第５４話 「流石お姉様ですわ」
──ダッ！
素早く駆け出し、華麗に空中を舞うラミス。
「これでも……喰らいなさい！」
──ガキィン！
ラミスは豚に凄まじい威力の蹴りを放つが、鋼鉄の外皮に阻まれびくともしない。
──ドガガガッ！！
何度も勢いよく殴り付けるが、拳も同様。その厚い外皮には、傷一つ付けることは出来なかった。
リンの背中が光り、白銀色の闘気を風に乗せ豚に勢いよく斬りかかる。
──ザシュ！
「ブヒィ！」
豚がたまらず、悲鳴を上げる。
──！？
「効いてますわ、流石お姉様。」
あの怪物の、あの硬い外皮を貫いている。
リンの双刃は、尚も豚を斬り裂く。
──シュバババババッ！
「ブヒィ！ブヒィ！！」
豚は暴れだし、棍棒をリンに叩き付けた。
──ドゴォ！
「お姉様ー！！」
棍棒の下敷きになった、姉リンに青ざめ叫ぶラミス……。
──シュバババババッ！
尚もリンの双剣は唸りを上げる。
「あ、あら……。忘れていましたわ。」
棍棒の下敷きになったと思われたのは、リンの残像だった。
リンのあまりの速さに、ラミスの目でもその速度は追えなかった。
──シュバババババッ！
リンの姿は何人にも見え、豚を斬り刻んでいく。
凄いですわ、お姉様……。これがお姉様に宿る神々の力なのですわね。
──ピタッ。
しかし、リンは攻撃をぴたりと止め、わなわなと震え出した。
…………。
「何よ……。」
「何よ、こいつ！？めちゃくちゃ固くて倒せないじゃない！！>△<」
…………。
……お姉様？
大丈夫ですわ？お姉様。ご安心なさって？滅茶苦茶効いておりますわよ？
──シュバババババッ！
「ブヒィ！ブヒィ！！」
苦しみ、唸り声を上げる怪物、豚。
「お姉様ー。頑張って下さいまし、もう少しですわよ！」
手をぶんぶん振って応援するラミス。
「ぶっ！？……ちょっとラミス。貴女、腕が折れてるじゃない！？」
……あら？
先程豚を攻撃した際に折れたのだろう……。ラミスの手は折れ曲がり、足は砕けていた。
「早くミルフィーに治して貰って、あんたはミルフィーの護衛でもしてなさいっ！」
「はーい、お姉様！」
元気良く手を上げて返事をする、ラミス姫様。
「きゃああー、お姉様！」
ヘルニア兵の一人が、ミルフィーの腕を掴んでいた。
「へっへっへ……。」
──ギュオ！
ラミスは急いでミルフィーの元へと飛び上がり、空中を二回転しながら華麗に舞う。
「プリンセス延髄！」
──ガキィ！！
蹴りを喰らったヘルニア兵は吹き飛び、それと同時にラミスも吹き飛んだ。
「痛いですわー！」
ごろごろ……。>△<
それもそうだろう、砕けている足で。しかも兜を装着しているヘルニア兵を蹴り飛ばしたのだ。ラミスが痛がるのは無理もない……。
「ミルフィー、助けてぇ。」
シュバッとミルフィーに抱きつき、お願いするラミス姫様であった。
