第9話「私に勇気を与えてくれますわ」
以降、ラミス姫はルートAを選択し、様々な方法を試し脱出の方法を探って行った。
『16回目』
走っている途中に躓き転倒し、失敗。
『17回目』
プリンセスキックで剣を奪い、廊下の兵士に突き立てるも強固な鎧や兜に阻まれ、失敗。
……剣、重すぎ案件。
『18回目』
音を立ててしまい気が付かれ、失敗。
『19回目』
鍵が掛かっている扉に体当たりするも跳ね返され、失敗。
『20回目』
奪った剣で扉を抉じ開ける作戦、扉が硬過ぎたので、失敗。
……扉、硬過ぎ案件。
~中略~
『27回目』
プリンセスキックで廊下の兵士を蹴り飛ばし、その隙に鍵を探す作戦。これを七回試すが全て、失敗。
『28回目』
プリンセスキックで蹴り飛ばし、その間に剣を奪って投げ捨てて……。
後は、何とか頑張って素手で戦う作戦だったのだが。
……これが最低の悪手だった。
姫は顔や腹等を複数回蹴られ苦しみ、まだ楽に死ねる方が良かったと後悔する事になった。
全て失敗に終わり、再び薄暗い牢の中へと戻される姫君。あまりの辛さに、姫はぽろぽろと涙を零し泣き始めた。
「もう、嫌ですわ……。」
あまりの苛酷さに、凶器の恐ろしさに。姫は泣き出し、今回ばかりは立ち上がる事が出来なかった……。
父は目の前で殺され、姉達の安否すら分からない。姫は何度も殺され、文字通り"死ぬほど"の痛みを味わい今まで耐えてきた。
その様な絶望的な状況の中を、姫はたった一人で戦ってきたのだ。
辛かった……。苛酷過ぎるこの現実から、逃げ出してしまいたかった。
姫は涙を流し恐怖に打ちひしがれ、立ち上がる事が出来なかった。
……しかし、姫の頭に優しい姉達の姿が映し出される。会いたかった、もう一度姉達に会って声を聞きたかった。
「……ううっ。」
姫は涙を拭う。
「私は、絶対に諦めませんわ。」
姫は誓ったのだ。
例えどんなに辛くても、例えどれだけ苦しもうとも。この先、姫の前にどんな困難が待ち受けていようとも……。
姉達に一目会うまでは、そしてまだ無事であろう妹に会うまでは。何があっても決して諦めないと、姫はそう誓ったのである。
「私とした事が、少々取り乱しましたわ。」
姫は、涙を拭い立ち上がる。
「落ち着くのですわ…………。」
「心を平静にして考えるのですわ……こんな時どうするか…………。」
「落ち着くのよ……。今までの事を冷静に振り返って落ち着くのよ……。今まで何回どの様に失敗したのか、冷静に考えるのですわ。」
「えーと2、3、5、7、11、13、17、19、23、28……いや……違いますわ29ですわ」
28回失敗したので、今は"29回目"である。
「あら?800ゴールドもするドレスに、カエルさんが引っ付いてますわ?」
「何処から入って来たのかしら?……ふふふ、私のお部屋にようこそですわ、小さなお客さん。」
……カエルさんに話かけ、現実逃避するラミス姫様。
姫はぷるぷると可愛く首を降り、すくっと立ち上がる。……そして頬をぱしぱしと叩き活を入れ、再び歩き出した。




