第243話 「私〈わたくし〉も、ちょっと心配になってきましたわ」
何とか三人を説得し、父を生き返らせる事に決まったのだが……。何故か姉達は神妙な顔付きになり、部屋の中には不穏な空気が漂っていた。
「……分かったわ、ラミス。お父様を生き返らせてみましょう。」
「…………。」
「お姉様……。」
渋々ではあるが姉達を納得させた為、ラミスは天高く手を掲げ復活の舞を舞う体勢に入る。
「準備は良いわね、皆!?」
「大丈夫よ……。」
「…………。」
「それでは、行きますわよ!」
──ダッ!
ラミスが華麗に踊り始めた瞬間。姉ナコッタは急いで部屋から飛び出し、ミルフィーは怯える様に姉リンの背中に隠れた。
「らっらー♪」
テンポの良いリズムに乗り、のりのりで踊りを舞うラミス姫様。
「ほにゃほにゃ……。ほにゃら!今こそ、黄泉返りなさい!──お父様、召・還!!」
──ぽふん。
そして甦る四姉妹の父、カロン。そっと目を開け辺りを確認し、優しい目で娘達の姿を見つめていた。
「おー!愛する我が娘達よー!無事で良かったー!儂は心配したぞー!!」
……すりすりすり。
涙を流しながらラミスに抱き付き、全力で頬をすりすりする父カロン。
……すりすりすり。
「……お父様、今は緊急の事態ですの。その辺で、お止め下さいませ。」
……すりすりすり。
「おー、ラミスー。儂は会いたかったぞー!」
……すりすりすり。
「……お父様?そろそろ、その辺りでお止め下さいませですわ」
……にっこり。
「…………。」
「…………。」
説明しよう。ラミスの抱き付き癖と、すりすり癖は父親譲りで……。
寂しがり屋な父カロンは娘達を溺愛するあまり、常に見境無く頬をすりすりしていたのである。
「……お父様?そろそろ、お止めになった方がよろしいのではありませんこと?」
……にっこり。
その為、賢明な姉ナコッタは脱兎の如く部屋から飛び出し。ミルフィーは姉リンの背に隠れていたのである。
腕を組みながら威嚇する様に、父を睨み付ける姉リン。……もしリンに抱き付こう物なら、リンの恐ろしい蹴り技が炸裂する仕組みとなっている。
その結果……。四姉妹の中で一番心が広く、博愛と慈愛の精神に満ちたラミスだけが……。どんな罪でも許し、女神の如く包容力を兼ね備えた三女ラミスだけが───。父カロンの、すりすりの犠牲となっていたのである。
……すりすりすり。
「……お父様?」
……にっこり。
ラミスは何処か遠い所を見つめながら心を無にし、虚ろな瞳ですりすりに耐え続けていた。
「おー、ラミスー。無事で良かったー。儂は儂はぁ……。」
……すりすりすり。
「……お父様?(怒)」
……にっこり。
にっこりと微笑みながらも、全く目が一秒も笑っていないラミス姫様であった。




