第51話 「絶対に許さないわ」
妹を……。ミルフィーを助けなければ!そう思い、駆け出すラミスだがヘルニア兵に阻まれてしまう。
「へっへっへ……。何処に行くつもりだ?お嬢ちゃんよぉ。」
「お願い、通して……。」
「へっへっへ……。」
当然だが、その様な事を聞いてくれる敵兵士など一人もいる筈がない。
「退きな……さい!」
──ドガガッ!
ラミスは華麗に空中を舞い、回転蹴りを放つ。
「プリンセス円月!」
真空飛び膝蹴りの体勢で飛び上がり、そのまま足を一回転させる蹴り技。
姫神拳奥義六式プリンセス円月脚。その華麗な脚技は弧を描き、複数人を抹殺する大技である。
──ガキン!
早くしないと……ミルフィーを助けないと……。
しかし、何処に当たるかは見当が付かず、鎧や兜に阻まれてしまう。
残念ながら、まだ改良の余地がある未完成技と言わざるを得ない。
「ぐっ……。」
未完成なのも実力不足なのも勿論あるのだが、やはり兜が邪魔である。
──ドカッ!
ラミスはヘルニア兵を蹴り飛ばし、その隙にミルフィーの元へ向かう。
──たたたたたたっ。
「へっへっへ……どうした?嬢ちゃん。」
ヘルニア兵二人が気が付き、ラミスに近付いてきた。
「邪魔ですわ!」
──ドカカッ!
ラミスは二人の兵士を思い切り蹴飛ばす。
「ぐわっ!」
ラミスが先ほどまで戦っていたヘルニア兵と違い、城門より入って来たヘルニア兵士は、まだラミスの事を知らず油断していた。
しかし吹き飛ばされた兵士達を見て、隊長らしき人物が声を上げる。
「何をしておるか?さっさと捕らえよ!」
その声に反応した、五十数人の兵達に囲まれるラミス。
まだラミスのその麗しい姿に油断しているのか、それとも数の有利に安心しているのか……。敵兵士達はラミスに掴みかかって来た。
──ドガガガッ!!
ラミスは凄まじい蹴りを放つが、やはり兜が鎧が邪魔をする。仕方がないので蹴り飛ばすラミス。
やはり鎧と兜が邪魔である。
ラミスが出来る事は三つ。蹴り飛ばす、兜を外して攻撃する、残るは……。
…………。
ラミスは戦いながら、横目でヘルニア兵達を見る。
「……首が狙える敵さんが、いらっしゃいますわね。」
──ギュオォ!!
ラミスは蹴りの軌道を変える。
──ゴキィ!!
回転蹴りが命中し、首が折れ吹き飛ぶヘルニア兵達。
「ぐあっ。」
「き、貴様ァ!」
剣や槍を持ち殺気立つヘルニア兵達が、ラミスに一斉に襲いかかる。
──ドガガガッ!
何とか脚技で凌ぐラミスだが、やはり多勢に無勢。鎧が兜が邪魔をし、戦い辛い。
「弓だ!弓で足止めをしろ!!」
兵士の一人がそう叫ぶ。
「うっ……。」
無情にも、その矢はラミスの体に突き刺さる。
ラミスは己の非力さを嘆いた……。
自らの無力さに絶望していた……。
妹ミルフィーを助ける事が出来ない、自分の未熟さを呪った……。
しかし、流石にラミス一人では限界があるのだ。
どれだけラミスが華麗な脚技で捌いても、どれだけヘルニア兵を蹴り飛ばしても……。百数人の鎧を身に付けた兵を相手にするのは、土台無理があると言うものだ。
「何を、ちんたらやってやがるんだ?お前ら!!」
ラミスの前に、筋肉隆々の大男が三人、兵士を押し退け姿を現した。その内の一人はゆうに、二メートル超えていた。
──ドカッ!
ラミスは渾身の蹴りを放つが、屈強なその体に阻まれびくともしない。
「……なんだぁ?蚊でも止まったかぁ?」
「そっ、そんな……。」
その大男は明らかに、廊下の兵士ことゲイオルグよりもはるかに強かった。
大男の巨大な戦斧が、ラミスに襲いかかる。
「くっ……。」
流石にこれを喰らっては、一溜まりもない。ラミスは必死にこれを回避す。
「お姉様ーー!!」
ミルフィーが悲痛な叫びを上げる……。
「ミルフィー、待ってて……すぐに助けるから。」
──バキッ。
…………。
「うるせぇんだよ!!」
……ミルフィーが顔を殴られ、倒れ込む。口の中を切ったのだろうか、唇から血が滴り落ちていた。
ななななななななっ……。
「ゆっ、許しませんわよ!貴方!!」
ラミスは怒りに震え、ミルフィーの元へ向かおうとするのだが。ラミスの前には巨漢三人が立ち塞がり、通る事が出来ない。
「どきなさい!」
──ドカッ!
ラミスは蹴りを入れるが、やはり巨体にはびくともしない。
「お退きなさい!!」
──ドガッ!!
ラミスの渾身の蹴りが全く効いていない。
「へっへっへ……。」
大男はたまらず笑いだした。
「退けーーーーーー!!!」
──バリバリバリッ!
稲妻が走り、辺り一面に凄まじい轟音が鳴り響く。
「プリンセス"雷帝"!!」
まるで雷が落ちた様な、雷鳴音が轟いた。ラミスのその一撃は、稲妻を走らせ爆音を轟かし、鎧もろとも三人の巨体を砕き、撃ち貫いた。
──姫神拳究極奥義、百七式プリンセス雷帝脚。
しかしその大技は、まだラミスが扱える様な代物では無かった。ラミスには早すぎたのである。
その雷帝の如く脚技は、敵兵を砕くと共にまた、ラミスの足も吹き飛ばした。
ラミスはそのまま、ミルフィーを殴り付けた兵士に飛び掛かり殴りつける。
「貴方だけは、許しませんわよ!」
「ひいぃぃぃぃぃ!」
──ドカッ!
……ラミスはぼろぼろになりながらも、ゆっくりと立ち上がり、妹ミルフィーに微笑みかけた。
「待ってて、ミルフィー。貴女だけは必ず助けるか……ら……。」
──ザシュ。
背後からヘルニア兵に斬りつけられ、そのまま無情にも地面に倒れ込むラミス。
「い、いやぁーー。お姉様ーー!!」
ミルフィーのその叫び声はもう、ラミスの耳には届いていなかった……。
「ごめんなさい、ミルフィー……。助けてあげられなくてごめんなさい……。妹一人救えない、無力な姉を許して……。」
ラミスは薄れ行く意識の中、何度もミルフィーに謝り続けた……。
ヘルニア兵達が集まり、無情にもその刃はラミスの首を狙い……。そして振り下ろされる。
──ザシュ。
…………。
ごめんなさい、ごめんなさい……。
助けてあげられなくて、ごめんなさい。
──ザシュ!
…………。
──ザシュ!ザシュ!!
「うぐはぁっ!」
…………。
その双刃により、幾多のヘルニア兵士達が切り裂かれ、吹き飛んで行く。
…………。
──!?
……え!?
その者は双剣を手に。
「ま、まさか!?」
一度に十数人の敵兵を屠り。
「……そんなっ!」
その背中からは、白銀色の闘気が煌めき立ち。
「そんな事って……。」
敵陣の真っ只中、優々と佇むその姿は……。
「お姉様!?」
四姉妹の長女、リンの姿だった。
「貴方達……。よくも私の可愛い妹達をこんな目に!絶対に許さないわ!!」




