第81話 「可憐過ぎて戦えませんわ」
ラミスは、姉ナコッタとクリストフ将軍との話を終え、外に向かい状況を確認する。
「えっ!?姫?何故来たんだ?……ここは危険だ。すぐに戻るんだ。」
グレミオは、ラミスが来た事に驚き。すぐに、家の中に戻る様に告げる。
……現状は、味方兵の負傷者は二名。命に別状は無いだろう。ヘルニア兵士の数は、約二百弱。その内、既に五十人近くがグレミオ達に倒されていた。
ラミスはグレミオの言葉に、ふふっと笑い笑顔を見せて答える。
「ふふっ。私も戦いますわ、グレミオ。」
グレミオが驚く中、念入りに準備体操を始める姫君ラミス。無論やる気満々な……。いや、むしろやる気しかない姫様。
「姫っ!戦うだなんて正気か?無茶だ!君の様な華麗な姫君が、ヘルニア兵と戦える筈が無いだろう?」
…………。
……くるん。
ラミスは、くるんとグレミオの方へ振り向き。にっこりと微笑む。
「私も、そう思いますわー。」
ぱぁー。
頬に手を当て、嬉しそうにくねくねするラミス姫様。
「華麗過ぎて、戦えませんわー。」
うふふですわー。
「だろう……。だから、早く戻るんだラミス姫……。」
ラミスを心配し過ぎる、騎士グレミオ。
「ヒャッハー!!」
「ふへへへへへへへ……。何だぁお前、何処ぞのお姫様かぁ?」
何時もの様に、ガラの悪いヘルニア兵士達に周りを囲まれる、騎士グレミオとお姫様。
「くっ。貴様ら。これ以上、我が姫に近付くとただでは済まんぞ!姫。俺が隙を作る。その間に早く逃げるんだっ!」
──キリッ!
超絶見せ場な、騎士グレミオ。
「うふふ、ですわー。」
……まだ瞳を閉じ頬を赤らめ、絶賛くねくね中のラミス姫様。何だか、とっても幸せそうな所悪いのだが。今はそれ所では無い。
──ザシュ!
「ぐはぁっ!」
グレミオの剣が唸り、一度に十数人のヘルニア兵士を斬り裂く。
「さぁ、姫!早く、今の内にっ!」
「あ、面倒なのですぐに片付けますわね。グレミオ、少し私から離れて頂けるかしら?近付くと少々、危険でしてよ?」
「姫っ?何を……。」
「ふふふ……。」
すたすたすた。
ラミスは不敵に笑いながら、おもむろに歩き。ヘルニア兵士達にゆっくりと近付いていく。……その背中から溢れ出す"闘気"に、グレミオも気付く。
──バリバリバリッ!!
ラミスの体に稲妻が走り、辺りの石や土等が浮かび上がる。
「……ふふふ。少し、痺れますわよ?」
……その刹那、ラミスの目が光る。
──バリッ、バリバリ!!
「プリンセス"雷"!!」
ラミスのその技は、瞬きをする程の間に。二十人以上のヘルニア兵を吹き飛ばした。
姫神拳奥義、二十五式プリンセス雷。
雷をその身に宿し、雷の如く瞬時に敵をなぎ倒す、ラミスの新奥義である。その雷の如く早技は、あまりの速さに幾つもの残像を残し、ラミスの姿が何人にも見えた。




