第44話 「しっかりしないと、いけませんわ」
「クリストフ将軍には、感謝しかありませんわ……。敵兵の中からお姉様を救出とか……。カッコ良すぎますわね、クリストフ将軍。」
囚われた味方の兵達は皆、目を輝かせ。まるでおとぎ話に出てくる、英雄の様に話していた。
「間違いなく、我が公国が誇る英雄でございますわ。」
生死不明……。
……そうなのだ、その英雄クリストフは大怪我を負っており、瀕死の状態なのである。
その辺りも含め、その他は知っている情報だった。まあ直接会ってるのだから当然である。
「ミルフィーの神々の力なら、治せるのかしら?」
いや……。例え治せるとしても、全くの逆方向なのが問題なのである。そもそもラミスは一人だけなのだ。現状救えるのは片方どちらかだけなのだから……。
「困りましたわねぇ……。」
バラン将軍の戦死……。
「公国にとってこれ程までの損失は、ありませんわね……。」
公国最強と謳われる、二人の将軍。その二人の内の一人、バラン将軍の戦死は公国にとって、かなりの痛手であると言わざるを得ない。
「言わざるを得ませんわ……。」
鎧のまま頬に手を添え、はあっとシュールな姿で溜め息を付くラミス姫様。
クリストフ将軍の時と同じく兵達は皆、目を輝かせてバラン将軍の勇ましい活躍の様を、熱く語っていた。
「バラン将軍も間違いなく、我が公国が誇る英雄ですわね。」
剣豪の称号を持つ隊長、ギリアム、ゲッペルス、ゴライアス……。
彼らの活躍のもまた、凄まじいものがあった。
「彼らもまた、公国が誇る英雄達ですわ。公国は本当に惜しい人物を亡くしましたわ……。」
公国の為、そして姉ナコッタ姫を救う為。散って行った英雄達に、ラミスは心の底から感謝をし冥福を祈った……。
公国が誇る剣豪の称号を持つ、五人の隊長。その内の三人までもが戦死している……。つまり今生き残っている隊長は、ラミスが会った二人。
「ガルガ隊長と、グレミオのみになりますわね。」
数多くの英雄を失い、クリストフ将軍が戦えない今この現状。ラミスと隊長二人が公国の最大戦力と言わざるを得ない。
「得ませんわね。」
ちなみに、ラミス姫とグレミオは旧知の仲である。グレミオは伯爵家で、ラミスとは幼い頃から交流があった。
……まあ、それは置いといて。
肝心の姉リンの情報が、何一つ得られなかったのである……。
誰に聞いても、メイド達に聞いても。誰一人、リン姫の目撃情報が得られなかったのだ。
流石にこれは不自然である。
…………。
「リンお姉様は、一体どちらにいらっしゃるの?」




