第4話「戸締まりは大事ですわ」
『3回目』
────────。
──がばっ!
「……はぁ、はぁ。」
青ざめた表情で必死に起き上がり、姫は刺された箇所の確認をする。背中に多少の違和感がある、だが刺された筈の体はやはり元通りになっている。姫は背中に僅な暖かさを感じるのだが、今はあまり気には止めなかった。
「……やはり時間が巻き戻っている、と言う事なのかしら?」
この不思議な現象の正体は分からない。だが、死ねばこの場所に戻って来るようである。
何故生き返るのか?何故、時間が巻き戻るのか?……そしてその条件とは?使用制限等はあるのだろうか?
……姫には分からない事だらけだった。
いや、そもそもこれは人智を超えた神の御業なのである。姫が幾ら考えた所で、決して答えが出る筈が無かった。
姫はそこまで深く考え無い事にした、そもそも脱出すら出来ないからである。
そして、後は牢から脱出する方法なのだが……。姫に選択の余地は無かった。脱出するにはあの扉から出るしか方法が無いのだ。そして扉から出ない場合、王子がやって来て殺されるのを待つのみなのである。
姫に選択の余地は無かった。
姫はは決意し、三度目の脱出を試みる。相手は甲冑を身に付けた兵士なのだ、走れば自分の方が速いのではないのか?
とりあえず急いで走って逃げる、これで案外行けるかも知れない。
姫は先ほどと同じ様に、扉を少し開け覗き込み廊下の様子を探る。廊下に居る兵士が背を向け隙だらけの今この刹那、姫は覚悟を決め走り出した。
──だっ。
「なっ!お前、そこで何をしている!?」
姫は兵士の言葉に一切耳を傾けず、そのまま一気に駆け抜ける。
そして姫は、兵士に追い付かれる事無く扉まで見事に辿り着く。
──これで、脱出出来る!
姫の顔に笑顔が浮かび上がる、そして姫はその希望の扉を開け放った。
──ガチャリ。
「あら、鍵がかかってますわ?」
──ガチャ、ガチャ。
「…………。」
扉に鍵が掛かっており、絶望する事しか出来ない姫様。
廊下の兵士はその場から一歩も動いてはいなかった、何故なら動く必要が無かったからなのだ。鍵が掛かっており逃げ出せないのを知っていたからである。
「ニヤァ……。」
兵士は、鍵はここにあるぞと、言わんばかりに。腰辺りに付けてる鍵を姫に見せびらかした。
「……ああ、そんな。」
それを見て、姫は全てを諦めざるを得なかった。兵士は姫にドスドスと足音を立て近付き、そのまま姫に刃を突き刺した。
──以上。これが、今までの経由である。
……姫はそっと瞳を閉じ、思考を巡らせ考える。
…………。
廊下の扉には鍵、廊下の兵士そして待っているとやって来る王子達……。
姫はその過去の失敗を考慮し、この全ての状況からある一つの答えを導き出した。
……そして、姫はゆっくりとその瞳を開ける。
姫は覚悟を決め、脱出の一歩を踏み出した。
『4回目』
そしてそのまま……。
牢に戻り、大の字に寝転がった。
「はい、無理!」
姫が導き出した答えとは?
……それは。
"脱出は不可能"と言う答えだった。
地面で可愛くじたばたする姫様。
……無理もない。兵士が居て脱出は不可。しかも扉にはカギがかかっている。この場で待っていてもそれは変わらない、また王子達がやって来て殺されてしまうだけなのだから。
「む、無理ですわ……。」
ここから脱出する方法などある筈が無かった、誰がどう見ても脱出が不可能な状況。この様な状況からの脱出など、か弱い姫には到底無理な話なのである。
…………。
──!?
姫は何かに閃き、真剣な面持ちで勢いよく起き上がった。
「…………。」
姫は口を手で覆い、思考を巡らせある事に気付く。
それは即ち、ここからの脱出方法。起死回生の活路、外の世界への道標、一筋の光明。
……姫の元に。奇跡を呼び起こす、神の一手が天より舞い降りる。
──天啓!
姫は大きく目を見開く。
「……これなら。」
姫は閃いた、それも圧倒的閃き。いや、天才とも言える閃きを。
「……これなら、行けますわ!」
姫には自信があった、必ず脱出出来るという確信がそこにあった。
「……ふふ、見てなさい!私は、おつむには少々自信がありましてよ!!」
──そして、姫は四度目の脱出を開始する!!




