第11話:七柱の封印、“傲慢”の試練へ
神殿《レガシアの環》の中心に浮かぶ七つの光柱。
リオンは第一の柱“怠惰”を乗り越え、再び静かな意志を瞳に宿していた。
「次は、“傲慢”──だね」
ルシアがそっと杖を掲げ、光の柱に指を伸ばす。
「この試練は、精神の奥底を試すもの。“自分こそが正しい”という過信に打ち勝てるか――それが鍵よ」
次の瞬間、リオンの意識は再び虚無の空間に引き込まれる。
――気がつくと、リオンは「別の世界」にいた。
そこは荒廃した大地。崩れた城壁、燃え残った街。無数の人々が苦しみに呻いている。
そしてその中央に、“もう一人の自分”が立っていた。
「見てみろ。これが“お前の正義”の結果だ」
影のリオンは言う。
「お前が選んだ道は、世界を混乱に陥れるだけだ。
お前が魔法を取り戻すことで、人々は再び争い、そして滅ぶ」
リオンは震える。
「そんな……俺は、みんなを救うために……!」
「“救う”だと? 誰の許可を得て?
お前は神に選ばれたわけでも、王に認められたわけでもない。
お前はただ、“ルシアのため”に動いてるだけじゃないのか?」
リオンは反論できなかった。
彼がここまで来たのは、間違いなくルシアのためだった。
彼女の想いを継ぎたい。それがすべての始まりだった。
――でも、それが“傲慢”なのか?
彼は、胸に手を当てる。
そこで思い出したのは、魔法を見たときの感動。
初めてセリエの声を聞いたときの温もり。
そして、失われた世界を取り戻したいと願った自分の“意志”だ。
「たしかに、俺はルシアさんに救われた。
でも、今ここに立ってるのは……俺自身の選択だ!」
影が微かに揺れる。
「誰かのせいにするな。何かのためにと言い訳するな。
――俺は、俺の意志で、この世界に魔法を取り戻す!」
その瞬間、リオンの中から光がほとばしり、影のリオンを貫いた。
《試練・第二柱“傲慢” 克服認定。契約修復、進行度28%》
意識が戻ると、ルシアが彼を支えていた。
「リオン……!」
「……ごめん、ルシアさん。俺、ちょっとだけ自惚れてたかも。
でも今はちゃんとわかった。俺の中にある“誇り”と“責任”を」
彼の瞳は、迷いなく前を見ていた。
ルシアは微笑む。
「ええ、それでこそ“継承者”よ。あと五柱――ここからが本当の戦いになる」