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サマー・マーメイド・ループ ~溺れる人魚にハッピーエンドを見せたい俺は、夏休みを繰り返す~  作者: 雪村灯里


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18/24

#18 あの夏をもう一度

 満月の杯を入手する為タイムリープをしたが、シイラと狐のあやかしに杯は奪われ祠は吹っ飛んだ。まぁ、祠は吹っ飛ばされた俺を受け止めて壊れたのだけど。


 残り約1時間半。


 今の俺に出来る事は、家に帰って、経緯とこれから起こる事をメモに残し、別の俺に託すこと。作文は大の苦手だ。間に合うか? 否、やるんだ!!


 急いで自転車の元に向かうと、自転車の周りに長い布がふよふよ漂っていた。


一反(イッタン)!?」


 妖怪の一反木綿(いったんもめん)だ。なぜ彼がこんな所に……あれ? 俺が一反や妖怪を視えるようになったのは、珊瑚を助けてからだ。今の俺は珊瑚と会ってすらいないのに、なぜ見えるんだ?


 一反は俺が自転車に触ろうとすると、顔の周りで漂い妨害した。


「一反、やめてくれ! 俺は急いでいるんだ」


 無理矢理手で払い、ハンドルを握った時。脳裏に映像が浮かんだ。それは、自転車で帰ると警察に呼び止められ、木刀について小一時間職質を受ける。また木刀を捨てて自転車で帰っても同じく職務質問に逢うというモノだ。


 ――なんだこの記憶……! だから、自転車はここに乗り捨てられてたのか。


「止めてくれてありがとう、一反!……て、あれ?」


 一反は不思議そうに自転車に絡まり、なびいていた。反応が薄い……まさか……ただ自転車で遊びたかっただけ? 一反もタイムリープした訳じゃ無いから、俺の事を知らなくて当たり前か。


「一反! また、あった時遊ぼうな! じゃ!!」


 一反に一旦別れを告げた。俺は少し遠回りになるが、公園や空き地をググり抜け帰る。出来るだけ人と会わないように家帰った。


 ◆


『絶対読め! 実行せよ!!』


 俺はペライチのルーズリーフに、マジックで大きく書いた。そして、シャープペンシルで経緯とこれからを細かく書いて行く。


 この後、別の世界線の俺が来るのだろうか? だとしたら、それまでに眠らないと! あの二つの書置きは二つの未来()それぞれの俺だろう。彼等にこの手紙が捨てられても困るので手紙の最後に『俺が最新の悟だ』ともマジックで書いた。鏡を机の引き出しに仕舞い、準備は完了した。


 ――やれることは全てやった。 頼む! この時間軸の俺。何とか珊瑚を助けてくれ!!


 俺はベッドに横たわると、ストンと眠りに落ちた。目覚めたらきっと未来に戻って居る。そこには生きた珊瑚もいるはずだ。


 ◆


 スマホのアラームの音が聞こえ、目が覚める。


 はっと目が覚めスマホの方を見ると、アラームを止めようとする枕返しと目が合った。


『ぴやぁぁぁぁ!』


 枕返しは、かわいい悲鳴を上げてスッと消えた。


 ――おまえか。いつのスマホのアラームを止めていた犯人は!! それより珊瑚は!?


 俺は飛び起きてスマホを見た。祠へ行き珊瑚を助ける日の朝8時。つまり帰れていない。机の上には書置きも増えておらず、先ほど書いたのもが置いてあるだけだ。


 ――まずい、イレギュラーだ。過去を変えたから未来が変わったのか?


 だが、目の端では壁時計の秒針が音を立てずに進んでいる。良く分からないが、俺のやるべきことは決まっていた。


 もう一度珊瑚との出会いをやり直す!!


 ◆


 俺は自室を出て階下のダイニングへと向かった。そこでは両親が朝食を食べ始めた所だった。母親が目を丸くして俺に声を掛ける。


「あらおはよう。今日は、宣言通りのお目覚めね?」

「おはよう、食べてていいよ、自分で用意するから」


 俺は白飯とみそ汁を自分の椀によそって、席に着いた。


「いただきます!」


 今日は体力勝負でもある。スタミナ不足で失敗したなど、珊瑚に合わせる顔が無い。いつもとは違う気迫で黙々と朝食を食べる俺に、両親はポカンとしていた。


「今日は気合が入っているじゃない」

「ああ、失敗できないからな」

「え?? 好きな子に告白でもするの?」 


 母の言葉に思わず(むせ)る。


「……告白じゃなくて! オカ研の活動! それより、母さん達は準備イイの? 折り畳み傘や、充電ケーブル忘れるなよ。あとお守りの数珠も!!」

「あら! いけない忘れてたわ! ありがとう悟」


 まぁ、それが無くて困ってたって聞いたし。変なフラグを立てずに済むだろう。


「じゃ俺、行ってくるから。二人とも旅行、気を付けて行って来て」


 朝食を食べ終えた俺は、急いで準備をする。


 祠の鏡は家に置いておくことにした。この後、珊瑚を助けるから……泳ぎやすい方がいい。必要と感じた物を近くにあったビニール袋に詰めた。


 予定より早く家を出る。


 いつもと同じ景色のハズなのに、空気がピリッとして重く感じた。


 ◆


 オカ研集合時刻の5分前。俺はしらほし浜の入口に到着した。


 前方に到着したばかりの彩葉(いろは)蒼太(そうた)の背中が見えた。俺の自転車を見て何か話している。自転車に絡んでいた一反は居なくなっていた。どこか近くで遊んでいるのだろうか? 


「おはよう! 2人とも」

「きゃーっ!! さ、悟!? お、おはよう」

「おはよう、悟。珍しいね? 時間より早いなんて。それよりどうしたの? いつもより荷物が多いね。それに、水着?」


 驚き過ぎの彩葉に、冷静過ぎる蒼太。なぜだろう。二人と会って、涙が出そうになった。でも、この2人はタイムリープについて何も知らない。


「2人とも! 頼みが有るんだ!! 協力してほしい」

「な、なによぅ……いきなり」

「いつもと様子が違うけど、どうしたんだい?」

「俺、明日からタイムリープしてきた」

「「タイムリープ??」」


 二人はタイムリープと聞いて、狐につままれたような顔をした。


「俺が変な事を言っているのは、重々承知している! その証拠に、彩葉。今日俺が海に落ちると思って、タオルを持って来ているよな?」


 俺は彩葉が肩に提げているトートバッグを指差した。勿論彼女の顔には「なんで知ってるの?」と書いてある。時間の惜しい俺は言葉を続ける。


「蒼太のその一輪車は、蒼太の爺さんから貸してもらったんだろ? 飲物まで差し入れありがとうな!!」


 ――どうだ! これで信じるだろう?


 だが蒼太が冷静に反論した。


「……そうだけど。僕達の普段の行動や、この状況をみればカバンの中身や、僕の荷物だって推理できるよね? タイムリープした証拠にしては薄いよ?」


 ――うぐぅ! 蒼太さん!? 


 彼に信頼されないとこのミッションは厳しい。彩葉まで「確かに」と頷き出した。ならば奥の手だ。


「ああ、蒼太ならそう言うと思って、とっておきの証言がある。実は祠が壊れている百聞は何とやらだ! 早速来て欲しい」


 そういって俺は蒼太が持ってきたネコ(一輪車)を奪い、彩葉の荷物を載せた。

 浜辺をずんずん進むと彩葉が不安げに尋ねてくる。


「悟、大丈夫? 体調悪いの? 熱中症なら少し日陰で休もう?」


 彩葉がここまで親身に心配するのは小学校以来だ。本当に祠を見てくれば分かるって! 三人で祠が有る丘の階段を昇り、壊れた祠を目にした二人は愕然とした。


「な? 壊れているだろう??」

「「……」」


 二人はゆっくりとこちらを向いて静かに告げた。


「悟……あんたが壊したの?」

「え?」

「予言と言うより……自白?」

「はぁぁぁ!?」


 まぁ、確かに俺がシイラに蹴り飛ばされた時の被害者(?)がこの祠だ。まずい!雲行きが怪しい。早く誤解を解かなくては!!


「ち、違うんだ! 二人とも話を聞いてくれ!!」


 俺は二人に、懇切丁寧に事のあらましを話した。


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