第239話 「ぷるぷると震えていましたわ」
「"マグナム"!!からの"雷鳴"ですわ!!」
──ズガシャーン!!
とりあえず人狼王思い切り蹴り飛ばすラミス姫様。
不意を突かれた人狼王は、悶え苦しみながら膝を突いた。
「グッ、馬鹿ナ……。コノ俺ヲ、ココマデ追イ込ムトハ……。」
「…………。」
……いや、どうせ倒しても真の形態に変身しますわよね?どうしてそんな大層な台詞を、お吐きになられますの?
とラミスは冷めた目で見ながら、心の中で人狼王に突っ込んでいた。
──ドガガガガガガガガッ!!
高速で襲いかかる人狼王の爪を華麗に回避し、流星の如く拳を叩き込むラミス姫様。
どうやら相性的に、豚王よりかは戦える様である。
火力や耐久力はともかく、速度だけならば……。ラミスは既に、バラン将軍の速度を上回っていた。
稲妻の如く攻撃を回避し、烈火の如く攻撃を叩き込むラミス。──そして隙を見計らい、超奥義を叩き込んでいく。
「プリンセス"三空殺"!!」
──ドゴォ!!
「グハァッ!!」
奥義の直撃を喰らい、吹き飛び深手を負う人狼王。
「ぐっ……。」
だがラミスもまたカウンターを喰らい、致命傷を負わされていた。
流石に一人では倒す事は、まだ無理の様である。
何とか三人で人狼王を打ち倒すラミス達なのだが、やはり真の形態である人狼王〈ビーストモード〉の前では為す術が無かった。
『42631回目』
「むぅ……。やはり強いですわね。」
人狼王のあまりもの強さに、とりあえずごろごろするラミス姫様。
ごろごろと可愛く悶えるラミス姫様だが、レベルが上がりすぎて蛇王から貰える経験値が終了し、少し行き詰まる事となる。
もうこうなったら地道に努力し、ひたすら頑張って強くなるしか方法は残されていないのだろう。
前を向いて立ち上がり、何時もの様にラミスは廊下へと向かう。しかし廊下に出るラミスに、ある異変が起こる。
いや正確にはラミスではなく、異変が起きているのはゲイオルグの方なのだが……。
ラミスはゲイオルグの様子が何時もと違い、少しおかしい事に気が付いた。
「な……何者だ、貴様は?……化け物か?」
ゲイオルグは怯えていた。
"拳王"にまで登り詰めた、ラミスの烈覇の如く闘気に気圧され。ゲイオルグは持っている剣を今にでも落としてしまいそうな程、ガタガタと震えていた。
そんな怯えるゲイオルグに、悠々と近付いて行くラミス。
……ラミスは思い出す。
初めて廊下でゲイオルグに出会った、あの日の事を───。
初めてゲイオルグに会った時。ラミスは今のゲイオルグ同様、子羊の様にぷるぷると震えていた事を思い出していた。
それが今では逆転し、ゲイオルグがラミスに恐れ恐怖を抱く様になっていたのでる。
ラミスはゲイオルグに、かつての自分を重ね……。優しく微笑みながらゲイオルグの肩に、そっと手を触れた。
幾ら敵とは言え、怯える人間を手に掛けるラミス姫様ではない。
博愛の精神に満ち溢れ、常に慈愛の心と共に生きているラミスには、かつて強敵と呼んだゲイオルグを手に掛ける事が出来なかった。
ラミスはそっと瞳を閉じ、目隠しをしていた時の優しかったゲイオルグの事を思い出す。
そして一万回に及ぶ、ゲイオルグとの闘いの日々───。
ラミスは共に戦った戦友の様に、ゲイオルグを優しい目で見つめていた。
「ゲイオルグさん……。」
「お嬢……。」
そこには、一切の憎しみなど無かった。そこに居るのは、紛れもない戦友なのだから。
ラミスは戦友に、にっこりと笑い掛けた。そして───。
「プリンセス"アッパー"!!」
──ばちこーん!
プリンセス"アッパー"により大空の彼方へと昇天し、夜空の星と消える"廊下の兵士"ことゲイオルグさん。
「全く、淑女に向かって化け物とは失礼しますわ!」
──ぷんすか。
麗しい女性を化け物呼ばわりとは、大変失礼な話である。ラミス姫の逆鱗に触れる、ゲイオルグだった。




