第４２話 「失礼ですわ」
すたすたすた……。
ラミスはヘルニア兵二百の中へ、すたすたと歩いて行った……。悠々と粛々と……。
"あの"剣士には、今のラミスではまだ敵わないだろう。
すたすたすた……。
──つまり、今回の作戦とは！油断した所をパーン！してしまう作戦である！！
……そう前回、色仕掛けが通用しなかったのは、あくまでもゲイオルグの特殊過ぎる性癖の持ち主だったからで。通常の殿方なら即座に、ラミスのこの美貌とプロポーションに降れ伏すのは間違いないのだ！！
何時もながら、公国一と謳われる天才美女軍師。灰色の脳細胞を持つ、ラミス姫様の見事で華麗な作戦は常に完璧である。と言わざるを得ない！
──デレデレした所をゴンしてポイ作戦！
これで間違いない！！ラミスは確信した。
「……俺を探しているのか？」
──ザッ！
背後に恐ろしい気配を感じ、振り向くラミス。……そこには、あの剣士が立っていた。
──！？
「殺気が溢れ過ぎだぜ？……嬢ちゃん。」
……気付かれていた！？このラミスの完璧かつ完全な作戦に！？……おのれ策士め！
「へっへっへ、いいところのお嬢様か？嬢ちゃんよぉ。」
ラミスの背後から、ラミスの可憐な姿に騙され二人の兵士が近付いて来る。
──ガスガスッ！
「邪魔ですわ。」
ラミスは敵兵士を裏拳で殴り付け、地に沈めた。
「お取り込み中ですわよ？」
「……へっ！？」
周りの兵士達が、姫に一撃で沈められる仲間を見て静まり返る。
「止めておけ、死ぬぞ？……この嬢ちゃんはとんだ跳ねっ返りだ。」
……作戦が通じなかった。ならば戦るしかない。
──先手必勝！！
ラミスは瞬時に距離を詰め、拳を握りしめ殴りかかった。
「プリンセスナッ……。」
──ザシュ！
…………。
────────。
気が付けば、ラミスは天井を見上げていた……。
──！？
やはり速すぎる。あの剣士の剣速が……。
化け物と言わざるを得ない。あの剣士はそれほどまでの強さを持っていた。
その剣士のあまりの強さにラミスは……。
「ムリですわー！」
ごろごろした……。
「横暴ですわー！」
ごろごろ、ごろごろ。
「もう、痛いのやだーー！」
じたばた、じたばた。
「化け物ですわーー！！」
──ギャイン！！
「ぬぐっ！……この俺の剣を全て弾くとは、貴様は化け物か！？」
「失 礼 で す わ ！！」
ゲイオルグの顔面を蹴り飛ばし、怒りをあらわにするラミス姫様。
「人に向かって化け物とか、失礼でしてよ？……全く。」
プンスカ！
全く失礼な話である……。
