もう失敗はしない、絶対に彼女を助ける。


 しかし、珊瑚の体は何者かに引っ張られるようにグっと沈む。海面から覗くと、珊瑚の(ひれ)を掴む金髪の女がいた。


「珊瑚、浮き輪に捕まって」


 俺は彼女の腕が浮き輪に絡むのを確認した後、海に潜った。彼女の鰭を掴んでいたのは、俺達と同じ年頃の青と白の鱗を持つ人魚だった。恐らくこいつが、珊瑚に薬を飲ませた張本人、黒潮(くろしお)真珠(しんじゅ)だろう。


 すると、俺の存在に気付いた真珠が目を見開き驚いた。紳士にあるまじき行為となるが、俺は真珠に向けて思いっきり蹴りを繰り出した。その拍子にバランスが崩れ、視界が一気にぼやける。


 ――ああっ! 眼鏡付けたまま海に入ってたっ!! 俺の眼鏡!!


 普段、泳ぐという行為をしない代償である。だが、俺の蹴りは手ごたえがあった。

 蹴りをまともに受けた真珠は珊瑚から手を離し、後ろによろめく。


 ――この兄妹(きょうだい)の所為で、珊瑚死んでしまう。


 二人に怒りを覚えた俺は真珠の青い鰭を掴み、海面へと浮上した。


「お前も来ぉぉぉい!!」


 真珠の鰭を掴み、浮上した俺を見て珊瑚は目を丸くした。先ほどの蹴りで気を失った真珠がプカリと浮かんだので、彼女の顔が海面から出るようにひっくり返す。


 左腕で真珠に腕を回して抱えると、右腕で珊瑚が掴んでいる浮き輪に腕を回した。息を吸い、海岸に向かい叫ぶ。


「蒼太ー! 引いてくれーー!!」


 蒼太が右腕を上げ合図する。


 視界がぼやけているが、俺は必死に陸に向かい足で水を蹴った。

 今回は珊瑚に意識が有るので、彼女も俺を手伝う様に大きな鰭で俺達を押してくれる。


 ――絶対に負けねーーー!!!


 必死に泳いでいると海底が黒く染まった。大きな影が足元から近づいて来た。


 ――何だ何だ!? 鯨? いや、海坊主だ!!


 海坊主が思いっきり俺達にぶつかり、海水ごと俺達を押し上げる。


「うぁあああ!!」


 それは、イルカが水中からトレーナを持ち上げるかの如く。俺達三人はその勢いで波に乗り、浅瀬まで流された。


 波が引くと、5人は波打ち際にいた。俺と珊瑚はぺたんと座り、真珠は仰向けになって呻いている。……取りあえず、第一段階は成功した! 真珠を捕まえるという想定外はあったものの、ほぼ予定通り……


「なあ、悟? 聞いてた話と違うんだけど……」

「ひきゅしゅん!!」


 その声で振り向くと、先程の海坊主の起こした波を浴びて一緒にずぶ濡れの、蒼太と彩葉がジト目で俺を見ていた。すまん。


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