第39話 「あの剣士は、化け物ですわ」
『9141回目』
ラミスはもう一度姉ナコッタに逢い、話を聞こうと考えた。……姉ナコッタは、何かしらの神々の力を使っている可能性が高いからだ。
──しゅばばっ!
そして、もう一つ。ガルガ隊長の言葉……。ガルガ隊長は両将軍ならあの化け物、豚に勝てると言っていた。
──シュババッ!!
つまり……。この大陸に十二人しかいない"剣聖"の称号を持つクリストフ将軍なら、あの豚に勝てるという事だ。
──くるくるっ、しゅたっ!
クリストフ将軍にも、話を聞いてみたい。……ラミスはゲイオルグの攻撃を回避しながら、そう考えていた。
──さささっ。
しかし、前回対峙したあの剣士……。あの剣士の攻撃速度は速過ぎた。
見てからでは到底反応出来ない斬撃を放つあの剣士を、ラミスは一種の化け物であると感じ取っていた……。
「ぐぬっ!この俺の攻撃を、悉く回避すとは……。貴様、化け物か?」
──ドカガガガッ!
「淑女に向かって化け物とか、失礼でしてよ。」
ラミスはゲイオルグに怒涛の四連撃を決めながら、そう言い放った。
……その後ラミスは何時もの手順で脱出し、姉ナコッタのいる西の村へと走り出す。
姉ナコッタや、クリストフ将軍との会話の時間はかなり限られている。ヘルニア兵が乗り込んでくるまでの、僅かな時間しか許されていない。
……ラミスは姉達が居る、西の村へと急いだ。
ラミスは長時間走り続け、ようやく村付近の森へと辿り着く。
やはり西の村は、ヘルニア兵に襲われている。……しかし前回と違い、負傷者の姿が見当たらない。
前回より急いで走った分、まだ戦闘が開始した直後の様である。
ラミスは村へと急いだ。ヘルニア兵士達に見付からないように裏から回り込み、姉達の居る建物を目指す。
──否!
──したたたたたたっ!
「プリンセスキーック!」
──ドガッ!
飛び蹴りを決め空中でくるんと一回転をし、華麗に着地するラミス姫様。……そしてラミス姫のドロップキックを豪快に喰らい、吹き飛ばされていくヘルニア兵士。
「ごきげんようですわ、グレミオ。」
……そう、例え戦場であろうとも。清く正しく美しく。優雅に、そして絢爛に。
ラミスはスカートを広げ、見事な姫君の挨拶を披露する。
「ラ……ラミス姫!?」
ラミス姫の乱入により、戦場が敵味方含めグレミオまでもこの状況に困惑し愕然としていた。
……それも、当然だろう。
戦士達が命懸けで戦う、この緊迫した戦場の中。あまりにもこの戦場に似つかわしく無い麗しい姿の姫君が、ドレス姿のまま戦場に乱入し。ましてや豪快なドロップキックを披露するなど、今迄の長い戦場経験の中で一度も有る筈が無いのだから。
……そしてラミスはそのままゆっくりと歩き、ヘルニア兵達の中へ突き進んで行くのだった。




