第49話 「ゆるちまちぇんわ」
…………。
噛んでしまった……。
「…………。」
少し赤面するラミス姫様。
何だ何だと、ヘルニア兵士達の視線がラミスに集まる。そんな中、先程の子供達がラミスに気付き、ラミスの元へとやって来た。
「お姫……様?」
ラミスは自分に近付いてくる、子供達を見て。思わずその瞳から涙が溢れ、こぼれ落ちる。
「姫様さまぁ。」
ラミスはその子供達を抱き寄せ、謝った。
「ごめんなさい……。」
ぽろぽろ……。
「ごめんなさい……。」
子供達と、ラミスの目から涙がこぼれ落ちる。
「無力な姫で、ごめんなさい……。」
子供達も、またうわーん。と泣き出す。
「貴方達を救う事の出来ない、非力な姫で……至らない姫でごめんなさい……。」
ラミスは子供達を抱きしめ、自らの無力さを改めて感じていた……。
もっと強くならなければ、この子達を救う事が出来ない……誰も助ける事が出来ないと。
……ラミスは己の非力さを嘆いた。
地べたに倒れ、薄れ行く意識の中。先程の奴隷商人は「おいおい、その非力で無力な姫君とやらは一体どこにいるんだよ?」と、言う台詞が最後の言葉だった……。
「へっへっへ……。」
騒ぎを聞き付けたヘルニア兵達がへらへらと笑いながら、ラミスの元へと集まって来た。
「おいおい嬢ちゃんは、お姫様か何かかぁー?」
ラミスは涙を拭き、すくっと立ち上がり。
すたすたすた……。
ラミスはおもむろにヘルニア兵に歩み寄り、にっこりと微笑みかける。
──にっこり。
「ウフフ……ですわ。」
ヘルニア兵もまた、ラミスに連られてにやけ顔になる。
「にっこり……ですわ。ウフフ……。」
うふふ……。
「へっへっへっ……。」
うふふふふ……。
「オラァァァァーーーー!!」
──ドゴォ!!
兵士のみぞおちに、えぐる様に打つ強烈なボディブロー……いやデスブローが炸裂する。
「ボディがお留守ですわよ?」
──姫神拳奥義十二式"姫咬み"。
「ぐはっ……。」
姫咬みの餌食となった兵士は、その場に崩れ去った。
兵士は鎧を身に付けていなかった。……今のラミスを前にして、鎧を身に付けていないなど、それは自殺行為に等しい。
ラミスのその強烈な奥義を、みぞおちに喰らっては流石にどんな屈強な大男でも、一撃の下にひれ伏すだろう。




