第98話 「勝手に壊れるなんて、不思議な事もありますわ」
「フヒヒヒヒヒヒィ、久しぶりだなぁ…………姫。」
卑らしく、ラミスに忍び寄るシュヴァイン王子。
「ふへへへへへへへ……。」
……じりじり。
「…………。」
……すたすたすた。
ラミスは、すたすたと歩き出し牢の鉄格子に近付く。瞳を閉じふーっと息を吐き、そして思いっきり鉄格子を蹴り飛ばした。
──ドゴォ!!
──がらがら、がっしゃーん。
吹き飛ぶ鉄格子。そして、それを唖然と見て固まる王子と護衛の兵士。
…………。
……くるん。
「ビクゥ!」
くるんっと、振り返りにこりと笑うラミスに。恐怖し、恐れおののくぽんこつブラザーズ。
「にこー。」
……うふふですわ。にこにこ。
「ひぃぃー!」
「あらぁ?これは、シュヴァイン王子様。私に何かご用が、おありかしらー?」
……バキボキ。
にっこりと天使の様に微笑みながら、拳をぼきぼき鳴らし。ゆっくりとシュヴァイン王子達に近付いて行く、ラミス姫様。
…………。
「あっ、あれぇー。何だか俺、急に腹痛が……。あ痛てててて。」
「あ、俺も。急に田舎のおばあちゃんが呼んでいる気が……。それじゃ、俺達はこの辺で……。」
二人の兵達は、王子を置いてそそくさと逃げ出す。
「あっ、おいお前らー。こらっ、俺を置いてくなぁーー!」
転びながら、涙目で訴えるシュヴァイン王子。
……うふふふ、ですわぁ。
「……ウフフ、ウフフフフ。」
──ちーん。
きちんとぽんこつ三人仲良く調理し、天国へ連れて行って差し上げる。心優しいプリンセスラミス。
「……ふぅ。」
…………。
勝てない。今のままでは、どう足掻いても奴には勝てないだろう。
…………。
ラミスは壁をじっと、見つめる。いや、壁では無い。その壁の向こうに居るであろう、奴の姿を見ていた。
ラミスは拳を握り決意する。しかし、その前にもう一度見ておきたかった。
奴を。あの豚王を。
……次は必ず、勝つ為に。
──ドガッ!
ラミスは壁をぶち破り、外の様子を伺う。
…………。
……いる。
今まで気が付かなかったが、いる。……奴が。今のラミスには、あの化け物の放つ。禍々しい妖気がはっきりと感じ取れた。
…………。
意を決し、足を前に出し歩き始めるラミス。
「何だっ!?か、壁が急に……。」
壁が崩れる音を聞き、数人のヘルニア兵士達がラミスの回りに集まって来る。
…………。
──ゴスッ。
吹き飛ぶ、ヘルニア兵士達。ヘルニア兵達には、ラミスの放つ拳が全く見えていなかっただろう。ラミスはその場から、一歩も動く事無く五人の兵士を吹き飛ばした。
「ひ、ひぃぃ。」
…………。
「その前に、少し肩慣らしですわね。」
……ウォーミングアップは、大事ですわ。




