第34話 「まだまだですわ」
「はぁ……。私も、まだまだですわね。」
ラミスは頬に手を添えながら、ため息混じりに呟いた。
ラミスは一対一なら、そう易々(やすやす)とは負けないだろう。……しかし十数人を同時に相手をすると言うのは、やはり無理があると言わざるを得ない。
──ギャイン!
「はぁ……。私も、まだまだですわー。」
今のラミスの実力では、誰一人救う事は出来ないだろう。……ラミスは、自分の無力さを嘆いていた。
──ドガガガガガガ!!
「もっと、強くなりたいですわ……。」
ラミスは頬に手を添え、ため息混じり呟きながら脚技で凌ぐ。
──ギャイン!
「ぐっ……。俺の剣を易々(やすやす)と足技で弾くとは!?……貴様は、化け物か?」
──ガガガッ!
ゲイオルグに、見事なコンビネーションキックが決まる。
「まあ、化け物とは失礼しますわ!……少し、脚が器用なだけですわよ?」
『9139回目』
……今回のゲイオルグ戦は難無く終わり、ラミスは三つ目の村へ急いだ。
ラミスは、二つ目の村の事を考えていた。そして、襲われている人を救えない事を悔やんでいた。
……だが今のラミスの実力では、どうする事も出来ないのだ。襲われている村の人を助けたかった……。しかし、ラミス姫一人で戦える人数では無いのだ。
全ては救えない、いや誰一人救えない……。ラミスは、そんな自らの無力さに嘆いていた。
「……今は自分に出来る事をやるのよ、ラミス。」
今、必要なのは情報なのだ……。
姉二人は、何処に居るのか?姉達が、授かった神々の力とは?
そして、ラミスとミルフィーの神々の力と合わせれば。何かこの現状を打破する、切っ掛けが生まれるかも知れない。……そうすれば、全ての問題の解決に繋がるかも知れないのだから。
「今は、お姉様達を探すのよ。……ラミス。」
全てが解決すると信じ、ラミスは次の村へと走った。
ラミスは西に走り続け、ようやく三つ目の村に到着する。しかし、この村の人達は何も知らされず普通に過ごしていた。
ラミスは事の次第を説明し、北の街への避難を勧める。残念ながら姉達は、この村には居なかった。
……残る村は、後二つ。ラミスは、さらに西に走り四つ目の村を目指す。
しかし、そこにも姉達は居らず。……二つ目の村同様、ヘルニア帝国兵によって村が襲われていた。
……ヘルニア兵の数は先程の村よりも多く、その数は百を超えていた。急いで助けに向かうラミスだが……。やはり、多勢に無勢。
……ラミスは為す術も無く、またもや牢の中へと戻される事となる。
────────。
「て、敵さんが多過ぎますわ……。」
ラミスは放心状態の様に、真っ白になり。呆然と天井を見上げていた。そして口からは、またもやエクトプラズムラミスが。「こんにちは」と可愛く挨拶をしている。
……やはり、ラミス一人では限界があった。
それでも……。それでも、ラミスは戦わなくてはならないのだ。姉達に会う為に……。
ラミスは、決意を胸に立ち上がる。
「……最後の村に、急ぎますわ。」
『9140回目』
……ラミスは五つ目の村を目指し、西へと走り出した。
「何だ!貴様は!?」
廊下の兵士こと、ゲイオルグに見つかるラミス姫様。
「あら、忘れていましたわ……。」
──ドガッ!
ラミスは頬に手を添え、ため息混じりに呟きながら……。ゲイオルグに、飛び膝蹴りを喰らわすのであった。




