第61話 「強くならないと、誰も救えませんわ」
夜が明けても、二人はナコッタの側から離れようとしなかった。
ラミスは土を掘りながら、昨夜の事を思い出す。二人にナコッタの居場所を尋ねられた時の事を。
……ラミスは答えに迷った。正直に話していいものなのか?
…………。
やはりあの時、知らないと嘘を付くべきだったのだろうか?……この様な二人の悲しむ姿を見ると、自らの判断は間違っていたのではないかと、深く後悔をした。
「リンお姉様、ミルフィー。もうナコッタお姉様を、眠らせてあげましょう……。」
ラミスは七人分の墓を掘り終え、泣いている二人の肩をそっと抱き、そう話しかける。
…………。
「うう……。ぐすっ。」
──ザッザッ。
……ナコッタお姉様。
ラミスは改めて思った。絶対にこの様な未来にしてはならない。もう二度とこの様な悲劇を繰り返してはいけない。ラミスは姉を埋葬する中、そう何度も自分の心に言い聞かせていた。
もっと強くならなければ……。もっと強くならなければ誰一人救う事が出来ない。もっと強くなり、自分に宿る神々の力を使いこなせれば。いや、四人全員に宿る神々の力を使いこなし、正しい道を選択すれば。必ずこの悲劇を止める方法が、ある筈なのだから……。
「ナコッタお姉様、しばしのお別れですわ。私が……。ラミスが必ず迎えに行きますわ。それまで安らかにお眠り下さいましね。」
──ザッザッ。
……クリストフ将軍。
将軍の近くには、数多くのヘルニア兵達の亡骸があった。
あの大怪我で、あの様な状態で……。ここまで多くのヘルニア兵達を、倒す事が可能なのだろうか?
……いや。将軍の壮絶な死に様が、その全てを物語っている。ラミスは改めてクリストフ将軍の強さと偉大さを理解した。
「クリストフ将軍。最後の一瞬のその時までお姉様を守り、戦って下さったのですね。本当にありがとうございますわ……。」
──ザッザッ。
……グレミオ。
「貴方も最後まで、お姉様を守る為に戦って下さったのですね……。ありがとうございますわ。グレミオ、貴方とは小さい時からよく一緒でしたわね。最初、騎士になりたいと言い出した時は、私凄く心配しましたのよ?それがいつの間にか、こんなに立派な騎士になって、いらっしゃったのね……。」
ラミスはグレミオ配下の、四人の兵士達も同様。一人一人名前を呼び、手厚く埋葬した。
「貴方達こそ、我が公国が誇る真の英雄達ですわ……。」




