第29話 「横暴ですわ」
──ドガガガッ!!!
強烈なラミスの連撃が、豚を襲う。
「ブヒィ!」
やはり、豚には全く効いてはいない。……なら視界だけでも。
──ザシュ!
ラミスは、手刀で豚の目を貫く。
──!?
しかし砕けたのは豚の目では無く、ラミスの手の方だった。
「どれだけ化け物ですの……。この豚さんわ。」
……ラミスはため息混じりに、そう言いながら。豚の攻撃を華麗に回避し、豚の後頭部目掛け回し蹴りを放つ。
──ドゴォ!
「プリンセス延髄ですわ。」
……だが、全く効いてはいない。砕けたのは、ラミスの脚の方だった。
ラミスに理解していた……。まだ豚に勝てる筈が無い事くらい、ラミスは十分に理解していた。
──ドガッ!
ゲイオルグを屠ったこの拳でさえ、傷一つ豚には与えられない。しかも、砕けるのはラミスの手の方だけなのだから。
それでも、ラミスは怪物に果敢に立ち向かい攻撃を繰り返し続けた。
豚はいずれは倒さなければならない敵だと言う事を、ラミスは理解していた。
例え今倒せなくても、次回に繋げなくてはならない。何かに弱点は……。何でもいい倒せる方法を……。
ラミスは思考錯誤をしながら懸命に頭を働かせ、怪物に抗い続ける。
……しかし飛んでくる棍棒に気が付いた時、ラミスの意識は途絶える事となる。
────────。
ラミスは、また薄暗い牢の中に一人戻される。真っ白に燃え尽き放心状態となり、ラミスの口からは小さなラミスが、こんにちはをしていた。
エクトプラズムのミニラミスは、可愛く手をぱたぱたと振り「ムリですわー」と叫んでいた。
ラミスが絶望するのは、仕方がなかった……。ただでさえ強い強靭な豚が五体もいるのだ。ラミスは転がるしか無かった……。
「無理ですわー!」
……ごろごろ、ごろごろ。
「一体でも無理なのに、五体なんてあんまりですわー!!」
……じたばた、じたばた。
「もう痛いの、やですわー!!」
……ごろごろ、じたばた。
──ピタム!
ラミスは口をムの字にしながら動きを止め、ゆっくりと立ち上がる。
「……落ち着くのよ、ラミス。冷静になって今の状況を整理するのよ。」
……容姿端麗、頭脳明晰、才気煥発、博覧強記、英明果敢。立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花。と謳われているラミスともあろうものが……。この程度で慌てふためいて、ごろごろするなんて許される筈がない。……いや許されないのだ。
ラミスは一度冷静になり、今の状況を整理する。
ミルフィーと合流し北の街に逃れるルートは、今の所失敗である。やはり豚が強すぎるのだ。
「やはり豚さんが、強すぎますわね……。」
ラミスの攻撃が、全く通じていないのは問題である。……そして二人の姉。
「……お姉様達は、一体どちらにいらっしゃるのかしら?」




