第7話「ごきげんようですわ」
姫は大の字に寝転がり、天井を見詰めながら模索した……。
正直な話、この現状を打破する方法は皆無であると言っても過言では無いだろう。剣も魔法も使えない、非力でか弱い姫君なのだから尚更である。
「……無理ですわ。」
……姫はとりあえず一旦考えるのを諦めて、今姫が置かれている状況を整理してまとめようと考えた。そうすれば、何かしら問題を解決する手懸かりが見付かるかも知れない。
まず脱出するには必ずあの扉を通る必要がある事、その為にはあの廊下に居る兵士から鍵を奪わなくてはならない。
待っていても王子達がやって来て殺されてしまう事。
……以上の点を踏まえ整理すると、姫が脱出出来る可能性がもし、あるとするならば。
以下の二通りの方法しか残されていない。
『ルートA』
何かしらの方法で運良く廊下居る兵士を撃破、又は鍵を奪い脱出。
『ルートB』
王子から奪った小剣で、王子含め兵士を三人倒し脱出。
どちらもかなり非現実的である。余程の幸運が重ならない限り、実現は不可能だろう。
……しかし、姫にはこれ以外の方法など残されてはいなかった。幸いこの不可解な謎の現象により生き返る事が可能であり、時間に余裕がたっぷりとあるのだ。……正直嫌なほど。
「……前途多難ですわね。」
……姫は正直な話、生き返りの力よりも敵を倒せる様な攻撃出来る魔法の力とかが欲しいと思った。
「……そういえば。お姉様達も私の様に、不思議な力を授かったのかしら?」
古の伝承の神の力、ラミス姫は四人姉妹の三女である。その三女のラミス姫だけに、神は力を授けたのだろうか?
「そういえば確か、伝承の神は複数居た……。様な気がしますわね。」
姫は父の話を思い出す、幼少期に聞かされた父の言葉は何処か少しうろ覚えだった。
……しかし、もしかすると。
「お姉様達も、私の様に不思議な力があるかも知れませんわね。」
そう思うと、少し希望が湧いてきた姫様なのだが……。しかし、今この現状を何とか脱しない限り。外にも出れず、姉達に会うことなど到底叶わないだろう。
……姫は六度目の脱出を試みた。
ルートはB。
やはり例え相手が二人でも、小剣がある方が良いのではと姫は考えた。やはり丸腰よりかは幾分、脱出出来る確率は上がるのでは無いだろうか?
『6回目』
姫はその場に座り、出来るだけ何も考えずに王子達が来るのを待っていた。やはりこれからの事を考えると不安に駆られ、胸が押し潰されそうになる。体を動かしていた方が気持ちは楽だったかも知れない、やはり廊下の兵士の方に行った方が良かったのでは無いかと姫は少し後悔していた。
暫くすると王子達の声が聞こえ始め、姫の脳裏に前回のあの恐ろしい出来事が鮮明に過る。ラミス姫は、恐怖にがたがたと震えていた……。
そして、登場する王子達。
「フヒヒヒヒヒヒィ……。久しぶりだなぁ、姫。」
前回と同じ様に兵士が鍵を開け、王子が牢の中へと入って来る。
姫はすっと立ち上がり、おもむろに王子に近付いて行った。
「ごきげんよう。」
そう言いながら、力一杯王子の顔面を殴り付けた!
──ばちーん!
「ブヒィ。」
王子は鼻血を出しその場に倒れ、姫はすぐに小剣を奪い王子に止めを刺す。
なんとか武器は手に入れる事が出来た、しかし問題はここからである。敵兵士は二人、そしてもう不意打ちは通じと思われる。
……しかし、運が良ければ何とかなるかも知れない。いや姫に選択肢など無い、戦う以外の選択肢は無いのだ。
姫は小剣を握り締め、覚悟を決め身構えた。そして兵士に向かって走りだし、剣を敵兵士目掛けて突き刺す。
──カキィン。
走り出した途端、姫は小剣の重みに耐えきれず。姫はよろけて小剣は明後日の方向へと行ってしまい、敵兵士に突き刺す事が出来なかった。
「……あらあら、どうしましょう?」
どうやら比較的軽めの小剣でも、姫には重過ぎて使いこなせなかった様だ。
……そして兵士の剣は姫に振り下ろされ、姫の意識はそこで途絶える事となる。




