表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/21

第15話:“憤怒”の審判と、ルシアの罪

七柱の試練、第六柱――それは《憤怒》。


 それは、正義の名の下に行使される破壊の感情。

 悪に抗い、理不尽に叫び、誰かを守るために噴き上がる、“怒り”の本質。


 


 神殿の中央、リオンが柱に手をかざすと、今までとは異なる波動が彼の身を打つ。


 


 「……これは、熱い……!」


 


 リオンは言いようのない感情に突き動かされるまま、再び精神の奥底へと沈み込んでいった。



 


 そこにあったのは、千年前の記憶だった。


 目の前で、ルシアが“火刑”に処される光景。


 人々の罵声。火をくべる神官たち。誰ひとり止めようとしなかった同僚たち。


 


 「なんで……誰も、止めなかったんだ……!」


 


 影の中から、もう一人のリオンが吠える。


 


 「それなのに、お前はただ見ていただけだ! 弟子として、ルシアを“助けなかった”!」


 


 リオンは歯を食いしばる。


 


 「……俺は、弱かった。何もできなかった。だけど――今は違う!」


 


 炎の中で微笑むルシアの姿が浮かぶ。


 そして今、リオンの隣に立つ、変わらず静かな笑みを浮かべる現在のルシア。


 


 「俺はあの日の自分を、許さない。だけどそれは、“怒り”じゃない。

 悔しさも、後悔も、今の俺を強くしてくれる。

 ――怒りを、ただ壊すためじゃなく、“守る力”に変えてみせる!」


 


 リオンが拳を振り上げると、空間そのものが震え、炎を纏った巨大な“怒りの化身”が砕け散った。


 


 《試練・第六柱“憤怒” 克服認定。契約修復進行度85%》



 


 戻ってきたリオンを、ルシアは迎えた。


 彼女は、少しだけうつむきながら言った。


 


 「リオン……。あなたに一つ、話さなければならないことがあるの」


 


 リオンは顔を上げる。


 


 「……ルシアさん?」


 


 ルシアは、遠くを見つめるように語り始めた。


 


 「私がかつて交わした“七柱の契約”……その一部は、私の意思でもあったの。

 魔法を暴走させ、戦争を生み、結果として多くの命を奪った。

 神に封印を許したのは、私自身……私の“憤怒”が、文明を滅ぼしたの」


 


 リオンは目を見開いた。


 


 「でもそれなら、どうして俺に継がせたんですか。

 もう一度、魔法を蘇らせようとしてるのは……」


 


 ルシアは、静かに答えた。


 


 「私は、ただ滅ぼしたいんじゃない。“やり直したい”の。

 あなたのような存在がいる世界なら、もう一度、信じてみたいのよ」


 


 リオンは少しだけ迷い――それでも、彼女に頷いた。


 


 「なら俺が、やり直す理由になる。あなたが背負ってきた“憤怒”も、俺が抱えて進む」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ